トレモロユニット。正確にはビブラートユニット。フェンダー社よりも前に開発されたビブラートユニットはビグスピーなど存在していたが、ピッチの正確さや音質を考えたら、フェンダー社のシンクロナイズド・トレモロユニットが性能・音質面で未だに現役で使用されている。
トレモロユニット / シンクロナイズド 一覧
ビグスビー社のトレモロユニットはルックスが個性的でテレキャスターなどに装着すると似合う。またスティーブ・ルカサーの愛用レスポールにも以前装着した後がわかる。
しかし、ビグスピーは音程の変化が微妙でピッチも正確さでは劣っていた。この効き具合が好きな愛用ギタリストも多いがユニットが大きくデザインが個性的な分、取り付けるギターも限られていたかも知れない。メンテナンスもあまり良くないと考えられるし、こだわりのある楽器店ではフェンダー社の汎用パーツは比較的豊富だが他のビブラートユニットはパーツが在庫にあまりない。
ストラトキャスターは1950年代前半にはほぼ雛型が出来上がっていたが、トレモロユニット開発で苦戦を強いられ、デビューの1954年ギリギリまで考えたなかで生まれたのだ。
最初に作られたトレモロユニットはとにかくサスティーンがなく、アルバイト兼実験台=テストパイロット時代だったビルカーソンは、ピックアップに原因があるのではと思ったらしい。
しかしピックアップには問題がなかった。
そこでレオ・フェンダーは試行錯誤の上、ユニットの下に鉄の固まりを置くとサスティーンが得られる事を発見したのである。1954年発売まで時間がなかったが、同年秋頃には生産体制が整い始め、このパーツが付けられて市場に出回った。また開発途中には3本のスプリングしか張っていないストラトもあったといわれる。初期のストラトは春先に完成したが、主に代理店への紹介用として製作したらしい。
そしてジミ・ヘンドリックスにより陽の目を見たシンクロ、と言うよりストラトの評価が一気に上がったなか、一つ問題がある。アームが緩みやすいのだ。
そこでアームを上手く固定して長持ちする技がある。
それは電子レンジなど調理に使うラップを巻くこと。これなら一般家庭どこにでもあり小さなバネを買うより効果的。メーカーさんごめんなさい。スプリングを買うより紛失がないし安い!!
私はバンドを組んでいた時、スペア弦の中に忍ばせていた。
欠点をあえて言うと、僅かながらゴミが出る事。この一点だけだと思う。
※トレモロアームにラップを着けた画像です。量はお好みですがアームを折っても自己責任でお願いいたします。

シンクロナイズドトレモロユニットはほぼ完成されたビブラートユニットだ。
音質は自然だし、弦高調整もネジ一本で済む。6弦のオクターブ調整はやや難ありだが、デザインも良いし、サスティーンも長い。
80年代から脚光をあびたフロイド・ローズもフェンダー社のこのトレモロからヒントを得たのは容易に察する。
ただし、理性を持って使用する事。プロギタリストの多くはステージで『演出として』使っている事をお忘れなく。ちなみにレオ・フェンダーがジミ・ヘンドリックスのアーミングをみて否定的な意見を語っていたらしい。
高校生の時、私はアームを激しく使って折ってしまった。プレートとブロック一体型のダイキャスト製で9,000円。正月のお年玉が一瞬にして消えた。
以上です。
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