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映画にまつわるえとせとら ― 人間の証明(1977年)

2018-02-15

Theme:映画と音楽と

作家:森村誠一の名前を一気に有名にした作品は、まぎれもなく「人間の証明」だ。映画の宣伝文に使われた「読んでから見るか、見てから読むか」は最も初期の時代に採られたメディア・ミックスの手法。その他にも、本編に登場する西條八十の詩から採られた主題歌、それを歌う故ジョー山中(本編でも重要な役)の出演。映画と音楽の関係は「ママ、覚えてる?」という切ないテーマで結びつき、共に大ヒットした。

ストーリーは推理ものながら、すぐに犯人を想像できる展開となっている。小説では、それなりにボリュームを割いてストーリーは展開していくが、映画はテンポ良くそれぞれ登場人物の関係を暴いていく。ある日、身元不明の黒人がホテルのエレベーターで息を引き取る。死因は刺殺。彼が最後に発した麦わら帽子(ストロウハット)、霧積という言葉、所持していた西條八十の詩集から、意外な人物の意外な過去が暴かれる。犯人は実の母親だった。ショッキングな展開ながら、この母親に感情移入ができてしまうほど、彼女の生きた時代は厳しかった。母を慕う想いに、読者は映画を観た人は心を揺さぶられることになる。犯人を追い詰める棟居弘一良刑事は、故松田優作。棟居刑事はこの他にも、森村誠一の小説に登場するが、人間の証明は出演第一作となっている。この作品のテーマは「惨い運命」に人間が直面した時、人間はどの道を選択するか?だ。棟居刑事もその一人として、描かれる。ニューヨークでタッグを組む刑事が自分の父をリンチし死に追いやった男だった。

事件の舞台となったホテルのモデルは赤坂のホテルニューオータニだ。森村誠一はここの従業員でフロントを担当していた。1960年代後半あたり。ラウンジの灯りが麦わら帽子に見えるといった発見、殺害からエレベーターまでの移動時間と、犯人のアリバイ崩しに繋がるなど経験がなければ書けない内容だ。その後、この作品は何度もテレビでドラマ化されている。名作と言われる所以だろう。

2017年のドラマ化では、EXILEのATSUSHIとギタリストCharにより、「人間の証明のテーマ」が新録された。



Nakajima

自由気ままに雑多なことを書きなぐっていきます。根底にあるのは「愛と音楽」。世の愛すべき事象にスポットを当て、音楽好きに共感してもらえる記事を執筆していきます。プライベートでは、週末となればドラムを叩き、ライブや映画、展覧会などを楽しむアクティブ派。

 
 
 

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