弦楽器の弦は消耗品なので劣化したり、切れたりといったことはつきものです。新しくても切れる時には切れるものでもあります。切れた弦、古くなった弦は交換(張替えとも言います)します。
弦は切れない限り張っておけるものですが、古くなると正しい音程が得られなくなったり、音質が劣化したりします。
度合いによりますので、交換の時期に明確な決まりはありませんが、たとえば3ヶ月程度を目安にするなど、ご自身の使用環境で交換したい時期を決めておくといいかもしれません。予備の弦を1セット常備して置くことをお勧めします。
弦は芯線の周りに巻き線が巻かれている構造になっています。弦をよく見て巻き線がほつれていたりしたら交換をおすすめします。写真はスチール弦の巻き線がほつれている様子です。駒や上ナットなど弦が折れ曲がって力のかかる箇所は劣化が早いです。E線(1弦)は巻き線ではなく裸線のものが殆どですので、目で見てサビや黒ずみなどが無いか、指に触れてざらざらしないかなどが判断基準です。弾き終わった後は布で手が触れた場所を拭いておきましょう。
では弦交換を始めましょう。弦交換に早道は無い、と思います。慌てずに順を追って行いましょう。
01
作業スペースを準備する
作業する周辺は片づけて、楽器を平置きにするか、もしくは膝の上に置いて作業します。バイオリンは平らな場所にはどう置いても座りが悪いものなので、真ん中がくぼんだ枕等を一個準備してその上に置くと安定します。慣れるとひざの上はとても楽な作業台です。
02
古い弦を外す前にコマの位置をマークする
弦を一度に全部外すと、コマも外れます。
元々立っている場所からずれない様にするため、シールやマスキングテープを三角形に切り、その一角を駒の足の後ろ側両端にマークします。
テールピースのアジャスターの部品が本体に当たらない様に、折り畳んだティッシュやハンカチなどをテールピースの下に挟むなどしましょう。
※注意
この時、弦の圧力がゆるんだ時点で、まれに魂柱が倒れる場合があります。
魂柱が倒れた時点でその先の作業には進むことが出来ません。お手数ですがサウンドハウスへ直接お問い合わせください。
03
弦を取り出す
弦の一端にボールエンドと呼ばれる丸い金属がついています。
ボールエンドをテールピースの鍵穴状の穴、またはアジャスターの爪に取り付けます。
取り付けたボールエンドは弦を張る作業中に弦の弾力で外れたりします。必要であればマスキングテープで軽く押さえておきましょう。
弦の長さはおおむね楽器のサイズに適合した長さになっています。
巻く順番はG(4弦)
E(1弦)
D(3弦)
A(2弦)の順番が最も良いでしょう
04
弦の先端をペグの糸穴に差し込み、先端を少し出してから巻き始める
巻始め
ペグを巻く時には弦に多少テンションを加えながら、たるみがない様に巻いていきます。内側から外側に巻いていくのがポイントです。
(写真は見やすくするため、実際の弦ではなく太めの半田の線を用いています)
05
テールピース側のボールエンドを確認する
G線(4弦)がある程度巻けたら、ここでテールピース側のボールエンドが外れていないかどうか確認してください。またE線(1弦)を巻いた後に駒を立てられる位のテンションの余裕を残しておいてください。
06
E線(1弦)を巻いていく
E線(1弦)も同じ手順で巻いていきます。弦を巻いていく方向がG線とは左右で逆になります。あくまでも内側から外側に巻いていきます。
07
一度駒を立てる
G線(4弦)E線(1弦)の2本がある程度張れた時点で一度駒を立てましょう。
ここで虎の巻チューニング=調弦のところで説明した『調弦と駒の姿勢とはセットで』を思い出してください。
弦を強く張る前にマーキングした位置に駒を立てて、楽器を横から見て駒の姿勢(傾き具合)を確認します。この後でD線(3弦)とA線(2弦)を張り終わって調弦をする際にもこの駒の姿勢の確認はひんぱんに必要になります。
08
最初にボールエンドを固定した箇所をもう一度確認し、調弦する
全弦を張り終えたら最初にボールエンドを固定した箇所をもう一度確認して、きちんと溝に納まっているかどうか確かめてください。これがちゃんと入っていないと調弦する時にボールエンドが外れたりすることがあります。
駒の姿勢に注意しながら残りの弦も同じ要領で張り、後は調弦をするだけです。
新しい弦(特にナイロン弦)は音程が安定するまでに時間がかかります。調弦は駒の姿勢を確認しながらまめに行うのが良いでしょう。
この様に手順を文字に書き出すととても複雑に思えますが、何度かやっているうちに慣れてくるものです。慌てて作業をして大切な弦や楽器本体を痛めないように、落ち着いて作業をしてみてください。急がば回れ、はやや大げさな言い方ですが、手順は守るようにした方が結局は早く、またきれいに仕上がると思います。
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