■ ノーチラスEP-1にかけるシミュレート エフェクター コーラス遍
コルグのワークステイション・シンセサイザー、ノーチラスの探求リポート、エレピ遍のパートⅦです。
KORG ( コルグ ) / ノーチラス NAUTILUS-61
前回 まではノーチラスEP-1のローズピアノに付帯しているエフェクト機能である3種類のフェイザーをリポートしました。
今回は3種類のコーラスエフェクトをリポートしたいと考えています。
フェンダーローズピアノに掛けるエフェクトで一番使われているのがフェイズシフターだと思います。
そのフェイズシフターと同様にローズピアノに使われるエフェクトがコーラスです。
コーラスというエフェクトはローランドの名機と言われているギターアンプ、JC(ジャズコーラス)アンプに付帯されていました。そのコーラスが普遍的なエフェクターとして使われるとは当時、誰も考えていなかったと思います。50年も前の話です。
コーラスとはその名の通り、1本のギターを弾いた時にもう1本ギターを被せた様に、または12弦ギターの様に聞こえるエフェクトです。実際の音を15msecから30msec程ずらしコーラス効果を出します。
ディレイの場合、一番多用されるディレイタイムは135msecと言われています(諸説あります)。135msecでディレイをかけた場合、言葉で言うのは難しいですが、パパッの「パッ」部分が残響で聴こえる位の音です。かなり短い残響です。コーラスは15msecから30msecという更に短い遅延ですから、人が聴き分けられる領域ではありません。それを恒久的に原音に作用させるのがコーラス効果です。モヤッとした音の厚みと温かみが出ます。
■ コーラス・エフェクトの思い出
私が学生時代に軽音楽部で使用していたギターアンプ、JⅭ-60にコーラスというエフェクトが付いていました。
JCは真空管アンプではありません。高音部を強調したシャリシャリの音がでるという印象でした。友人が使っていたジャグボックスやグヤトーンのギターアンプは真空管でJCよりも円やかでふくよかな音が出ていました。我々はJCを「ジャズコー」という愛称で呼んでいました。
元々、私は「ジャズコー」の音があまり好みではありませんでした。当時、ロックをやっているギタリスト達は爆音で「ジャズコー」を使っていました。シャリシャリキンキンの「ジャズコー」の音は私にとって耳にきつく聴こえました。
学園祭の中庭ライブの時にたまたまローズピアノをJⅭ-60に繋ぎました。目に留まったJⅭのコントロールパネル右側にあったスイッチをCHORUSにし、つまみを少し上げてみました。するとローズピアノの音が円やかになり、広がりを持って聴こえてきたのです。
驚きました。シャリシャリ、キンキンの「ジャズコー」から出た音はこれまでに聴いたことのない音でした。更に私はJⅭのアンプチューニングをベース、ミドルを上げ、トレブル抑えました。自分好みの音に近付きました。それ以来、私はJⅭのファンになりました。ローズピアノを繋げることに限ってですが。
このJCに付帯していたコーラスをBOSSがエフェクターとして独立させたのがCE-1というペダル・エフェクターです。今ではプレミアムが付いて10万円以上の高値で売られています。当時の価格は25.000円でした。
CE-1後継機
■ 山下達郎さん、愛用のコーラス
山下達郎さんのライブでローズピアノはマストアイテムですが、このローズピアノにローランド3Uのコーラスエフェクト、ディメンジョンDを使っています。このディメンジョンDはインピーダンスレベルがLINE(+4㏈)なので直接ローズピアノのエフェクトに繋げることができません。ローズピアノのアウトをミキサーに入れ、ミキサーから出力しています。その段階でミキサーエフェクトにディメンジョンDをかませているのです。「ローズにはディメンジョン」というのが達郎さんのこだわりです。
■ デビッド・フォスターも愛したコーラス
45年程前にアメリカ西海岸から一斉を風靡するアルバムがリリースされました。「エアプレイ」のアルバムです。「エアプレイ」の音は新しく、センセーショナルでした。国内でも「エアプレイ」の音やフレーズは多くのミュージシャンから真似され、歌謡曲は右を見ても左を見ても「エアプレイ」状態でした。その「エアプレイ」のキーボーディストがデビッド・フォスター。デビッドが弾くローズピアノにもコーラスがかけられていました。「エアプレイ」がブレイクしたのが1980年ですから、当時の私は「俺はデビッド・フォスターよりも早く、ローズピアノにコーラスをかけていた」なんて馬鹿な事を言っていたものです(恥)。
およそ50年の長期に渡り、プロからもニーズが絶えないコーラスはエフェクトとして欠くことのできない存在になっています。
■ ノーチラスに内蔵された3種のコーラスを使う準備
ノーチラスのエフェクト、コーラスに話を移します。
前述したBOSS CE-1をシミュレートしたコーラスエフェクトもノーチラスには含まれています。
ノーチラスのEP-1に付帯しているコーラスを試してみます。
ノーチラス搭載音源の呼び出し方は画面1のディスプレイ画面のセットリストからEPと表示されている「5」のTineタイプ(ローズピアノ音色)EP MarkⅠEarly Ampをタップ。

ノーチラスディスプレイTineタイプ音色 選択されているのはEP MarkⅠEarly Amp(画面1)
画面2のクイックアクセス・ボタンのMODEボタン(左上)を押します。階層に入っていくときには、このモードボタンから始まります。

クイックアクセスボタン MODEボタンは左上(画面2)
モードセレクト画面より、PROGRAM(画面上中央)をタップ、エレピ音源画面を出します。(画面3)

モードセレクト(画面3)
■ Tine EPⅠ Lateタイプ( ローズピアノ音色)内蔵エフェクター・セッティング
1. Tine EPⅠ Late エフェクト系の画面

今回も前回同様、私が所有していたローズMarkⅠの後期タイプのノーチラスにおける内蔵エフェクターの接続法などのセッティング方法です。
2. Tine EPⅠ Lateタイプ、エフェクター入出力端子画面

一番左側はエフェクターをかけるためのINSNRT EFFECT端子。IN(上側)、OUT(下側)。実際のローズピアノはローズ側のINにエフェクターOUT側からのシールドを入れ、ローズ側のOUT端子から出たシールドをエフェクターのINに入れる。
ノーチラスの内蔵エフェクターを使用する場合はディスプレイの左側INSNRT EFFECT端子の画面を指でタップすると次の画面が現れる。
3. Insert Effect画面

InsertEffect画面にある9種類のエフェクトを使用することができる。
Small Phase、Orange Phase、Black Phase、Vintage Chorus、Black Chorus、EP Chorus、Vintage Flanger、Red Comp、Vox Wahの9種類。
TineEPⅠLateにかけるコーラス、画面右上Vintage Chorusのキャラクター画面を指でタップし、Vintage Chorusを選択する。
4. 選択されたVintage Chorusエフェクト画面

このVintage ChorusがBOSSのCE-1をシミュレートしたコーラスエフェクト。キャラクターの形状もオリジナルCE-1に似ている。エイジングも施されていてオールド感を醸し出している。
コーラスのSpeedとDepthの値を入力する。フェイザーと同様なセッティングでも問題ないが、このセッティング数値だとフェイザーに比べるとアッサリとした印象を受ける。コーラスの特徴としてフェイザーよりも効果が分かりにくいのかもしれない。これは多分に筆者の感覚。
5. Vintage Chorusエフェクト画面のアップサイズ

コーラスをもう少しエフェクティブに感じるためにスピードの数値を1,80に上げる。こちらのセッティングの方がより、コーラスを感じることができる。Depthは058。フェイザーでこの数値で音を聴くとToo muchに聴こえてしまう。
6. Black Chorus エフェクト画面

Vintage Chorusと比較するとよりコーラス感、霞感の強い、ボーワッとした音になる。それで音が悪いのかと言えばそのようなことはなく、非常にいい感じになる。このエフェクトにはSpeedとIntensityに加え、Widthというカテゴリーが加わる。このWidthが霞具合の強弱を担っている。

Vintage Chorus同様、コーラスのSpeed設定は早めの方がコーラス的効果を感じることができる。とても気持ちいい音色になる。Widthを高めにセットすると少し、Too muchに感じる。この辺りは個々の好みになる。
7. EP Chorus エフェクト画面

EP Chorusは3種のうち、一番サッパリとして力強い印象を受ける。
8. EP Chorus エフェクト画面

コーラスエフェクトはVintage Chorus、Black Chorusと同様、スピードはフェイザーよりも早めの2付近の設定がいいと思われる。
好みの問題ではあるが、中高域の滲み具合が他2種よりもクリアに聴こえる。
今回のコーラスエフェクトは3種いずれも品位の高い効果が得られた。
コーラスの場合は白玉でコードを押さえ、シンプルなオブリガートを入れる場合やスローな楽曲で使う場合、Speed設定をフェイザーよりも早めの方がよりコーラスを意識できる効果が得られると思う。一方、ミドルテンポ以上の曲でメロディなどを奏でる場合はSpeed設定が1.8位だとメロディやコードがエフェクト音とぶつかり、音像がぼやけてしまうので楽曲に合わせた数値設定が必要になる。
次回はEP-1エフェクトの最終回、フランジャー、コンプレッサー、ワウの検証です。乞うご期待!
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