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帰ってきたRSD! そしてあいつも帰ってきた! その裏側を探る!

2020-08-27

Theme:おぼろげライヴ日記

レコードファン待望のレコード・ストア・デイがいよいよ開催されます。本来であれば毎年4月の第3土曜日に開催されるレコード・ストア・デイ(以下RSD)ですが、今年は新型コロナウィルスの感染拡大に伴い変則的な開催となりました。RSDは2008年から始まったレコードストアの発展とフィジカルにメディアと触れていく楽しさを提唱する祭典としてアメリカで提唱されました。今では23ヵ国で数千ものレコードショップが参加を表明、音楽ファンとともに一大イベントとなっています。今年は8月29日(土)、9月26日(土)、10月24日(土)の3日間に分散させ、「RSD DROPS 2020」とし開催する運びとなりました。(https://recordstoreday.jp/

発足から12年。レコード愛好家に限らず多くのファンに注目されて来た目玉は、やはり限定盤。そしてインターネットではなくお店でしか購入できないというある意味スリリングな購入方法にあると思います。そのリストは1ヵ月ほど前に各国ごとにインターネットで公開され、大手レコードショップでは、RSD向けの輸入盤も少数ながら店頭に並びます。この日はレコード店に開店前から行列ができるほど。ちなみに今年の国内リストはご覧のラインアップ。

https://recordstoreday.jp/store_list/

今年もさまざまなジャンルの選りすぐりアイテムが顔を揃えました。そんな作品群の中から注目のタイトルをピックアップしたいと思います。それがこちら。

ジグ・ジグ・スパトニック・エレクトロニック
「エレクトロニック DNA 2049~もう一度見せびらかしましょう~」

品番 BIJR020R 3500円

80年代初頭ロンドンで結成され「ラヴ・ミサイル F1-11」のヒット曲で知られるジグ・ジグ・スパトニック。そのVo.だったマーティン・ディグヴィルは紆余曲折ありながら今もなおSSS魂を絶やさずに活動中、それがこのジグ・ジグ・スパトニック・エレクトロニック。日本初上陸となる国内盤。
ホームページはこちら
http://siguesiguesputnikelectronic.com/?p=260

ISOLATED YOUTH
「IRIS(12inch EP)」

品番 BIJR018R 2500円

スウェーデンのストックホルムで結成された若き耽美系ポスト・パンク・バンド5人組、ISOLATED YOUTH。2017年結成当時、Vo.のAxelはなんと15歳で、兄のWilliamがGuitarを担当。2019年にデビューEP「Warfare」を発表、今作のEPがデビュー2作目となる。
ホームページはこちら
http://isolatedyouth.jp/?p=470

実はこれらのアイテム。海外アーティストの作品ですが手がけたのは日本のレーベル「B.I.J.Records.」。「普通のバンドはもういいや…」をキャッチコピーに、世界中の第六世代ロックバンドで音楽業界を崩壊させるコンセプトを掲げ、手がけるアーティストはもれなく音楽誌に取り上げられるといった注目のレーベルです。

特に今回のRSDで話題を呼びそうな作品がジグ・ジグ・スパトニック・エレクトロニックではないでしょうか。先行発売されたCDは「レコード・コレクターズ」誌でも大々的に紹介されました。ジグ・ジグ・スパトニックといえば、80年代に彗星のように現れ、日本でもさまざまな話題をかっさらって消えて行ったバンド(笑)。ちょうどレコードからCDへとメディアがバトンタッチをする時代。彼らの作品にはジャパニーズ・カルチャーが大胆に引用され、レコードジャケットやPV、ライナーなどアートワークにはカタカナを中心に日本語が多用され、英語表記の部分にもガンダム、ガッチャマン、ゾイドなど日本のキャラクターに関する単語が散見されました。クール・ジャパンの走りと言えるでしょう。そんなバンドの新作がRSDにレコード・メディアとして再登場するというのも不思議なものです。

幻の1stアルバム

ジグ・ジグ・スパトニック・エレクトロニックの今回のアルバム。僭越ながら、私がデザインを担当させていただきました。オーダーは「近未来風でありながら、アジアンテイストを生かしつつ、日本語も多用して欲しい」という30年前のイメージを踏襲するもの。衝撃のファーストアルバムにあった「見せびらかしましょう」は「もう一度見せびらかしましょう」に生まれ変わり、またもやアルバムタイトルになっています。レコード帯もゲートフォールドのアルバムをすべて巻き込む仕様になっており上から見ても、この「もう一度見せびらかしましょう」が読める様にしています。レコードを探す際に上から見ても目に留まる作戦です(どんな?)。

制作過程で面白かったのは、Vocalのマーティン・ディグヴィルから指定の日本文が来たこと。それが「私たちはロボセックスロックンロールスターとして未来をみますX」。見開きジャケット右にどどーんと載せました。2049年から届いたアルバム、ヒット曲(ラヴ・ミサイルF1-11、ブーン・ブーン・サテライト)の再録(2049年Version!)もあり、昔を懐かしむ人にも新たなファンにも話題になるアルバムと思います。

今回、制作サイドの裏側紹介という流れで、レーベルサイドから見たRSDについても取材を敢行しました。お話いただいたのはB.I.J.Records.プロデューサー兼ファウンダー「tetsu nclaren」氏です。

Q : 国内レーベルからの海外アーティストの出品はめずらしいと思うのですが、いかがでしょうか?
A : RSDは英国などでは国民的行事として歴史がある一方で、日本のRSDは認知度も低くまだまだ一般的ではない点が環境として異なります。レコードカッティング会社の東洋化成が自社のメセナ的発想でRSDと提携して啓蒙活動を行っているに過ぎないという事実もあります。ただ、参加店舗も増加傾向にあるので、将来的にはイベントとしてより成長する可能性があります。そもそも洋楽市場が日本では崩壊しているので、海外アーティストの日本出品は珍しく、今後もそれほど多くは増えないと思われます。

Q : 今回の作品をRSDに出そうと思った理由を教えてください。
A : B.I.J.Records.のリリース条件は【日本独自プロダクツ】であることをアーティストが関心をもって楽しめるかを基準にしています。今回は(RSDは新型コロナウイルス問題がなければ当初は世界的に6月開催)リリースタイミングが5月で予定していたこの2タイトルを、どうせならRSDに合わせようとバンドサイドに提案して遅らせた経緯があります。そのために、すでに6月にはアイテムは完成していました。結果的にはRSDが8月からのRSDドロップの企画に延期され、我々としては第一弾の8月に強行したという流れです。

Q : RSDはどんな手順を踏んで参加するのでしょうか?今回新型コロナウィルスの騒動により影響はありましたか?
A : 基本的にはエントリー制です。ただ、今回は新型コロナで延期になったために、遅延を容認できないバンドやアーティストは辞退をして、通常リリースを行なったものも多数あります。英国ではこのRSDでリリースされる12インチや7インチはレア音源や再発でもリマスターなどコレクターには人気で(しかも限定プレス)必ず高値になります。日本ではまだまだそのような環境にはありませんね。

Q : B.I.J.Records.は発足当初よりCDとアナログで作品を展開していますが、それぞれ狙っているターゲットなどはありますか?戦略的な違いがあれば教えてください。
A : CDとアナログレコードは異なる楽曲を収録することをアーティストと交渉しています。今回のISOLATED YOUTHもボーナストラックが異なります。そして本国のオリジナルよりも曲数が多いのもお約束です。ジグ・ジグ・スパトニック・エレクトロニックのようにアナログにCDをつけて【変則二枚組!】と謳っためちゃくちゃな企画もありますが、過去には【VANT】のアナログ購入特典において初回限定で未発表の前作CDをつけたこともあります。ターゲットとしてはもはやCDもレコードも中年以上しか買わない現状があるので(笑)。ここを変えるためにコンサートに招待の【GIG-CARD】を封入したマーケティングの啓蒙活動を行なっていますが、いわゆる【ビックリマンチョコのシール】戦略です。

Q : 最後にレーベル側から見たRSDはどんなイベントですか?
A : もし、今回のRSDで地方のレコードショップなどでの実売数字に直結したら、効果のあるイベントと言えるでしょう。しかし、それが数字に結びつかなければ、今のトーンでのRSDは本国に比べてあまりにも脆弱です。諸条件がうるさいので(先行発売禁止・ネット販売禁止など)その価値分がマーケティングに反映されるかで今後の参加を検討します。そもそも売り上げは期待していませんが、プロモーション効果に見合うイベントなのかどうか、今回が試金石と見ています。

国内におけるRSDはレーベル関係者にとってもまだまだ坂の途中といった感じの様です。形あるものとしての音楽が失われつつある中、レコードというメディアが一部のファンだけにしか楽しめないようでは勿体なく残念に思えます。その一方で制作コストなどを考えると決して手軽に買えるアイテムではありません。制作サイド、プレス会社、実施店舗の力が結集され、何よりそれを楽しむファンあってのRSD。今年は変則なRSDですが来年以降にどう繋がり、発展していくか?みんなで確認しに行きませんか?

レコード・ストア・デイ、いよいよ今週末からです!

取材協力:B.I.J.Records. (http://bijrecords.com/

Nakajima

自由気ままに雑多なことを書きなぐっていきます。根底にあるのは「愛と音楽」。世の愛すべき事象にスポットを当て、音楽好きに共感してもらえる記事を執筆していきます。プライベートでは、週末となればドラムを叩き、ライブや映画、展覧会などを楽しむアクティブ派。

 
 
 

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