
小さな子供は音を出すことが大好きです。
言葉を覚える前から音の出るものにはなんにでも興味を持ち、幼稚園や保育園でも音楽、ダンスの時間はなにより楽しそうにしています。
まだ物心つく前からの習い事としてピアノに人気が集まるのもうなずけますよね。
音楽を通じて豊かな人生を送って欲しい、情操教育の一環として、など自分の子供にピアノを習って欲しいと考えるお父さんお母さんは昔から多いです。
もちろんそれは素晴らしいことに間違いありませんが、ピアノを習いに行く前に知っておいて欲しいことがいくつかあります。 ご自身が習い事としてピアノを経験したことがない親御さんは少しだけこのコラムにお付き合いください。
■ 子供の練習に付き合ってあげる時間があるか。
ピアノ経験のない親は「レッスンは先生にお任せしよう」と考えている人も多いです。
小学生中学年くらいからはそれでもいいでしょう。
しかし、一番ピアノを始めるのが多い5歳くらいの子供にそれを求めるのは無理があります。
先生が宿題を出しても親が見ていなければすすんでやろうとする子供はほとんどいません。
仮に率先して始めたとしても効率の悪い練習方法ですしすぐに飽きてしまう事でしょう。
これはやる気がないから、というわけではないので勘違いしないでください。
このくらいの年齢の子供は親に【見て欲しい、かまって欲しい、誉めて欲しい】という欲求がとても強いです。
親が興味を示してくれない自分の行動は子供自身も興味を失ってしまいます。
つまり親にピアノ経験があるかないかというのは序盤においてさほど重要ではありません。
自宅練習の時は先生に習ったことを親が繰り返し思い出させてあげ、集中している時はただ黙って見ていてあげてください。
この時間が取れなければピアノを習っていても得るものは少ないでしょう。
最初は15分くらいから、小学校にあがれば毎日ではなくてもいいですが1日1~2時間くらいは見てあげる覚悟でいましょう。
■ どこまで本気で取り組むのか
ピアノを習っているからといって全員がコンクールで賞をとることを目標にする必要はありません。
好きな曲が初見で弾けるようになりたい、プロのピアニストになりたい、歌が好きだから伴奏となる楽器をおぼえたい、などなどどれも素敵な目標です。
ですが、ピアノは他の習い事と比べて少しお金がかかるのはピアノ未経験者の親でもなんとなく想像は付いていることと思います。
では具体的にどれくらいかというと目標によってかなりの差があるので、いくつかのケースに分けて紹介します。
○ とりあえず情操教育の一環として
ピアノそのものに固執しているわけではなく、あくまで子供が成長していく中でピアノを通してなにかしらのいい影響があればと考えているケースですね。
この場合はコンクールに出る必要も少ないので毎月のレッスン費用と教材費、試験料くらいのものでしょう。
年間で平均しても月1万円ちょっとが相場です。
たまに腕試しでコンクールに出たとしても1回1万円程度です。
ピアノは電子ピアノが扱いやすいのでおすすめです。
10万円以下のものでもじゅうぶんに練習用として使うことができます。
過去に 『子供がピアノを習うなら電子ピアノじゃダメなの?』というコラムも執筆しているので参考にしてみてください。
ただし、コンクールに出ないしピアノも生ピアノじゃないといっても親が練習を見てあげるというのは変わりません。 これだけはしっかりしておかないとピアノそのものに興味を失ってしまうので情操教育もなにもありません。
○ 一生ものの趣味として
ピアノが弾けなかったとしてもなにかしら音楽に携わってきた親なら、音楽を趣味や生きがいとして楽しんで欲しいと子供にすすめるケースも多いですよね。
この場合は20万円クラスの電子ピアノかアップライトピアノくらいは持っておきたいところです。
グランドピアノには劣るものの安価なモデルと比べると表現力の豊かさが格段に上がります。
また、コンクールや発表会にも率先して参加することで目標を持ち、達成感を得たりレベルアップを早めたりすることができます。
コンクールには参加費用や上位入賞時の遠征費用がかかり、合計すると1度のコンクールで1~5万円程度かかることもあります。
○ 音大まで視野に入れている
音大まで進んで欲しいという親はそう多くはないでしょう。
そう思っている親はピアノ経験者である場合が多いのでこのコラムを読む必要すらありません。
しかし、親がそう思っていなくてもピアノを習っていくうちにドハマリし、小学生のうちから音大を目指す子供もいます。
そうなった時の覚悟や金銭的余裕があるのかどうかということです。
まずはグランドピアノが必須となりますが、購入費用で100~200万円程度。
2階以上に設置する場合はクレーンが必要になる場合もありますし、年に1回くらいは調律費用もかかります。
それに音大の学費もありますが、入学前や卒業後にも引き続きお金がかかる場合があるというのはあまり知られていません。
音大もピンキリで、難関大学を目指すとなると音楽科のある高校に入ったり、有名な先生から音大受験向けのレッスンを付けてもらったりしなければなりません。
卒業後は半数以上の生徒が大学院や留学でさらに能力を高める道を選択するので4年間では終わりません。
さらに、音大生として真面目な生活を送るならバイトに打ち込むということはできないので、親からの仕送りが生活費の大半を占めます。
学費や家賃なども様々なので一概には言えませんが、幼少期から自立するまで総額2000万円くらいの余裕がないと子供を安心して音大に通わせることはできません。
少しネガティブなことも書いてしまいましたが、音大まで目指そうという子供は多くありませんし、目指したとしても実際に受験まで進むとなるとさらにその数は減ります。
ただ、少ない確率ながらも音大に入るとなった時の総費用はどれくらいかということだけ覚えておいていただければと思います。
そんな遠い未来のことで恐れて、可能性のひとつを潰してしまうのはもったいないですからね。
■ まとめ
大きく分けると、金銭面と親がかけられる時間について事前に考えてからピアノは習い始めるといいでしょう。
ピアノは小さい子供のうちから始められ、一生のスキルにすることができる素晴らしい習い事ですが、習った後から【思っていたのとは違った】という事態を極力さけるのにこのコラムが役立てば幸いです。
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