■ オーバーハイムとシーケンシャルの音作りの違い
今回も前回に続き、オーバーハイムのTEO-5のリポートです。
最初にこのシンセサイザーの音を出したときに少し残念な気がしました。
プロフィット5といえばリード系の音に優位性を示すのに対し、オーバーハイムはブラス系の音の良さに定評がありました。
以前、私が所有していたオーバーハイム製の6音ポリフォニック・エクスパンダーの最初のプリセット音(00番)は、「TOTO HORN」でした。実際、TOTOのライブでは、このエクスパンダーがステージ上や脇に何台も積み上げられており、その音の厚みはまさにオーバーハイムの専売特許といえるものでした。
もう1台所有していた、DCO(デジタル・コントロール・オシレーター)仕様の廉価版モデル「マトリックス6」も、最初のプリセットはブラス音でした。
また、サックス奏者マイケル・ブレッカーが、ブレッカー・ブラザーズ・バンドやステップス・アヘッドで吹いているEWIの音源もオーバーハイムのエクスパンダーでした。それほどまでに、オーバーハイムの音は太く、ホーン系の音色には普遍的なものがありました。

Oberheim Xpander analog synthesizer, CC BY-SA 3.0 (Wikipediaより引用)

Oberheim Matrix-6, CC BY-SA 3.0 (Wikipediaより引用)
しかしオーバーハイムのTEO-5のプリセット音にはブラス系の音があまり見当たりませんでした。勿論、ブラス系の音はあることはあるのですが、私が欲するあのオーバーハイムのプリセット音ではなかったのです。これも時代なのかと、時の流れを感じました。
とはいえ、ブラス音がプログラムできないのかといえば全くそのようなことはありません。イニシャライズ・ボイスからブラス音を作っていけば、あまり時間を要することなくブラス音、ホーン系の音は作ることができます。
コシがあって中低域の豊かな倍音を含む、オーバーハイムのオシレーターは健在でした。
■ シーケンシャルTAKE-5とは異なるオーバーハイムTEO-5のパネルレイアウト
通常のアナログシンセサイザーの音作りの流れはVCO(ボルテージ・コントロール・オシレータ)→ MIXER →VCF(ボルテージ・コントロール・フィルター)→VCA(ボルテージ・コントロール・アンプリファイアー)→ADSR(エンベロープ・ジェネレーター)です。
所謂、発振器の音をミキサーでミックスし、フィルターにかけ、音の立ち上りと減衰をプログラムしてアンプから音を出すという極めてシンプルな成り立ちです。
TAKE-5のパネルの下半分は上記の通りにレイアウトされていて、非常に分かり易く、音の流れ見える形になっています。
■ オシレーター(発振器)セクション
まずはざっくりとした話でTAKE-5とTEO-5のパネルレイアウトの違いと、音色をプログラムをする際の異なるポイントを以下に記します。
1. TAKE-5はVCO、オシレーター(発振器)で8フィート、16フィートなど、音の高さを決めます。
その後にノコギリ波、サイン波、矩形波などの波の種類を決めます。ノコギリ波は倍音を一番多く含んでいる波です。波形の種類によって音の特性が変わってきます。
TAKE-5の場合は波形設定がバリアブルになっていてサイン波とノコギリ波、矩形波がフィックスではなく、それぞれの中間の波形も設定可能です。それから各オシレーターのディチューンなど、ピッチの設定をしてオシレーターのパートはおしまいです。
2. オーバーハイムTEO-5は波形選択はバリアブルではなく、ボタン状のランプが灯るスイッチを押して波形を選択します(写真参照)。
それぞれのVCOから3種類の全ての波形の選択が可能です。TAKE-5は1つのオシレーターで1つの波形しか選択できませんが、「オーバーハイムは1つのオシレーターから3種全部の波形を選択できる」という機能を有しています。この機能が音の厚みにも関係してきます。
一方で波形の選択はTAKE-5がバリアブルに対し、ノコギリ波、サイン波、矩形波という3種類に限定されています。

TEO-5のオシレータ部分
- 赤く点滅しているのが有効になっている波形
- 中央部がオシレーター2の音程をディチューン(音を僅かにズラす)するノブ
- TAKE-5では音程を8フィート、16フィートなど設定するノブがあったが、オーバーハイムではそのノブの代わりにFREQUENCY1(オシレーター1)とFREQUENCY2のノブで音程を設定する。
3. 面白いことにオーバーハイムのオシレーターのオン、オフはVCFセクションにその機能があります(写真参照)。
波形選択と同じようにVCFのカットオフの両側にあるオシレーター1(OSC1)とオシレーター2(OSC2)のスイッチをプッシュして点灯させることでオシレーターがオンになります。この部分がTAKE-5とTEO-5の機能として一番大きな相違点です。

多様性のあるTEO-5のVCFセクション
- 右上のノブでローパスフィルターからハイパスフィルターへのバリアブルな設定が可能
- OSC1の右横にある点灯スイッチはサブオシレーターで1オクターブ低い音が出る
- OSC2の右側の点灯スイッチはノイズジェネレーター
■ VCF、フィルターセクション
VCFフィルターは基本ほぼ同じです。アナログフィルターの基本は、ローパスフィルターで周波数を削るカットオフ機能と、削られた周波数周辺にクセを付けるレゾナンス機能があります。
TAKE-5のフィルターにはプロフェット5直系の4ポール・ローパス・フィルターだけでなく、ハイパスフィルターも装備されています。
一方、TEO-5はオーバーハイム伝統のSEMステート・ヴァリアブル・フィルターが搭載され、ローパス〜ノッチ〜ハイパスとモーフィングさせるモードとバンドパス・モードのどちらかに切り替えて使用することができます(写真参照)。
この辺りは時代の進歩以外の何ものでもないと思います。そして多面的フィルター機能が現代的な音の背景にあるのでは…と私は考えています。

LP(ローパス)からNOTCH(ノッチ)、HP(ハイパス)といったバリアブルのフィルター設定が可能
次回はTEO-5の音作りなどをリポートしたいと考えています。
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