先日、30秒の春っぽい曲というコンセプトのコンピレーションアルバムを制作しました。
せっかくなので自分も曲を提出しようと思い、ツーピース時代のチャットモンチーのようなギターとドラムの可愛い曲をイメージして作ってみたのですが、完成したのは変な曲。
どうやらここ数年マスロックばかり聴いていたせいで、ギターの手癖が変わったみたいです。そこで、曲中のフレーズを自己分析してみました。
4つの奏法
この曲では主に4つの奏法を使っています。
■コード弾き+タッピング
マスロックといえばタッピングのイメージが強いと思います。その中でも最もスタンダードな方法の1つです。感覚的にはピアノに近いものがありますね。タッピングは押したときだけでなく指を離したときも音を出すことができるので独特なメロディになります。タッピングを始めたての頃は全然音が鳴らなかったので、コンプレッサーを最大にかけながら、角度や力加減のコツを掴みました。
ちなみにこの奏法は、コードのサスティーンが切れてからタッピングをしてもコード感を得ることができます。これは、直前に鳴っていたコードの上にメロディが乗っていると思い込む人間の耳の錯覚によるものです。つまり、一度コードをジャッ!っと鳴らした直後にタッピングをしてもコードは頭の中に残ってくれています。 この手法をよく利用しているのがアメリカのバンド、Tiny Moving Partsです。
コード感を保ちつつ、両手でタッピングできるのでフレーズの自由度が広がります。
■スラップ+タッピング
スラップはベースでよく使われる奏法ですが、ギターにおいても有効です。マスロックはリズムに特徴がある音楽なので、このようなパーカッシブルな奏法は相性抜群。タッピング同様、最初は全然音が鳴らなかったのでイコライザーで低域をめちゃくちゃ上げたりしながらコツを掴みました。
■アルペジオ+メロディ
ソロギターの代名詞のような奏法ですね。マスロックにおいても多く使われます。
アルペジオにメロディを足すことで弾き手のオリジナリティがグッと出るのですが、いかんせん難易度は高いです。
あまり理論的なことは考えずに、ルート音だけ把握して後は不協和音にならなければOKぐらいの感じで作っていくと結構うまくいきます。
■ハーモニクス
マスロックに限らず多く使われていますね。ナチュラルハーモニクスだと、3フレット、7フレット、12フレットが綺麗に鳴ってくれますが、個人的にはピッチを気にせず2フレットで金属音のような音を出すのが好きです。また、ハーモニクスはフレーズの最後にキメとして使うことが多いですが、Polyphiaのtim hensonのようにフレーズの途中に入れるのもかっこいいですね。
変則チューニングで手癖を取得
これら4つの奏法をどのように使っていくかについてですが、変則チューニングを使うことで自然に手癖がつきました。今回作った曲は、以下のチューニングで身につけた手癖をレギュラーチューニングに落とし込んでいます。
■FACGCEチューニング
このチューニングの特徴は、なんといっても開放弦の響きが素晴らしいこと。
なにも押さえずに6弦から1弦までジャーンと鳴らしただけでも気持ちいい音になります。この性質を利用して作られたのがAmerican FootballのNever Meant。
イントロから続くリフは、1弦と2弦の開放弦を鳴らしながら3弦だけフレットが上昇していくという形をとっており、FACGCEチューニングの旨み成分がふんだんに使われた1曲です。
このように開放弦だけでもキレイなハーモニーが成り立つので、FACGCEチューニングだと「アルペジオ+メロディ」のフレーズがとても作りやすくなります。
■DADGADチューニング
タッピングにうってつけのチューニング。
5弦と6弦の関係性はドロップDチューニングと同じ。つまり、指1本でコードを鳴らせるということです。例えば、5弦と6弦の1フレットを人差し指で押さえたら、6弦→D#、5弦→A#となるのでこれだけでD#のパワーコードが作れてしまいます。この特徴をタッピングに応用すれば人差し指だけでコードを鳴らし、残りの指をメロディに使えるのでかなり運指が楽になるというわけです。
宇宙コンビニの8filmsという曲の運指を観るとDADGADチューニングの活かし方がよくわかります。
これら2つのチューニングでコピーをしたり、フレーズを作ったりすることで6弦~4弦と3弦~1弦を別々の楽器としてとらえるようになりました。
こうしたスタイルは、”ちょっとギター弾いてみてよ”みたいな無茶振りにも対応できるのでお得です。
ちなみに今回のコンピレーションアルバムでは色々なジャンルの楽曲が集まり、とても良い作品になりました。
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