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蠱惑の楽器たち 83. u-he Filterscape VA レビュー2

2024-02-29

Theme:sound&person, sound

VAを使った基本的なアナログシンセの音作り

VAは基本的な減算式アナログシンセを網羅しているので、その機能を使って往年のアナログシンセサウンドを再現してみようと思います。また、その原理や手順もあわせて解説します。ここで紹介するテクニックは、どれも古典的とも言えるものですが、基本であるため現在でも知っておいて損はないと思います。

初期のアナログシンセは作成した音を保存できなかったため、毎回ノブを回して音作りをする必要がありました。現在から見ると不便に感じますが、否応なく各パラメータの役割を把握することになります。結果的にリアルタイムに音を変化させることができるようになり、柔軟なアプローチが可能になりました。現在はプリセットに頼りすぎて、リアルタイムにコントロールすることは稀かもしれません。あえてこのコラムでは、どのパラメータをいじるとどう変化するのかということに重点をおいてみたいと思います。また減算式アナログシンセは、どれも似たような構造なので他シンセに応用できる知識だと思います。

ピッチが違うオシレータの組み合わせ

今回は、複数あるオシレータのピッチを変えてスタンダードなシンセサウンドを作ってみます。VAには自由度の高いOSCが2個と低音補強用のSUBオシレータもあり、比較的自由な設定ができます。

OSC1、OSC2の扱える音程は弾いた鍵盤(NOTE)に対してプラスマイナス2オクターブの範囲で設定ができます。またTUNEで0.2セント単位(半音の1/500)の調整ができ、位相もphaseで±1/2piの範囲で調整可能となっています。さらにDetuneを使えば、お互いのピッチを微調整できます。SUBは弾いた鍵盤に対して、そのままの音(NOTE)か1オクターブ下、もしくは2オクターブ下を鳴らすことができ、音の補強以外にも積極的に利用できます。

5th サウンド

OSC1とOSC2を使った定番サウンドです。一方のOSCを5度上げることで、単音でも分厚い音が出せるようになります。5度の音は、例えば「ド」をルートとした場合、「ソ」の音となり、常にルートと5度の2音を弾いている状態となります。またルートに対して3倍音となります。3倍音は単音を弾いても実は鳴っている音なので、馴染みやすく和音を弾いた時にもあまり邪魔をしません。オクターブに次いで扱いやすい音といえます。

動画ではノコギリ波を使っていますが、ノコギリ波は整数倍音を豊富に含んでいます。下図は5th サウンドの周波数スペクトラムで、青が「ド」のノコギリ波、緑が「ソ」のノコギリ波となり、重なっている音も多くあります。これを見ると低次倍音で9thやM7の音が割と強く出ているのが分かります。そのため和音を弾く場合は、音の衝突に気をつける必要があります。

シンセベース SUB 1オクターブ下を使う

シンセが使われ始めた60~70年代初期はモノフォニックシンセしかありませんでした。生演奏では必然的に単音で演奏できるリードか、ベースを担当することになります。シンセによるベースは、ウッドベースやエレクトリックベースとは違った新たなベースとして認められていきます。特にこれまでのベースの最低音であったE1(41Hz)よりも低い重低音を難なく出せたため、結果的にエレクトリックベースの多弦化を促進したように思います。動画ではOSC1をノコギリ波にして、サブオシレータはサイン波を使って1オクターブ下の音を重ねています。フィルターをかけることでシンセベースらしい液体のような音にしてみました。ドラムも鳴っていますが別音源です。

SUB 2オクターブ下を使う

SUBの2オクターブ下は1オクターブ下よりも用途が限られてくると思います。ここでは発想を変えて、SUBを補強で使うのではなく基準音とし、OSC1を倍音として扱ってみます。OSC1を非整数次倍音に設定して、やや不協和な体鳴楽器のようなキラキラした音を作ってみました。

ディチューンサウンド

ふたつのOSCのピッチを微妙にずらしたサウンドです。OSCにあるTUNEでピッチの微調整ができますが、もっと手軽な方法としてパネル右下TUNINGのDETUNEを使います。今回はDETUNEを1にします。単位はセントと考えて問題ないです。そうするとOSC1のピッチが1セント程度上がり、OSC2のピッチは1セント程度下がります。結果的にOSC1とOSC2のピッチ差が2セントぐらいになります。さらに音量を揃えることで、ふたつのOSCから出た音は互いに強めあったり、弱めあったりすることで、ゆっくりしたうねりが生じます。ピッチのズレが大きいと、うねりが速くなってしまうため微妙な調整が必要です。ちなみに最大は100セントとなるので、OSC1が半音上で、OSC2が半音下となり、全音差(200セント)となります。動画はディチューンによるパッドサウンドです。

3和音

OSC1、OSC2、SUBオシレータをそれぞれ違うピッチに設定すればモノフォニックシンセでも和音演奏ができます。ここではSUBをNOTEに設定し、弾いた音をルート音とします。そしてOSC1とOCS2を任意のハーモニーに設定することでコードが完成します。動画の初めは平均律ですが、最後ではマイナーコードを純正律にして響きを濁らないようにしてみました。音色はFilterscape VA独特のclickを加えて少しエレピのように歪ませています。またモノフォニックでポルタメントも使って通常のポリフォニックとは違った雰囲気になるようにしてみました。演奏内容によりますが多くの場合、調性が崩れやすくなるため、それなりに注意して使う必要があります。あくまでもモノフォニックシンセで強引に和音を弾く設定なので、使い勝手に問題があることを忘れてはいけません。

次回はノイズジェネレータを見ていきたいと思います。


コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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achapi

楽器メーカーで楽器開発していました。楽器は不思議な道具で、人間が生きていく上で、必要不可欠でもないのに、いつの時代も、たいへんな魅力を放っています。音楽そのものが、実用性という意味では摩訶不思議な立ち位置ですが、その音楽を奏でる楽器も、道具としては一風変わった存在なのです。そんな掴み所のない楽器について、作り手視点で、あれこれ書いていきたいと思います。
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