皆さんはミュージカル映画と言われて、何を思い浮かべるでしょう。ウエストサイドストーリーやサウンドオブミュージック、最近の作品では大ヒットした舞台を映画化したオペラ座の怪人やレ・ミゼラブル、ジャズを取り入れたラ・ラ・ランドが話題になりました。
今回はラ・ラ・ランドでも影響がみられた、フランスミュージカル映画の黄金コンビ、ジャック・ドゥミ監督とミシェル・ルグランの音楽による傑作「ロシュフォールの恋人たち」について音楽を中心に取り上げたいと思います。
舞台は年に一度の祭りを控え賑わうフランス西部の港町ロシュフォール。そこに住む双子姉妹ソランジュとデルフィーヌは、それぞれ音楽家とバレリーナを志しています。シングルマザーとして双子姉妹を育てたイヴォンヌはカフェを営み、そこへは水兵のマクサンス、祭りのショーに出るエチエンヌとビルが来ていました。
2 l'arrivée des camionneurs
冒頭で流れる「キャラバンの到着」です。低音から始まり、打楽器が加わっていくことで期待感が高まり、そしていきなり転調という始まり方には痺れます。CMで使われることがあり、吹奏楽アレンジもされているので、聴いたことや演奏する機会があったという方も多いのではないでしょうか。
Chanson des jumelles
恋やパリへの想いを歌った「双子姉妹の歌」です。こちらもよく耳にすることが多いと思います。現代日本の映画やドラマが専門家を呼んで、医療処置や楽器演奏はかなりリアルに再現しているのと比べると、この映画の楽器演奏は滑稽にも見えます(私自身リアルかどうかはあまり気にしないですが)。
Les Demoiselles de Rochefort (1967) - La Chanson de Maxence
「マクサンスの歌」です。彼は夢見がちで理想の女性を探しています。自分の理想の女性を絵に描き、デルフィーヌの恋人が営む画廊に置かれ、それはまさにデルフィーヌそっくりなのです。
楽器店を営むシモンは、ダムという苗字のせいで振られてしまった過去の恋を歌うなど、それぞれが自身の恋を歌って進んでいきます。
Les demoiselles de Rochefort: Marins, Amis, Amants Ou Maris
エチエンヌやビルとともにショーに出る予定だった女性2人が水兵と恋に落ち去ってしまう場面で歌われる「水夫、友達、恋人、または夫」です。困った2人は双子姉妹へ代役を頼み、無事にショーを終えます。
Chanson d'Andy
「アンディの歌」です。シモンに音楽家アンディを紹介してもらえることになったソランジュは帰り道、偶然にも本人とぶつかり、楽譜を落としてしまいます。2人はそこで惹かれあいますが、アンディのいるパリへ急ぐソランジュは、ぶつかったのが本人と知らず、すぐに去ります。
いかがでしたでしょうか。ネタバレになってしまうというのと、音楽の紹介が主であることを考慮してここまでにしておきます。本作は役者陣も豪華で、エチエンヌを演じたジョージ・チャキリスはウエストサイドストーリーにも出演しています。音楽を担当したミシェル・ルグランは映画音楽の他にジャズでも活躍しており、この記事で紹介した曲は軽やかで洒落たものが多い印象を受けたのではないでしょうか。
恋人「たち」とあるように、1組のプリンスとプリンセスを巡るストーリーではありません。
双子姉妹、マクサンス、シモン・ダム、アンディ、エチエンヌ……。それぞれの恋がどのように展開していくのか気になった方はぜひ本編を観てください。そして音楽が気に入った方は「シェルブールの雨傘」など他の映画、ジャズピアニストとして出しているアルバムも聴いてみてください。
ご拝読ありがとうございました。