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by Phil Janvier / Focus Magazine 2009年 1月 | ||
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Focus Magazineの142号(2006年11月)、143号(2006年12月)そして148号(2007年5月)において、私は我々カメラマンの手に入るエントリーレベルからプロ用までのショットガン・マイクについて、その本質に迫るべくレビューを書きました。AUDIO TECHNICAのAT897、AT835b、RODEのビデオ用マイクNTG-1、NTG-2及びSENNHEISERのK6電源モジュールを取り付けたME66との間での熾烈な争いについてコメントしています。当時のレビューの結論は、どのマイクを手に入れたとしても、求められる仕事を上手くやってのけるだろうということでした。しかしK6を取り付けたSENNHEISERのME66ショットガン・マイクがこれらの中ではベストだというのが、全てのテストを終えての私の見解でした。 私はそれ以来、多くの撮影をこなしてきた為、再びこの話題に立ち返るべき時が来たと考えました。しかしながら今回は、前回と少々状況が異なっています。私は1年前、業界標準であり、小売価格で650ポンド(約10万円)から1,000ポンド(約15万円)の間で取引される屋外放送用ショットガン・マイク、SENNHEISERのMKH416P48を入手したのです。もし2008年のIOVを訪れていないのであれば残念なことです。CalumetのIOVショーにおいて、なんとこのマイクが399ポンドで提供されており、二度とない機会でした。 一般的な使用においてMKH416P48は、SENNHEISERのME66(149ポンド)にK6(179ポンド)を取り付けたものに比べて優れていました。合わせて328ポンド(約5万円)という価格を考えれば、至極当然な結果と言えるでしょう。これを機に、私はショットガン・マイクを集めて再びテストを行う事にしました。 ![]()
まず手始めに、前回の一連のレビューにおいて明らかな勝者だったSENNHEISERのME66/K6を用意しました。さらにSENNHEISER MKH416P48、新製品のRODE NTG-3(小売価格約370ポンド(約5万5千円))、AUDIO TECHNICAのAT897(同おおよそ170~190ポン ド(約2万5千円))、ショートタイプのAT875R(同112~130ポンド(約1万8千円))、そしてステレオ・ショットガンマイクBP4029(同441~550ポンド(約7万5千円))を用意しました。 再三のコメントになりますが、よく探せばもっと安いマイクに出会うことはあります。先のレビューでAT897が全ての面においてSENNHEISERのME66/ K6に劣っていたにも関わらず、再びAUDIO TECHNICAのマイクが レビューの対象になっていることに驚かれた方もいるかもしれません。しかし、今回AT897は再び検証し直すに値する程、完全に手直しされていました。 また、これらのマイクはどれも期待通りの出来で、十分にその目的を達する事ができました。なかでもMKH416P48とNTG-3は、他の製品に比べてスマートなデザインながら、頑強に作られていました。
これらのマイクをテストするにあたって、より実際の現場に近い環境を用意しようという試みのもと、地元の教会を借り、全てのマイクを横一列に並べました。テスト距離は3メートル、6メートル、12メートルとし、サウンド・エンジニアであるジェイ・アーヴィンとミュージシャンのベス・チャンという二人の友人の協力を得て、それぞれのモデルを同距離から一通りテストしました。
全てのモデルが、このインタビュー・テストで良いパフォーマンスを見せてくれました。そしてどのマイクも、女性の声の方がよりはっきり、明瞭に出力されました。全てのマイクはME66/ K6以上のパフォーマンスを発揮し てくれましたが、大きな違いはありませんでした。AUDIO TECHNICAのマイクAT897は、前のモデルから飛躍的に進化したこともあり、良い成績を残しました。また、MKH416P48とNTG-3は他のマイクよりもわずかながら優れていました。
興味深いことに6メートルでのテストでは、女声と男声はバランス良く出力されました。ME66/ K6も良かったのですが、他のマイクに比べると何かしら欠ける物がありまし た。MKH416P48はボトム・エンドがわずかに失われており、低音域が少々抜け落ちていました。一方NTG-3はそれと比較して、かすかですが、より暖かみが感じられました。AT897はこの距離ではMKH416P48とほぼまったく同じように聞こえましたが、信号の強さをそろえるのに、より大きなゲインが必要でした。ショートのAT875Rはわずかに明瞭性に欠け、ME66/K6以外の全てに遅れをとりました。一方、BP4029は高音がややきつく聴こえました。それはこの距離では喜ばしいことなのかもしれませんが、やはり明瞭さがわずかに失われていました。 RODEのNTG-3はこの距離でもわずかに他をリードし、また多くの点でMKH416P48と非常に良く似た反応とパフォーマンスでした。 ![]()
先のテストでは、この距離が最もマイクの性能を明らかにしました。ME66/ K6はひどく雑音が入り、不必要な雑音を拾うようになってしまいました。私は2.5点をつけたかったのですが、ジェイは3点だと主張し、また反響音については2.75点よりも上だと思われたので、3点にとどめました。しかし全てのテストにおいて、全てのマイクの中で最低の成績でした。AT897はより高音域を拾うようになりましたが、それは不快なものではなくとても明るい音質になりました。AT875Rはノイズが増え、BP4029は他のモノラルの競合者と比べると明瞭さに欠けていました。MKH416P48はそのクリアな音質に好印象を受けましたが、やはりNTG-3の方がわずかに優れていました。12メートルにおいてもMKH416P48とNTG-3が他を抑えましたが、後者の方が頭ひとつ抜き出ていました。
このテストは私にとって最も興味深かったもののひとつであり、またBP4029がいかに良いマイクであるかを知らしめてくれました。MKH416P48や、明らかに他をリードしつつあったNTG-3と互角に渡り合っただけではありません。我々はそのステレオ・ピックアップに5点満点中の5点をつけました。注釈にも「素晴らしいステレオ・サウンド」と書きましたが、BP4029には本当に感銘を受けました。再びME66/ K6は最下位とな り、その少し上がAT875Rです。しかし他のマイクはどれも良い結果で、落胆させられることはありませんでした。
全ての評価を吟味した上で点数を出せば明白になることですが、今回の勝者はNTG-3でした。先にも述べましたが、MKH416P48以外のマイクはNTG-3も含め全て新品です。MKH416P48は、ある放送局が処分した物を中古で手に入れたもので、年代もので良く使い込まれていますが、今でも日常使われるショットガン・マイクに求められるクオリティを十分に満たしています。
AUDIO TECHNICAのパッケージは興味深かったです。AT897とAT875Rの2本のマイクは長さ44.5cmのプラスチックの箱で届きました。マイク自体は、ショットガン・マイクとして標準的な長さ(17.5cm)であったためのに、箱の半分の長さしかありませんでした。ただし、AUDIO TECHNICAのマイク・クリップはすべて使用前に締めなおす必要があり、またスタンドのネジのアダプターは、他のメーカーが金属製であるのに対して、プラスチックでできていました。 ![]() NTG-3は良く出来ており、またボディが銀色であることをのぞけば、見た目にも感覚的にもMKH416P48に良く似ています。これは偶然であろうはずもなく、直接MKH416P48と競争させるために開発されたことは明白です。NTG-3はとても頑丈な金属製のチューブに入っています。私が今まで見た中で最も実用的で、かつ長持ちするマイクケースであり、私はこのチューブをとても気に入っています。 NTG-3は、通常ならマイクを使用するのが困難な環境(我々にとっては悪天候と言うことですが)にも耐えうるよう作られています。ついに我々は、雨天でも使用できるショットガン・マイクを手にしたのです。
あらゆるレビューにおいて必要なのは、機器の最大限の性能をテストすることです。今回6本のマイクで行ったテストは、それをなし得たことを願うばかりです。個人的な意見としては、もちろん勝者はいるのですが、実際のところ、これら全てのマイクはカメラマンにとって良い仕事をするだろうということです。マイクの作りはどれも良く、テストにおいて好結果を残したことにとても感動しました。それ故、どのマイクを手に入れても、ほとんどの現場で完成度の高い仕事をやってのけるでしょう。 AUDIO TECHNICA製の品質が飛躍的に向上したことはとても喜ばしいことでした。特にAT897は、何の不安も無くお勧めできる製品です。 しかし、今回のテストの勝者はNTG-3であり、その価格を考えると本当に驚くべき商品です。ところがMKH416P48の既存のユーザーはNTG-3に簡単に乗り換えるとは思われません。それは多くのMacのユーザーが決してWindowsに乗り換えないのと同様です。例えもう一方が優れていると証明されたとしても、彼らはそれを信じようとはしないでしょう。究極的には、私は両方購入されることをお勧めします。私の意見としては、MKH416P48とNTG-3はとにかく1,000ポンド(約15万円)以下の市販のショットガン・マイクの中で、ベストだということです。あまりに好印象だったので、すでにMKH416P48を持っているにもかかわらず、NTG-3も手に入れたいという欲求に強く駆られています。これらのプロ用ショットガン・マイクの傑出した品質は、ユーザーをたちまち虜にするでしょう。 *注:技術関連の情報、極性や仕様についてはメーカーのウェブサイトをご参照ください。 RODE NTG-3へのリンクはこちらからどうぞ。 |
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