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スッタモンダ・ハーモニカン話 第二話

2021-12-23

Theme:sound&person

皆さんはガリガリ君を御存知だろうか。日本のアイスキャンディー界のトップランナーであり、年間売上4億本を優に超えるスーパースターだ。そんなガリガリ君が、意外にもブルースハープの演奏技術向上にも大いに役立つという話を今回はしてみたいと思う。

前回のハーモニカン話では、ブルースハープでも半音階を出すことは可能だが結構大変だからやめておけ、と書いたはずだ。しかし楽器好きの人間というのは、大抵において「やめろ」と言われたら余計にやってみたくなるタイプのアホ努力家であると私は理解している。パソコンの更新時「終わるまで電源をOFFにしないでください」と表示されたらOFFにしたくてウズウズしてきませんか?そこの貴方。

そんな貴方のために、今回はブルースハープで半音階を出すための3つの方法を紹介しよう。

1. オーバーブローをマスターする

オーバーブロー(オーバードロー)とは、目的の穴を強く吹く(吸う)ことにより、吸う(吹く)側のリードを元の音程から半音ほど高い音で鳴らす技術である。例えば、通常4番は吹くと「ド」、吸うと「レ」だか、ここを強く吹いて「♯レ」を鳴らすということだ。

この、鳴らないはずのリードを無理に鳴らしてしまうという非常識極まりない技は、生半可な覚悟で身に付くものではない。しかしそれでも挑戦したいのなら、以下の手順で練習すると良いだろう。

① ガリガリ君を購入する。

フレーバーの指定は特にないが新作に挑戦するのだけはやめておけ。もしそれが口に合わない場合は次のステップには進めない。

② ガリガリ君を食べる。

買ってきたら一気に食べきる。ただし棒を捨ててはいけない。そう、この棒(以降この棒をガリガリ棒と呼ぶ)が必要なのだ。ここで運の悪いことにアタリが出てしまった場合は「今日の俺はツイてねえなあ」と言いながらもう一本貰ってきて食べなければならない。

③ 歯を磨く。

ふざけているわけではない。歯磨きはハーモニカ奏者にとって非常に大切なルーティーンなのだ。もし歯磨きせずにハーモニカを吹くならば、食べカスがリードに挟まって音が出なくなり、酸性の唾液でリードが腐食してしまうであろう。

④ ガリガリ棒でリードの穴をふさぐ。

ブルースハープの上側のカバーとリードプレートの隙間にガリガリ棒を挿し込み、目的の穴の吹音のリード穴をしっかりとふさぐようにする。

(図1)

この時、決して下側の隙間にガリガリ棒を挿し込んではならない。下側はリードが本体の外側に付いているため、ガリガリ棒を挿し込めばリードをガリガリっと破壊することとなる。

⑤ 目的の穴を強く吹いて音を確認する。

オーバーブローは通常、1番4番5番6番の穴で、それぞれ♯レ、♯レ、♯ファ、♯ラの音を出す技だが、どんな音が出るのか感じを掴んでおかないと目指す方向が定まらない。

最初は6番が良いだろう。ガリガリ棒でリード穴を塞いで、普通に吹いても音が出ないようにし、その状態のまま思いきり強く吹いてみよう。あっ!と驚くほど急にデカい音が出るはずだ。それがオーバーブローの音だ。近くに心臓の弱い人がいたら死ぬので要注意。

そうして音が出たら、吹く強さを色々と試してみて発音の感じをつかむこと。

⑥ オーバーブローの習得。

いよいよガリガリ君の力を借りずにオーバーブローに挑戦する時が来た。まず、ブローベンドができるか確認。8番をキューっと吹いて「ミ」から「レ」まで下げられればOK。その要領で、6番の「ソ」を下げようとしてみる。しかし原理的に「ソ」のリードは下がらないから「旦那、そりゃ無理ちゅうもんや~」と言いながらリードは鳴るのを止めてしまう。そうなったら、そこからさらにプッ!と吹くと、なんと「ラ」のリードが約半音高く鳴るのである。

この説明だけでは分かりづらい方には、ハーモニカ界のトップ・ユーチューバーのひとり、山口牧氏の解説動画を薦めることにする。「山口牧 オーバーブロー」で検索すると分かりやすい動画が出てくるので是非ご覧あれ。

尚、何事もお金で解決したい向きにはこんな商品もあるので一応紹介しておく。

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2. バルブを貼る改造を施す

ブルースハープは、1つの穴に吹いて鳴るリードと吸って鳴るリードが共存しているのだが、片方のリードが普通に鳴っている時には、もう片方の鳴っていないリードからはスカスカに空気が抜けている。

では、そのスカスカ抜けるのを防ぐ、すなわち鳴っていない時には空気弁で塞がるようにしたらどうなるか。実はそうすることにより、低いほうのリードでもベンドができるようになるのである。

例えば6番穴の「ソ」「ラ」は通常は「ラ」しかベンドができないが、「ラ」のリードに空気弁を付けると「ソ」でもベンドができるようになるわけだ。このような空気弁のことを業界用語で「バルブ」という。

この仕組みを上手く利用すれば、ブルースハープでもベンドによって全ての半音階を出す事が可能だ。具体的には、1番吸、2番吸、5番吸、6番吸、7番吹、8番吹、10番吹のリードの裏側にバルブを貼り付ければ良い。

(図2)

尚、上の図のバルブはクロマチックハーモニカ用の物を使っている。元々クロマチックハーモニカは構造的に空気漏れが多いため、ほぼ全てのリードにバルブが貼ってあり、交換用バルブの販売もあるが、もしかするとガリガリ君の袋を細く切って代用できるかもしれない。どなたか試してみてはいかがか。

以上が改造方法であるが、何事もお金で解決したい向きにはこんな商品もあるので、一応紹介しておく。

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3. 特殊なチューニングを施す。

ハーモニカのリードは、ヤスリ等で先のほうをガリガリ削ると音が高くなり、根元のほうをガリガリ削ると音が低くなる。それで半音程度は調整できるので、ギターでいうところの変則チューニングを施す場合も多い。5番「ファ」を「♯ファ」にするカントリーチューニングが良い例だ。

てことは要するに、ベンドで全ての半音階を出せるようにチューニングしてしまえば良いわけだ。一例として、次の図の用にチューニングする。

(図3)

この例では下側のリードしか削っていない。それだとボディからリードプレートを外さなくても加工できるからだ。理論的にはこのチューニングで全ての半音階が出せるはずだが、10番ブローベンドはちょっと非現実的か。

この方法に関しては前述のような都合の良い商品は存在しないが、何としてもお金で解決したい向きには、TOMBOかSUZUKIあるいはHOHNORならモリダイラ楽器に特注すれば作ってもらえるかもしれない。

ちなみに、特注品としてディミニッシュチューニングなるものが存在し、それだとベンドで全ての半音階を出すことが可能ではあるのだが、もはやブルースハープとは言えないくらい音階が変わっているので今回は省略させて頂く。

以上がブルースハープで半音階を出す3つの方法だ。 長々と書いてしまったが、まあ最後に結論を簡潔にまとめるとすると、

「やっぱクロマチックハーモニカのほうが楽なんでねえべか?」


コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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KzSuyama

音楽を生業にしようと決心してからほぼ半世紀、 しかし未だに副業状態という未練たらたらのオジサンである。
過去にはTVゲームの作曲・編曲などで小金を稼ぎ、 現在はギターとハーモニカの講師で僅かなお駄賃を頂戴するボヘミアン。
でもまあ、このままいけば本業の退職後は音楽が生業になるぞ! って、こんな歳になってもプータロー気質が抜けない私をどうぞよろしく。

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