偉人:遠藤賢司
没(年齢):2017年10月25日(70歳)
遠藤賢司は時代ごとに音楽のアプローチを変えてきた。いや、基本は変わってないのかもしれない。熱烈なファンではなかったが、彼が表舞台に出てくる時は、素直に嬉しく応援したものだった。
私のファーストコンタクトは残念ながら、「カレーライス」でも「夜汽車のブルース」でもない。アルバム『東京ワッショイ』の時期。遠藤賢司がフォーク歌手としてスタートしたことも知らなかったが、そのインパクトは強烈だった。
テクノ?ニューウェイブ?遠藤賢司はテレビ画面を所狭しと暴れまくっていた。放送されたのは千葉テレビの音楽番組だったと記憶している。「東京!東京!東京!東京!ワッショイ!(ワッショイ!)」連呼とシャウトの美学に「これこそパンクだ!」と直感的に感動した。

後追いで名曲「カレーライス」を聴いた。切ないメロディーなのだが、なんともいえない幸せな空気が流れている。同時期に三島由紀夫が割腹自殺を行う。歌詞にさりげなくそのニュースも取り上げられているが、猫とキミと僕の間には、ただカレーライスのおいしい匂いが漂っている。
この曲は「遠藤賢司黎明期ライブ」というCDで聴いた。弾き語りに、せみの声が効果的に鳴り響いている。どの曲も素晴らしい当時の空気を閉じ込めた名盤だ。

君も猫も僕も
みんな好きだよ カレーライスが
君はトントン じゃがいもにんじん切って
涙を浮かべて たまねぎを切って
バカだな バカだな ついでに自分の手も切って
僕は座って ギターを弾いてるよ
カレーライス
(カレーライス)

80年代、発表した作品は少なかった。90年代に入り、遠藤賢司の音楽活動はライブを中心に活発となり、音楽はよりストレートなものになっていく。時にはノイジーなギターと共に弾き語り、トリオのロックバンドも結成した。
1981年には『史上最長寿のロックンローラー』も発表、なんとこのアルバム(いや、アルバムではない1曲入りのシングル!)、60cm×60cmの巨大なジャケットに、CDやすごろく(?)、巨大な段ボールに印刷された歌詞カード、メンバーの手形サインなどが同封されていた。
ライブでの熱い演奏も話題となり、若い世代にも注目されていった。「エンケン」の愛称で親しまれ、自らの音楽を「純音楽」というジャンルで括り、音楽に対してストレートに向き合う姿勢は多くの若いミュージシャンにも支持された。
※浦沢直樹のマンガ「20世紀少年」の主人公「遠藤健児」は遠藤賢司から拝借してるという。

「夢よ叫べ」は円熟期を迎えた遠藤賢司風演歌。名唱、名曲である。この曲と共に紅白出場を夢見るが(壮大なるジョークだったかもしれない)、その前に病魔に倒れてしまう。
ぶっきらぼうに見栄はって
どんなに強がっていても 本当はね
誰でも哀しくて 泣きたい夜だってあるよ
それでも見なよホラ 可愛いじゃないか
涙も知らぬげに
ソウサ〜 ソンナ〜夜に 負けるな友よ
夢よ叫べ
(夢よ叫べ)

遠藤賢司は非常にシャイだった。いつまでも少年のような感性を持っている人だった。ところがステージに立つとむき出しの感情がストレートに爆発。その歌詞に共感する人、勇気付けられる人がファンになったのだと思う。
本人も「コンサートは来てくれた人に「よし、俺もがんばろう!」って感じさせるもの。」と語っている。もう叶わないけど、同じ空間でこの曲を大声で合唱したかった。
年をとったとか そういう事じゃないぜ
俺が何を 欲しいか それだけだ
そう俺は本当に 馬鹿野郎だ
だから わかるかい 天才なんだ
「頑張れよ」なんて 言うんじゃないよ
俺はいつでも最高なのさ ああ 俺は不滅の男 俺は不滅の男
(不滅の男)