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誌上レポート RODE K2

RODEK2

注目のオーストラリアメーカーによる真空管マイク最新作。 驚異的な低価格を実現
EQ Magazine誌 2003年12月 by Mitch Gallagher

ここ数年、コンデンサーマイクはルネッサンスともいうべき時代を迎えました。素晴らしいデザインのマイクが新規開発されただけでなく、数々のビンテージマイクの復刻版が製造されています。新旧ともども、発売されたマイクの価格帯はローエンドから超高級機まで様々です。オーストラリアに本拠を置くRODE社は業界でもトップクラスのマイクメーカーであり、本物の質と真空管を備えた真空管マイクを発売しています。

今回発売されたRODE K2は常識を打ち破る高品質と低価格を実現しています。

概要

RODE社は昔から優れた真空管マイクを発売してきました。私が最初に出会った同社の製品は数年前に発売されたCLASSICシリーズです。それを使って何回もギター、ボーカルなどの音源を録音しましたが、いずれも素晴らしい作品ができました。優れたプレゼンスとダイナミック・レスポンス、豊かな低域、クリアな高域が特徴的です。

今回発売されたK2の音質は60年代に発売されたビンテージマイクを彷彿とさせます。同時にカプセルやダイヤフラムには最新技術を施し、超低ノイズ、音質の安定を実現しました。

K2はハードケースが付属しており、その中に K2本体、電源ユニット、K2と電源ユニットを繋ぐ9ピンケーブル、SM2ショックマウントを全て収納できます。K2はネジでSM2にしっかりと固定する為、落下する心配がありません。SM2はつくりが頑丈で、マイクに傾斜を付けられる様クランプネジを装備。従来のショックマウントでよくあるように、小さなネジを締めながら指を傷める心配がありません。ひとつ文句をつけるとすれば、ボーカル録音の際にマイクを逆さまに設置する場合、十分な傾斜が取れないことです。この問題はネジを取り外し、スタンドアダプター部品をひっくり返せば解決されます。

K2マイク本体はどっしりしていて、ソリッドな感触があります。マイク本体にはスイッチやコントロールは一切ありません。K2は無指向性、単一指向性、双指向性など、指向性を100%可変コントロールすることができます。コントロールは付属の外部電源ユニットで行います。パッド、フィルターは装備していません。最大SPL162dBということもあって、パッドの必要はほとんどありません。ただし状況によってはハイパス・フィルターがあったほうが良い場合もあります。幸運なことに、K2の近接効果はそれほど顕著ではないので、ギターをかき鳴らしても大丈夫です。

音質

K2は複数のビンテージマイクを組み合わせたような音質です。高域は滑らかで伸びがよく、更に豊かで丸みを帯びた中域、ソリッドで厚みのある低域が特徴的です。周波数特性グラフを見れば、その音質のよさが証明されます。5kHzあたりを中心に高中域でピークがあります。また幅広のピークが10kHz付近で現れ、20kHz付近で3dBほど減少。このピークによって高域が開かれ、サウンドに独特の空気感を与えます。

予想通り、K2の音質は極性の設定によって変化しました。無指向性ではレスポンスがフラットで、高中域のピークが消えました。ただし高域のピークがより伸びた感じです。単一指向性、双指向性では前述した周波数の音質そのものです。指向性を3極とその中間のどこにでも設定できるのはK2の素晴らしい機能です。例えば、音源と一緒にルーム・アンビエンスを収録したい場合、通常無指向性を選びます。ただしアンビエンスが強すぎることもあるでしょう。その場合、無指向性と単一指向性の中間にダイヤルをセットすればちょうど良いバランスになります。

実際に使用してみて

このリビューのためにRODEが支給してくれたのは、連番シリアルのK2、1ペアでした。はじめに試したのはボーカル録音です。録音し始めてすぐにK2の高音のよさに驚かされました。ナチュラルで滑らかな音質はNEUMANNの高級真空管マイクU67に似ています。中域も丸みを帯びたしっかりとした音で、鮮明に聴こえます。か細い声、裏声でもざらついたりEQを通した音のようにならず、十分な存在感を与えることが出来ます。同様に低域もフラットで、音がぼやけたりしません。ダイナミック・レスポンスも良好で、K2はボーカルに適したマイクと言えるでしょう。

次に、Marshall 1×12“コンボアンプを使ったリズミカルなギタートラックをK2でモノラル録音してみました。マイクはアンプから30cm、床から30cmの距離に設置しました。どんなにボリュームを上げても音がひずむことはありません。そして高域は滑らかで、音が切れたりしません。中域でアンプから出るパンチのある音を全て再現し、低域は音源以上に存在感ある音を出してくれました。嬉しいばかりです。他のアンプおよびギターも試して見ましたが、同様に素晴らしい録音ができました。音源を正確に再現しながら、中域を豊かに、低域を強化してくれるので、音源以上に良い音が出ます。

次にアコースティックギターに移りました。最初に試したのはマイクを14番目のフレット付近にあわせ、ネックとボディの接合点にマイクカプセルを傾ける方法です。繊細なフィンガーピッキング、かき鳴らすようなストロークプレイ、単一弦のリード・ライン、どのスタイルをとってもK2は豊かでクリアな音質を再現してくれました。

モノラル録音でこれだけ良い音が取れたのだから、ステレオ録音はもっと素晴らしいだろうと仮定し、ナイロン弦のクラシックギターをステレオ録音してみました。2本のK2を単一指向性に設定し、互いに45cmほど距離をとり、ギターボディーから35cm離して設定しました。録音は「ステレオ」には聴こえなかったものの、音に安定感と奥行きが出たようです。やや無指向性に設定してみたところ、ルーム・アンビエンスが若干加わったようです。結論として、自然な低域と十分なプレゼンスが加わり、音質は非常に良かったです。今までで最高のクラシックギター・トラックが出来ました。

パーカッション、ベース、トロンボーンでも同様に素晴らしい成果が得られました。音源に忠実で自然な音が出せ、良質なプレゼンスがあります。また演奏の強弱も正確に表現してくれました。

結論として

既にお分かりのように、私はRODE K2の大ファンです。ここで書いたレビューの殆どを書き上げるまで、K2の販売価格を聞かされていませんでした。テスト録音をしたときは$2000位だろうかと見当をつけていましたが、定価$995と分かったときは本当にびっくりしました。しかも市場価格は約$669というのですから本当に驚きです。

心配なのは、読者の皆さんがこの価格を見て「そんなに音が良い訳ない」と思ってしまわれることです。後生ですから、一度K2の音を実際に聴いてみてください。きっと感激されるはずです。

長所

  • 優れた性能を常識破りの価格で提供。コンデンサーマイクの新しいスタンダードを構築
  • 丸みを帯びた豊かな音質
  • ダイナミックを正確に表現
  • 強すぎない近接効果
  • 無指向性、単一指向性、双指向性を可変コントロール
  • 滑らかな高域

短所

  • ハイ・パス・フィルターが未付属。

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