■ ノーチラスEP-1にかけるシミュレート エフェクターの検証
コルグのワークステイション・シンセサイザー「ノーチラス」の探求リポート、エレピ遍のパートⅥです。
前回 はノーチラスEP-1のローズピアノに付帯しているエフェクト機能についてリポートをしました。
エフェクトの対象は9種類あるエフェクトのSmall Phaseをとりあげました。このSmall Phaseはアメリカのエレクトロハーモニクス社の大ヒットしたSmall Stoneをシミュレートしたものです。コルグのシミュレート精度の高さに驚きました。
今回も残り2つのフェイズシフターをリポートしたいと考えています。
KORG ( コルグ ) / ノーチラス NAUTILUS-61
■ フェイザーへの想い、その世界は不変であり普遍
ローズピアノは実機に付帯しているビブラート機能とイコライザー機能を駆使することでそれなりの音を作ることができます。しかしこのピアノに限ってはフェイザーやコーラスなどをかけることでその音のバリエーションが拡大し、音自体がとても豊かになります。それを認識しているミュージシャンが使わない筈がありません。
ならばローズにどういうエフェクトを掛けるのか?それは楽曲をどう演出するかを決めるミュージシャンのセンスに委ねられます。
ローズピアノから発するビブラフォン的な音色にとってフェイザーはベストマッチでした。ローズピアノに付帯したステレオで揺れるビブラート音に、音を滲ませるフェイザーが加わることで得も言えぬ世界が広がります。そのエフェクターがSmall Stoneであり、MXRのPhase90でした。
Small Stoneと双璧をなすのがMXRのPhase90です。Phase90はどちらかと言えばローズピアノのプレイヤーというよりもギタリストが使っている頻度が高かったという側面があります。
プレイヤーの大ヒットナンバーである「ベイビー・カムバック」のイントロでツインリードのテーマに掛かっているのがPhase90です。ギターのアルペジオに掛ければPhase90は最高のパフォーマンスを約束してくれました。またギターだけではなく、ストリングスなどに掛ければ、その効果は抜群で様々なシーンで耳にすることができました。
私はこのフェイズ効果欲しさに国内製のR社のフェイザーやM社のフェイザーなどを試しました。しかしあの感じにはならずに購入を諦めたことを記憶しています。
今ではMXR Phase90も価格的には随分、お求めやすくなりました。私が大学生の当時、Phase90は5~6万円!したという記憶があります(間違っていたらゴメンナサイ)。当時国内製品は1万円程。そんな理由もあり、私にとってPhase90は高嶺の花でした。
その後、私がローズピアノを所有していた時にはMXR前期のフェイザー、Phase90をかけました。友人からギターを購入した時に一緒に譲ってもらったものです。とてもいい音がしました。
ノーチラスにはMXRのフェイズシフターをシミュレートしたOrange Phaseがあります。このOrange Phase、シミュレートしているのはMXRのPhase90ではなく、スピード設定に加え、効き具合の強さ(インテンシティ)も設定できるPhaseの100バージョンです。
シンセサイザーユーザーにとってフェイズシフターの名機のシミュレートする機能があるのはとてもありがたいことです。
■ Small Stone(Small Phase)よりバリエーション豊かなPhase100(Ornge Phase)
ノーチラスのEP-1に付帯しているエフェクト機能の設定プロセスをご紹介します。
ノーチラスに搭載されている音源の呼び出し方は画面1のディスプレイ画面のセットリストからEPと表示されている5のTineタイプ(ローズピアノ音色)EP MarkⅠEarly Ampのエレピ音をタップ。

ノーチラスディスプレイTineタイプ音色 選択されているのはEP MarkⅠEarly Amp(画面1)
画面2のクイックアクセス・ボタンのMODEボタン(左上)を押します。階層に入っていくときには、このモードボタンから始まります。

クイックアクセスボタン MODEボタンは左上(画面2)
モードタイプセレクト画面(画面3)より、PROGRAMボタンをタップ、エレピ音源画面を出します。

モードセレクト(画面3)
■ Tine EPⅠ Lateタイプ( ローズピアノ音色)内蔵エフェクター・セッティング
1. Tine EPⅠ Late エフェクト系の画面

今回も前回同様、私が所有していたローズMarkⅠの後期タイプのノーチラスにおける内蔵エフェクターの接続法などのセッティング方法です。
2. Tine EPⅠ Lateタイプ、エフェクター入出力端子画面

一番左側はエフェクターをかけるためのINSNRT EFFECT端子。 IN(上側)、OUT(下側)。実際のローズピアノはローズ側のINにエフェクターOUT側からのシールドを入れ、ローズ側のOUT端子から出たシールドをエフェクターのINに入れる。
ノーチラスの内蔵エフェクターを使用する場合はディスプレイのINSNRT EFFECT端子の画面を指でタップすると次の画面が現れる。
3. Insert Effect画面

この画面にある内蔵エフェクトを使用することができる。
Small Phase、Orange Phase、Black Phase、Vintage Chorus、Black Chorus、EP Chorus、Vintage Flanger、Red Comp、Vox Wahの9種類。
ローズピアノにかけるフェイズシフター、Orange Phaseのキャラクター画面を指でタップして、Orange Phaseを選択する。
MXR ( エムエックスアール ) / M107 Phase100
実際のMXR Phase100。右側がスピードで左側がインテンシティ。
4. 選択されたOrange Phaseエフェクト画面

このOrange Phaseもよく見ると使い込んだかのように見えるエイジング処理?
がされている。
エフェクトが有効になるとキャラクター下部がエフェクトONになり、その左側にエフェクトの種類が表示される。
5. 選択されたOrenge Phaseエフェクト画面拡大

Orange Phaseの下部にSpeed設定とDepth(深さ)設定があり、この2つを入力する。音の位相を動かすことで、絶妙なうねりを生み出すフェイザーは周期(レイト)を設定することでうねりの効果を出す。
MXRのPhase100をシミュレートしたOrenge PhaseにはオリジナルのPhse100と同様、SpeedだけでなくDepthも存在している。
6. ノーチラスの入力回転円盤ノブ

まずSpeedを指でタップして好みの数値を入力する。Speedの数値はノーチラスのディスプレイ画面右側にある入力回転円盤ノブで入力する。
うねり具体が強いと感じた場合、Speedはそのままでうねりの強さをDepthで調整する。最初にDepthを強めの100に設定するのは回転スピード(周期)の塩梅を認識でき、Speed設定をしやすい為。その後に強さの具合を決めた方が人の生理に合っている気がする。
7. Small Phaseエフェクト画面 設定後

Orange Phaseの設定終了。Speedは0.56、Depthは半分程がローズピアノフェイズ感に一番合っていると思う。これはかなり感覚的なもの。フェイザーは弾いた時の気持ち良さが重要です。
このOrenge Phaseは効果を強くしてもその品の良さは失われることがない。この辺りがSmall StoneやMXRのフェイザーが廃れない要因なのだと思う。
次はBlack Phaseにトライ!
8. Black Phaseエフェクト画面

このBlack PhaseもMXRのフェイザーと同様、①~⑦までの操作で鍵盤を弾きながら設定する。Black Phaseはどのフィルターをシミュレートしたものかは分からないが、それなりの名機と推察される。
このフェイザーの効果もOrenge Phase同様、とても品のいい音がしている。Small Phaseは音域の全般に渡って音が滲む感じ。Orenge Phaseは中域から高音部にかけて滲む感覚があり、Black Phaseは音の滲み感が前者2つよりも直線的でさっぱりした感じがする。いずれも高品位なフェイズ感を得られるのでユーザーの気分や楽曲に鑑みての使用法が期待できる。
次回は3種類のコーラスを取り上げます。乞うご期待!
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