■ ノーチラス バーチャル音源、EP-1のウーリッツァー、ReedType音源を検証
コルグのワークステーション・シンセサイザー、ノーチラスの探求リポート、エレピ遍のパートⅢです。
前回 はノーチラスEP-1、ローズピアノの音源であるTineType 5種類の検証をしました。今回はウーリッツァーピアノの歴史など周辺情報とEP-1に搭載されているウーリッツァーピアノの音源、ReedType 2種類の検証を試みます。
ウーリッツァーのエレックトリックピアノについてはこれまでに触れたことがなかったので、そのリポートを含めて進めていきたいと考えています。
KORG ( コルグ ) / ノーチラス NAUTILUS-61
■ 永遠の名機、ローズエレクトリックピアノと対峙したエレピの名機、ウーリッツァー
ウーリッツァーのエレクトリックピアノはトランジスタ式で初期型の200は1968年にリリースされています。内部回路に変更が施された200Aは1974年から1983年まで長期に渡って生産されたモデルです。この2つのモデルが数あるウーリッツァーの中で最も人気を博したモデルです。
ウーリッツァーは木製のシャーシの上にプラスティックのカバーをかぶせて背面をフックで引掛け、ボルトでカバーを固定していました。そのカバーは運搬等を考慮し、軽量化を図ることでプラスティック素材が選択されました。結果的にはウーリッツァーのトレードマークとなる可愛らしいルックスになりました。200タイプはウーリッツァーピアノの初期型に見られた薄緑色の地味な見た目から、一気にポップなカラーを身に纏うことになります。
今でも人気があるのはそんな形状やカラーリングによるものだと推測されます。
ウーリッツァーの代表的な色はブラックですが、フォレストグリーンや赤、ベージュといった4色があります。
もう1つの200Aはブラックとアボカドグリーンの2色で展開をしていました。
販売台数が少なかったアボカドグリーンの機種に希少価値があり、プレミアムが付いた形で販売されています。最も高価なアボカドグリーンに次いで、ベージュ、赤、ブラックの順になっています。
その他にコンパクトで44Keyの106タイプや270タイプなどが存在しています。特に106タイプはウーリッツァー好きなユーザーが最も欲しがるレアモデルです。黄色、ベージュ、オレンジ色が存在します。子供用の音楽教室に置かれていたことから、可愛らしいカラーリングが施されたのでしょう。

ウーリッツァーピアノ200Aタイプ, public domain (Wikipediaより引用)
■ 音色に魅了されたミュージシャンが使った名機の特徴
ウーリッツァーの音の特徴はシンプルなコードワークが映える音色で、カーペンターズやダニー・ハサウェイ、クイーンなど、多くのミュージシャンが使用しています。
単音で弾いた際の音に説得力があり、印象的なフレーズやリフを弾く場合に向いていました。また、その朴とつとしたサウンド同様、鍵盤アクションもシャープではなく、レスポンスも弱かったことから、早いパッセージを弾くことには適さないエレピでした。
一方で弾き手側にリズムセンスがあれば、ファンキーでグルーヴィーな表現が可能でした。ダニー・ハサウェイによる演奏がその代表的な例と言えます。
音的にはアーシーでルーツ・ミュージックの雰囲気を持つ楽曲やロックな曲に使われることでその個性を発揮することができました。
またカーペンターズのようなシンプルでポップな楽曲とも相性がよく、テンションコードが多く使わないアコースティックギターとウーリッツァーのデュオや、シンガーソングライターの弾き語りなど、ナチュラルでオーガニックな曲にもベストマッチでした。ジョー・サンプルはローズピアノの使い手で知られていますが、クルセダースの楽曲、「Put It Where You Want It」では意識的に、このウーリッツァーピアノを使い、テキサス感を出しています。
■ ウーリッツァーピアノ音源の検証
ノーチラスに搭載されている音源の呼び出し方はセットリストからEPと表示されているウーリッツァーのエレピ音をタップして、クイックアクセス・ボタンのMODEボタン(左上)を押します。(画面1)階層に入っていくときには、このモードボタンが始まりで、次のプログラムボタンから奥の階層に侵入。

クイックアクセスボタン MODEボタンは左上(画面1)

モードセレクト(画面2)
モードタイプセレクト画面より、PROGRAMボタンをタップ、エレピ音源画面を出す。
■ EP-1ウーリッツァーピアノ音源の検証
1. Reed EP 200

ウーリッツァーピアノの鍵盤は木製でローズピアノは初期型では木製であるもののMarkⅡの途中からプラスティック製の鍵盤になる。両機ともグランドピアノのハンマーアクションを簡素化したような構造になっていてこの構造が音に直接反映されることになる。
弾き心地としてはローズピアノよりもウーリッツァーの鍵盤の方がスカスカしていたという記憶がある。
ローズはトーンバーの下にあるタイン(トーンジェネレーター)をハンマーで打つことに対し、ウーリッツァーは薄っぺらいリードをハンマーで打つという機能の違いがある。高音域はローズピアノと比較してもそれほど大きな違いはない。エレピの高音域はどれも音色的に似たり寄ったりのものという印象を持つ。
洗練され都会的のローズピアノに対し、アーシーで泥臭い音色。ただその泥臭さは言葉を変えればより単純であり、素朴で真直ぐなイメージを受ける。
多用する中音域から低音域にかけてはローズのノコギリ波に対し、ウーリッツァーの音色は矩形波的な要素を感じる。音的にはカパカパしている感じ。
音自体にまとわり付いている倍音が少なく、後期型の200Aタイプよりも音が全体的に痩せていて、さっぱりしている印象が強い。ただ、音的にファットな音色を好まない楽曲もあるのでその辺りの選択肢は考慮するべきなのだろう。
2. Reed EP 200A

200タイプよりも高音域から低音域まで全体的にファット感が強くなっている。音に含まれる倍音が豊かである。中間域(一番使う音域)では200タイプよりもくぐもった感が強くなる。中音域以下をフォルテで弾くとウーリッツァー特有の歪が出てくる。
音が半分でぶつかる9thコードなどを弾く場合に音が濁る。この手の和音をローズで弾くと心地良い音の濁り感があるのだが、ウーリッツァーの場合はそれが心地よくない。TO MUCH!な感じになってしまう。この辺りがシンプルな楽曲に適合するという所以ではないかと思う。
愛らしく飾り気のない素朴さがウーリッツァーピアノのセールスポイントなのだろう。
次回はエレピ音源に付帯しているビブラート等のエフェクトの検証を考えています。乞うご期待!
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