1945年創業のマイクブランド、SENNHEISER(ゼンハイザー)。SENNHEISERはプロの現場だけでなく、自宅録音やライブを行うミュージシャンも使用することができます。
マイク選びに必要な4つの知識(スペック)と、数あるラインナップの中からボーカル用途に適したワイヤード(有線接続)マイクを紹介します。本記事を参考に、SENNHEISERのボーカルマイクを選んでみましょう。
適切なマイクを選ぶにはある程度の知識が必要です。ご自身のマイクを選ぶ時に最低限必要になる4つのスペックについて説明します。
最も重要なのは、「ステージでの使用を考慮するかどうか」ということです。ステージ用途の場合、選択肢は後述のハンドヘルド型に絞られます。ステージで使用しない場合は自由に選ぶことができます。
以下に記事後半で紹介している5機種のマイクについて、4つのスペックと用途をまとめました。
MD 421-Ⅱ | MD 445 | e 965 | XS 1 | MK 4 | MK 8 | |
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動作原理 | ダイナミック | ダイナミック | コンデンサー | ダイナミック | コンデンサー | コンデンサー |
ダイヤフラム(振動板)の大きさ | スモール | スモール | スモール | スモール | ラージ | ラージ |
指向性 | 単一指向性 | 単一指向性 | 単一指向性 | 単一指向性 | 単一指向性 | 切替 |
音の入力方法 | エンドアドレス | エンドアドレス | エンドアドレス | エンドアドレス | サイドアドレス | サイドアドレス |
グレード | 上級者向け | 上級者向け | 中級者向け | 初心者向け | 中級者向け | 上級者向け |
ステージ(ライブ)用途 | ◯ | ◎ | ◎ | ◯ | X | X |
レコーディング(DTM)用途 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◎ | ◎ |
マイクは空気の振動を電気信号に変換する機器で、変換方法(動作原理)にはいくつかのタイプがあります。ほとんどは「ダイナミック型」か「コンデンサー型」のどちらかに該当します。
「ボーカルはコンデンサー型が良い」などのセオリーがありますが、「ダイナミック型だから〜はできない」などの制限はありません。ルックスや音質、利便性を優先して選んでも大丈夫でしょう。
音を受けて振動するダイヤフラム(振動板)がコイルに直結しており、コイルが磁石の中で動くことで発電し、電気信号に変換します。その構造からムービングコイル型とも呼ばれます。構造がシンプルなので丈夫であり、PAで多用されます。傾向的にはパンチのあるサウンドが得られます。
音を受けて振動するダイヤフラムがコンデンサーというパーツの一部になっており、ダイヤフラムの動きに連動するコンデンサーの静電容量の変化を電気信号として出力します。動作にはファンタム電源が必要であるほか、繊細で壊れやすく湿気にも弱いため、扱いには注意が必要です。細やかでレスポンスの早いサウンドが得られるため、レコーディングで多用されます。
空気振動を受ける膜のことをダイヤフラム(振動板)と言います。コンデンサーマイクではダイヤフラムが大きいマイクを特に「ラージダイヤフラム」と呼びます。
ラージダイヤフラム以外の小さなダイヤフラムのマイクはスモールダイヤフラムと呼ばれます。「〜mm以上はラージダイヤフラム」という規定はなく、概ね20mm以上のダイヤフラムのマイクがラージダイヤフラムと呼ばれています。
ボーカルレコーディング用途ではラージダイヤフラムの使用がスタンダードですが、絶対的なものではなく、スモールダイヤフラムでもボーカル録音に使用できます。迷った場合は、ボーカル用途ならラージダイヤフラムのマイクを選択しておきましょう。
ダイヤフラムが大きいため柔らかく作ることができ、小音量でもダイヤフラムが振動しやすくなるため感度が高いマイクとなります。ノイズに対しても有利です。ダイヤフラムのサイズにあわせて筐体が大きくなるため、レコーディング用途の大型マイクで採用されます。
ダイヤフラムが小さいため硬くなり、ラージダイヤフラムと比較して感度が劣ります。一方で大きな音に耐えることができます。筐体の設計自由度が高くなるため、様々なマイクで採用されています。
人間は正面の音が聞きやすいように、マイクにも向きがあります。指向性と呼ばれており、切り替えが可能なマイクもあります。プロのエンジニアではない場合は、「単一指向性(カーディオイド)」のマイクを選んでおきましょう。
指向性はポーラーパターンという資料で表されます。音をよく拾う方向を線で示したもので、上がマイク正面、背面が下です。円の外側に行くほど感度が良いということを表しています。
正面の音を最もよく拾う(収音する)ように作られたマイクです。その収音特性の形(ポーラーパターン)からカーディオイド(=ハート)型とも呼ばれます。
収音可能な向きが鋭いものは「スーパーカーディオイド」「ハイパーカーディオイド」などと呼ばれることがあります。鋭いほど正面以外の音を拾いにくくなります。
マイクの向きに関係なくどの方向の音も均等に収音します。壁で跳ね返った音も収音してしまうため、響きが調整されていない場所での使用には適しません。
指向性の調整は音質変化を伴うため、本来のマイクの音、最も自然な音は全指向性であると言われています。レコーディングスタジオやホール等の良い響きが得られる場所で使用されます。
前後両方の音を均等に収音する特性で、ラジオの対談等で使用されることがあります。音楽録音の用途ではほぼ使用されません。
マイクの正面は見た目と異なることがあります。
ライブでの使用を予定する場合はエンドアドレス型の中でもハンドヘルド型を選択しましょう。形状による制約はほとんどありませんので、ライブ用途以外ではデザインや好みで選びましょう。
マイクの軸(長辺)と同じ向きが正面になるマイクをエンドアドレス型と呼びます。その中でも、手で持って使用するタイプはハンドヘルド型と呼ばれます。
マイクの軸(長辺)と異なる向きが正面になるマイクをサイドアドレス型と呼びます。ほとんどのサイドアドレス型は軸と正面の方向が90度異なります。大きなダイヤフラムを搭載するマイクはサイドアドレスが多くなります。
SENNHEISERのボーカルマイクについて解説してきましたが、いかがだったでしょうか。ダイナミックマイクの方が安いというイメージがありますが、SENNHEISERはむしろダイナミックマイクの方が高額というケースも多くあります。
従って、自宅でレコーディングする用途であればMK 4から初めてみるのが良いでしょう。質実剛健、SENNHEISERサウンドをお楽しみください。