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誌上レポート RODE NTG-3

RODE サウンドハウス 誌上レポート RODE NTG-3
by Mark Davie / Resolution Magazine 2008年 9月

メタルケースに入った弾丸を思わせる、正に戦闘準備OKのショットガンマイク

近年RODEはNTG-1とNTG-2というショットガンマイクを発表し、保守的とも言える映画・テレビ用機器分野への参入に積極的に乗り出しました。今回、新製品NTG-3が加わり、業界の定番となっていた
SENNHEISER MKH416に真っ向勝負をかけています。シェルケースのようなハウジングに身を包んだNTG-3と共にRODEは戦いが待ち受けるビジネスに打って出ました。
ショットガンマイクの評価をするとき、活気付く映像機器業界の金字塔ともいえる
SENNHEISER MKH416と、どこかで比較される事は避けて通れません。それは不思議なほど良く似ているRODE NTG-3も同じです。

RODE NTG-3

Standard Issue?


NTG-3は前モデルNTG-1やNTG-2よりも若干、業界スタンダードな仕様ながら、応用力に優れた仕上がりとなっています。映画/TV機器業界は、今やスタンダードとなったショットガンマイクが開発されたときよりも、要求は増え、多様性が求められています。今日では、柔軟に使用できて、且つ頑丈である事、そして、どんな事をしてでもそこにあるものを撮る、というメンタリティに重きが置かれています。簡単に言うと、より寛容な、"幅のある"マイクが求められています。

様々な面で、NTG-3はSENNHEISER MKH416の代わりに成りうるマイクです。マイクの重量はほぼ同じで(RODE NTG-3の方が163と2グラムだけ重い)、長さもほぼ同一です。(RODEの方が5mm長い)両機種とも音圧レベルは130dB、周波数特性は40Hz~20kHzとなっています。双方ともアンチグレア処理が施され、RFバイアスを採用しています。それでは、この2機種のどこが違うのか比較していきたいと思います。

あきらかな見た目(NTG-3はシルバー、そしてSENNHEISER MKH416はブラック)以外で、最も違いが出ているのが、前述したRODE NTG-3の「幅」です。近年、テレビのサウンドは以前とは全く異なったものとなり、通常一度しか起こらないアクション、しかも最も近いスタジオから何千マイルも離れたアマゾンのジャングルで起こる一瞬の出来事を撮ることもあります。

RODE NTG-3はゆとりを持った指向性を持ち、ブーム・オペレーター達がプレッシャーのかかる現場でワンテイクを録るのに、より多くの可能性をもたらします。自然なアクションを録るため、そしてワンテイクにかけられる制約の中では、高域をよりワイドに集音する事が求められます。今日の撮影現場において、会話に関してはワイヤレスが使われる事が多くなりましたが、ブーム・オペレーターは相変わらずクリティカルな仕事をしているといえます。

SENNHEISER MKH416は非常にタイトな指向性を持ち、中央から約12度辺りまでの高域を詳細に拾いますが、それ以上になるとすぐに高域がロールオフされます。対称的に、RODE NTG-3は若干広い指向性を特徴とし、中央から約20度以上広がるまでは高域があからさまに落ちることはありません。それはつまり広い音源の中で、より明瞭に子音をピックアップできることを意味し、ナレーションマイクとしても期待出来ます。また音源に対して安定してブームポールを保持できないようなセットに対しても有効です。ただしその代償として、ノイズが多い環境では若干のかぶり音を拾ってしまうことがあります。

RODE NTG-3
BLIND FREDDIE

NTG-3とSENNHEISER MKH416の音響は驚くほど似ています。吹き替えブースで比較してみたところ、この2機種の音質の違いについては殆ど聞き取ることができませんでした。
両機種ともに同じくらいの発声レベルで、ボトムエンドを捉える事が出来ます。結果的にブラインドテストで判った事は、誰も自信をもって2本の中の1本を選ぶことは出来ない、という事だけでした。違いで判ったことは前述した指向性の幅の違いだけでした。実際に2本のマイクを変えてみてもコントロールルームに残された被験者は頭を掻くばかりで、エンジニアの一人はもし事前に知らされていなかったら、一つのマイクだけ聞かされていたと思った程です。
このテストを通してはっきりとわかったことは、音色の違いに関しては両マイクの間にほとんど違いはない、という事です。RODE NTG-3はSENNHEISER 416をターゲットにして開発した結果、見事にその音質のレベルを合わせる事に成功した、という事になります。


WARM STEEL

RODE NTG-3が採用しているRFバイアスは、プレートに固定電圧をかけるDCバイアスコンデンサーマイクとは異なり、比較的低いRF電圧を使用しています。その結果生まれた低インピーダンスカプセルは、結露があってもショートしません。ですから、Warren Millerが80th アニバーサリーのスキーフィルムを製作中、アシスタントにせまる雪崩の音を撮る際、このショットガンマイクがあれば、同じような寒さの中に自分がいる必要がないので、ある程度距離を保って録音する事ができます。言うまでもなく、このような状況にテイク2はありえません。

表面が冷たくなり、その温度が水蒸気より低くなると結露が起こります。季節はちょうど冬。温度が急速に落ちるVictoriaの田舎で、NTG-3が正常に動作するかテストするには絶好の時期です。

2回目の実験の夜、温度計は-2度を示し、ブースの心地よい環境からは程遠い極寒の中でテストは行われました。マイクをあえて結露が起こりやすい環境におくため、屋外でスタンドに取り付け、設置しました。マイクをしまう際、触れることもできないほど冷たくなっていましたが、全く問題なく録音はおこなわれ、カプセルに付着した結露が時折引き起こすスプリアスノイズも発生しませんでした。私の手が寒さで震えの止まらない状態だったので、ハンドリングノイズもテストせずにはいられませんでしたが、やはり結果は良好な物でした。このマイクはどんなブーム・オペレーターよりも有能だと思います。凍えるような寒さの中、このマイクが不具合をおこすよりも大分前に、オペレーターの歯がガチガチなる音によって撮影は中止になることでしょう。

NTG-3は非常に低いセルフノイズと低ハンドリングノイズ設計を誇ります。勿論、サスペンションマウントを使用することは好ましい場合もありますが、ブームの端に装着し、サスペンションマウント無しでも、振動によるノイズを気にせずに録音を行うことができます。また、NTG-3にはポップフィルターが付属し、ウィンドノイズを軽減します。ただし、サスペンションマウント同様、適切なウィンドシールドを使う方が望ましいでしょう。面白い点はライバルであるSENNHEISER 416が中央から90度の位置でわずかに高域が強調されますが、NTG-3ではその様なことが無い為、より横からの干渉に強くなっています。

RODE NTG-3 NTG-3に付属するアルミニウム製シリンダーケースは、今までにあった特殊用途マイクロフォンの保存用アイテムの中でもベストとも言えるものです。マイクの直径よりも1センチ太いだけのこのケースはフィールドレコーディングファンのバッグにもぴったりと納まります。このケースの中に収められていれば、手荒い扱いをしてもマイクの安全は確保されます。セレンゲティ国立公園での撮影中にサイが乗っかっても・・・まぁそんなことが起きたらどんな事をしても助かる道はないですが

TALK IT UP

様々なレコーディングの現場同様、撮影でも用途によってマイクを選ぶ事はよくあります。NTG-3は簡単な会話を取るのにも良いオプションになると思います。1000ドル以下の超低価格ながら音もよく、苦境の際に非常に役立つマイクです。映画、テレビ用のサウンドを収録している方に最適です。
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