映像(映画)に生演奏を合わせて鑑賞するイベントが増えています。その効果は、一言でいえば「素晴らしい音響効果に緊張感を加味した映画鑑賞」という感じでしょうか?(全然、一言じゃないですが。。。)
そんなイベントが川崎クラブ・チッタで行われます。演奏をするのはイタリアン・ホラー映画ではお馴染みのゴブリン。実は映画とシンクロするイベントも今回で3回目。ホラー映画として70年代に大ヒットした「サスペリア」「サスペリア2」に続いてのシリーズ上映です。
今回の映画「ゾンビ」は、ダリオ・アルジェントが監督の作品ではなく、アメリカのホラー映画の巨匠ジョージ・A・ロメロの出世作。実はこの映画、音楽は2種類存在し、資金のなかったロメロ版は著作権フリーの音楽が、アルジェント監修版にはゴブリンの音楽が使われています。
今回、たった一夜のために演奏されるのは、もちろん後者。さらに演奏者の希望で、イタリア語吹き替え版/日本語字幕(これが日本初上映)というイタリアで上映された仕様でのお披露目となります。たった1日だけの(恐怖の!)異空間体験として注目が集まっています。
川崎クラブ・チッタ開催「ゴブリン」ライブ&シネマ・スペクタクル/シンクロ・ライブ

このように、映画に生演奏をプラスするというイベントは古くから存在していました。その歴史はサイレント映画とともにスタートしています。音声トラックの存在しないサイレント映画を上映していたのは、1900年の後期から40年ほど。日本では弁士と呼ばれる解説者が映像に合わせてストーリーや台詞を話していました。
その頃の雰囲気を楽しむイベントも数は少ないものの、今でも小さな映画館で自主企画として行われています。私も、その昔、生で弁士の語りを体験しました。映像と語りだけという情報が少ない分、想像力が膨らみ映画館という空間が不思議な空間に感じられました。

今でこそ、映画と生演奏というイベントは珍しくないかもしれません。スター・ウォーズの映像にジョン・ウィリアムスの音楽や、ゴジラの映像に伊福部昭の音楽を乗せたイベントなどもこれまで多く存在します。
それらの魅力を一言でいうと「臨場感」に尽きるでしょう。初のステレオ音声作品でもあるディズニー映画「ファンタジア」は、使用されている楽曲にクラシックの名曲が多いこともあり、幅広い層に向けて同様のイベントが行われています。(日本では2015年に映画上映に合わせた生演奏が行われました。映画が完成して55年後のことです。)
ドイツのポポル・ブフの初来日は、横浜の美術館の壁に「ノスフェラトゥ」「アギーレ」などを上映したライブでした。独自のエレクトリックサウンドによる浮遊感は他には体験できないものでした。

過去に日本で行われた大掛かりな映像と生演奏のシンクロと言えば、1989年に日本武道館で上映されたアメリカ映画「イントレランス」でしょう。映画の制作は1916年。巨大なセットに大量のエキストラを動員して作られたサイレント映画時代の超大作です。
オーケストラによる生演奏は巨大なスクリーンに映し出される映画の迫力と合わせて、圧倒的な臨場感があったと記憶しています。とはいえ、思い返せばバブル期ならではの大掛かりなイベントでした。
これらのイベントは通常の映画上映に比べ、手間暇と人件費がかかっています。なので、ほとんどのイベントにおける入場料は高額であったり、開催日が限られています。ただ、そこで得られる迫力や臨場感は、なかなか日常で味わえるものではありません。機会がありましたら、ぜひ!