無料の現代的トラッカーSunVoxの解説となります。
SunVoxはモジュラーシンセの要素が強く、シンセの構造を知らないと難しく感じるかもしれません。逆にシンセに詳しい人からすると、その挙動や接続方法に違和感を感じることが多いと思います。いろんな意味で癖が強いモジュール群となっていますが、カラフルで遊び心のある取っつきやすい部分でもあります。あまりこだわらずに、割り切ることが重要です。
下画像は、公式サンプルのモジュラー領域です。カラフルなフォルダのような四角形がモジュールで、それぞれを接続することで音の流れを作ります。モジュールを結ぶ線が接続されたことを意味します。そして最終的にOutputに接続されることで、外に音として出力されます。

モジュールの接続
モジュール間の接続と解除はマウス+shiftで行う方法がスタンダードで直感的です。他にもクリックするだけで接続する方法もありますが、環境の違いによる対応策だと思います。モジュラーシンセのような信号の種類を意識する必要もなく手軽ですが、方向だけは意識する必要があります。
モジュールの種類
基本的には音を出力するSynthsモジュール、音を加工するEffectsモジュール、その他の操作等をするMiscモジュールに分かれています。使えるモジュールの一覧は以下のようになります。

Synths
このカテゴリーはモジュラーシンセのオシレータに相当しますが、SunVoxの場合は各モジュールに独立性があります。つまり細かな接続設定等をしなくても、それなりの音を簡単に出力することが出来ます。いくつかピックアップしてみます。
Analog generator、Generator
オシレータに加えて、フィルターや簡易エンベロープも内蔵されており単体でも利用できます。アナログシンセのような音を使いたいときに選択するモジュールです。パラメーターは以下のようになっていて、それほど直感的とは言えません。また癖が強く、普通のシンセの感触とは違います。

Generatorは、より簡便なオシレータとなっています。
次の音サンプルはAnalog generatorでWabeformを16進数で0~10まで16種類を切り替えて行ったものです。基本波形とノイズが中心の構成となっています。
FM、FMX
2オペレータの簡便なFM音源となっていますが、一通りFMらしいことは可能になっています。最近のバージョンではFMXという5オペレータのFM音源も加わりました。要望があったのでしょう。ただし設定箇所が多すぎて、SunVoxの手軽さと逆行してしまった印象があります。

SpectraVoice
倍音をコントロールするタイプのオシレータで、基本的には加算合成の考え方です。

DrumSynth、Kicker
DrumSynthはあらかじめ鍵盤にいくつかの音色がアサインされていて、手軽で使い勝手のよいモジュールです。バスドラム専用のKickerも用意されています。

Input
オーディオインターフェイスなどの外部から音を入力することが出来ます。リアルタイムに何かをしたいときには重宝するでしょう。
Sampler、Vorbis player
最もトラッカーらしいモジュールとなります。波形読込み、録音、ループやエンベロープの設定が可能です。伝統的なトラッカーにこだわりがある人は、このモジュールを中心に作るのではないでしょうか。比較的長いサウンドをそのまま使いたい場合はVorbis playerもあります。

Effects
エフェクトモジュールは多く、シンセで必須のフィルタ、LFOをはじめ、ディレイ、リバーブ、フランジャー、ディストーションなど一通り揃っています。ただし癖が強いものが多く、謎パラメータがいくつかあったりします。
Misc
このカテゴリーはやや特殊で他モジュールの痒い所に手が届くためのモジュールというか、補完的役割だったりします。ADSRなども加わり普通のモジュラーシンセのような印象を受けますが、接続や考え方が違うのでやや戸惑います。Glideなども、別モジュールとして用意されているところに衝撃を受けます。根本的な部分が古典的モジュラーシンセとは違うことが明らかで、SunVox独自の世界観として受け入れる必要があります。
MetaModule
複数のモジュールでひとつの音を作ることが多くなりますが、複雑になると混沌として、作業に支障が出てしまいます。そこで、それらをひとつのセットとして扱うMetaModuleがMiscに用意されています。複数モジュールを選択してコンテキストメニューからMake MetaModuleを選択する方法もあり、簡単にMetaModule化できるようになりました。
下画像は、Violinという名前の1個のModuleですが、その実態はMetaModuleということがプロパティで分かります。Editを押すと、中身が開き、4個のモジュールで構成されているのが確認できます。閉じるときは、分かりにくいのですが、左上ロゴ横に出現したBackというボタンを押します。

BMSボタン
設定するとB(BYPASS)、M(MUTE)、S(SOLO)がモジュール下にボタンとして表示され簡単に扱えるようになります。使用頻度も高く、視覚的にも分かりやすいのでお勧めです。設定はモジュール内のメニューで表示/非表示を切り替えます。

下動画はそれぞれのボタンを押したときの状態です。SunVoxは波形も表示されるので、動作がイメージしやすいと思います。
ビジュアル
モジュールのサイズ変更、色の変更、波形表示等、見やすくしたり、視覚的に楽しめるようにオプションがいくつかあります。下動画はOutputをオシロ(波形表示)とXY(リサジュー)を切り替えています。
次回はトラッカーの要であるパターンエディタを紹介します。
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