"もはや単なるギター用USBインターフェースではない。" |
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GuitarPortのリリースから数年、Line6社は次世代USBギタープロセッサー、Tone
Portを発表しました。現在UX1、UX2の二つのバージョンが発表されているTonePortはLine6のギター、アンプ、キャビネット、そしてエフェクターの各モデルを処理するソフトウェアと連動した、インターフェースです。ファンタム電源付きのXLRマイク入力端子を備え、また、UX2ではS/PDIF出力も搭載しています。
TonePortのシステムデザインはアウトボードのハードウェア・プロセッサーとソフトウェア・プラグインのちょうど中間に位置していると言えます。ギターの信号はハードウェアの入力からUSBを通じてコンピュータに送られ、ソフトウェア"Gear
Box"によって加工されます。その後DTMソフトに送られ、最後にTonePortに戻ってきます。 |
これにより、ホストとなるソフトウェアのバッファレベルに関わらず、GearBoxを通した信号を最小限のレイテンシーでモニターする事を可能にしました。高いレイテンシーを避ける為に、ホストのバッファレベルを低く設定する必要があった今までのプラグインでは成し得なかった、高いパフォーマンスを実現しました。今回はより多くのI/Oオプションを持つUX2に焦点を当てました。
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UX2のフロントパネルには2つのXLRマイク端子、それにファンタム電源のON/OFFボタンが搭載されています。PADスイッチはついていませんが、パッシブ・ピックアップに使用するハイインピーダンスのNORMALと、アクティブ・ピックアップに使用するローインピーダンスのPAD、と2つの1/4"フォーンのインストゥルメント入力を搭載。インターフェースをUSBポートに接続すると、ツインVUメーターが点灯し、GearBoxソフト上での選択によって、Input/
Send/ Monitor/ Outputのレベルを表示します。数字の目盛りは振っておらず、MinとMaxの表示のみになっています。各メーター用にピークを表示するクリッピングLEDがついています。またフロントパネルにはヘッドフォン端子も備えられています。
UX2の背面にはまず、ミキサー、キーボードからのラインレベル信号を入力するアンバランス仕様/1/4"フォーンのライン入力端子が2つ、その隣には標準ノンラッチタイプ、もしくは切り替え式のフットスイッチを接続できる1/4"フォーン端子を2つ搭載。また、外部音源をつないでモニターできるStereo
Monitor In端子は、バランス仕様1/4"フォーンのアナログ出力端子を備えています。S/PDIF出力端子は24-bit、44.1kHzもしくは24-bit,
48kHzに対応しています。Line6は、オーディオ・ドライバが96kHzまでサンプリングできるので、TonePortを96kHZに対応させることも出来ると思いますが、このS/PDIFはオリジナルの44.1kHz、48kHzにとどめられています。88.2kHzもしくは96kHzのオプションがあればもっと良かったかもしれません。
このS/PDIF出力を他のデジタル機器に接続した場合、UX2がクロック・マスターとなります。これはUX2が、他のデジタル機器との同期を取る為のS/PDIFもしくはワードクロック入力を別に持っていないからです。個人的には他のデジタル機器のより正確なクロックを使いたかったので、この点に関しては少しがっかりしました。とは言え、スタンドアローンのレコーダーやDAT、その他機器用に使うにはこのS/PDIF端子は便利なものです。S/PDIF端子からは、アナログ出力に送られる信号と同じ信号が常に出力されます。
ソフトウェア"GearBox"はUX2ハードウェアの、正にコントロールセンターとしての役割を果たしています。TonePortのオーディオ処理は全てこのGearBoxの中で行われます。UX2に入力された信号はまずダイレクトにGearBoxに送られます。その後信号は、そのプログラムによってUX2のオーディオ・ドライバに送られ、アナログにて出力されます。このオーディオ・ドライバは4つのSENDと1つのステレオリターンを持ちます。録音ソフトは同梱されたAbleton
Live 4 Lite (Mic/Win) もしくはその他の録音ソフトを使い、オーディオ入力デバイスとしてGearBoxの4つのレコーディングSENDを選択します。
UX2はToneDirectモニタリングと呼ばれるモニター方法により、GearBoxでの処理後、レコーディングソフトに送られる前のギター信号をモニターする事が出来ます。ダイレクト・モニタリングを採用している機器ほどレイテンシーは低くありませんが、それでもホストとなるソフトウェアを高いバッファレベルに設定することも出来、十分なスペックと言えます。(私のシステムでは、許容範囲内の10msほどでした。)
GearBoxはUX2からの入力を様々な方法で伝達します。2つのマイク、ライン音源を同時に入力することも出来ますし、1つの楽器に1本のマイクの組み合わせ、または楽器、マイク、ライン音源を1つずつ入力することも可能です。ただし2つの楽器を同時に使用することは出来ません。両方のインストゥルメント入力に同時に接続すると、NORMALに接続した側の音のみ聞こえます。
デュアル入力の片側のみを使っている時はデュアル・モノオプションを選択することが出来、2つのシグナルをGearBox上で別々に処理することが出来ます。1つの信号はSEND1-2から、もう1つの信号はSEND3-4から送られます。録音したトラックをホストのソフトウェアからGearBoxへルーティングできるようなソフトウェア・リターンが付いていたらもっと良かったかもしれません。
GearBox上にはTonePortへのモニター信号、録音ソフトウェアへ送る信号、録音信号のパン、UX2へのマスター出力音量を調節するノブがついています。また、録音ソフトに送る信号を18dBブーストできる便利なボタンも搭載しています。録音ソフトへの信号レベルが低すぎるときは、この+18dBボタンを押した状態で録音信号のノブをしぼってやることによって、うまく調整することができました。更に便利なのは、Mute
Line Outボタンで、これを使うとGearBoxからUX2への信号をシャットオフすることができます。
もう1つ便利なのはハム・リダクション・アルゴリズム。操作もシンプルにLearnボタンを押すだけで簡単です。私のセットアップでは元々目立ったハムノイズに悩まされることはありませんでしたが、少しだけ存在していたノイズを解消してくれました。
UX2が唯一のオーディオインターフェースであれば、オーディオ・モニターを直接接続して、UX2からの入力と、オーディオ・ソフトウェアの出力を聞くことが出来ます。もしスピーカーが他のオーディオインターフェースに既に接続されているのであれば、そのインターフェースの入力にUX2の出力を接続し、ダイレクトモニター機能を使うことができます。私の場合はスタジオ・モニターにRME
Fireface 800を繋いでいるので、UX2のS/PDIFアウトからFirefaceのS/PDIFインに接続し、UX2をモニターしました。
Mac OS X Tigerユーザーであれば、そのAudio MIDI セットアップ機能を使い、UX2ともう一台のオーディオインターフェースの複合デバイスを作り出すことができます。そうすることによって、GearBoxからの入力信号をホストのソフトウェアに録音し、他のインターフェースのソフトウェアを通してモニターする事ができます。私はApple
Logic Pro 7.1の複合デバイスをテストしました。GearBoxを通してギターを録音し、Fireface800のアナログ出力を通した信号をモニターしましたが、見事にうまくいきました。
GearBoxで、2つのフットスイッチ入力の設定を行うことができます。Gearboxとホストのソフトウェアの両方を2つのフットスイッチでコントロールしたり、1つのフットスイッチを両方のソフトにアサインすることも出来ます。GearBoxをコントロールするのにフットスイッチを使用する例として、タップテンポ機能へのアサイン、個々のエフェクトのON/OFF切り替え、チューナーをOnにする、プリセットの選択、録音ソフトに送られる信号の全てもしくは一部をミュートする等が上げられます。ホストとなるソフトウェアをコントロールする場合、各フットスイッチは様々なMIDIのCCメッセージを送るのに使用できます。また、Mackie
Controlや他MIDI Machine Control(MMC)コマンドを転送する用途で使うことも出来ます。この方法で使用する場合、GearBoxでのフットスイッチの設定方法によって、TonePortがホスト・ソフトウェア上のMIDI、コントロール・サーフィスとして表示されます。ここでTonePortをコントローラー、MIDI
Destinationとして選択すれば、ホスト・ソフトウェア上でフットスイッチを使用することが出来ます。
現在、UX2は出荷時にハードコピーのマニュアルを同梱していませんが、GearBoxのヘルプメニュー、及びLine6のWEB上にはたくさんの情報が掲載されています。
GearBoxにはクラシックアンプ、スピーカー、ストンプボックス、からマイクプリアンプまで、様々なモデルを内蔵しています。その多くはPodXTからのモデルを継承したものになっています。チェーンの中で自由にエフェクトを配置することは出来ませんが、多くのエフェクトはプリ・ポストスイッチを備えており、スピーカー・キャビネットの後ろにも、前にもかけることが出来ます。また、PodXT内蔵のその他サウンド、クラッシック、メタル、その他エフェクトのモデルパックを含む様々なエクストラ・モデルパックをLine6のサイトから購入することが出来ます。
Line6のエフェクト・モデルは、それなりなものから素晴らしいものまで様々です。今回内蔵されたエフェクト群も例外ではありません。最も気に入ったモデルはクラッシックアンプの中のPlexiとBrit
J-800です。Fenderのモデルは、私が実際に所有しているアンプと比べるとやや切れ味に欠け、それほど魅力を感じませんでしたが、Chemical
X、Spinal Puppetと言った、Line6オリジナルのモデルはとても気に入りました。
マイク入力からの信号には、GearBoxのマイク・プリモデルを使用することが出来ます。音に心地よい温かみとカラーを与えてくれますが、流石にNeveやAvalonのそれに匹敵するほどの効果は期待できません。
UX2には様々な素晴らしい点があります。まず、コストパフォーマンスに優れ、多くの入出力オプションを供給してくれます。ソフトウェアGearBoxはとても使いやすく、内蔵されたエフェクト・モデルは素晴らしいサウンドを与えてくれますし、拡張性もあります。S/PDIF入力やインストゥルメント入力用のトリムノブなどが搭載されていればもっと良かったかもしれませんが、この価格帯では無理な注文かもしれません。もし、楽器、ボーカルの音声処理が出来るUSBオーディオインターフェースを探しているのであれば、UX2はその最終候補に上がるべきアイテムでしょう。
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