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誌上レポート AUDIX SCX-25A

AUDIX SCX25
by By Mark Parsons / Modern Drummer誌 2008年 11月

AUDIX SCX-25A コンデンサーマイクロフォン

いわゆる「ドラム・マイク」について思い浮かべた時、たいてい、ドラムセットの各用途に合わせてデザインされた1~2本のマイクを想像すると思います。それはおそらく、キックドラムの内側に設置するラージダイアフラムのダイナミックマイク、もしくはタムのマイキングに使用する小型のクリップタイプのマイクでしょう。

オーバーヘッドのマイクセッティングに関しては話が変わり、シンバルの音を拾う時は、通常速いトランジエントレスポンスが得られる小型コンデンサーマイクが適しています。ウォームなビンテージサウンドを録る事ができる、という事でリボンマイクも再び注目を集めています。ドラムセット全体のマイキングにおいて一般的に好まれるのは、ラージダイアフラム・コンデンサーマイクです。しかし、多くの優れたラージ・ダイアフラム・コンデンサーマイクは、ボーカル用に設計されているため、マイク自体のサウンドに色づけがされている事がよくあり、マイクの特性が求めているサウンドにフィットした場合には上手くいくと思いますが、普遍的というよりは使い方を限定しているとも言えます。

AUDIXは、ラージダイアフラム・スタジオコンデンサーマイクSCX-25Aに対して、異なるアプローチを取りました。SCX-25Aは多種多様なアコースティック楽器で優れたレコーディングを行える様にデザインされています。ボディはロリポップのような形をしており、ペンシルタイプのコンデンサーマイクを思わせる小型なボディトップにカプセルを取り付けています。このマイクのカプセルは周りのブラスリングによって吊るされた状態になっており、ショックマウントを別に用意する必要がありません。
SCX-25Aは、ハイパスフィルターやパッドなどの機能は無く、単一指向性のみのモデルです。それによりマイクの本質的なパフォーマンスを損なうことなく、コストダウンに一役買っています。

Initial Impression?


AUDIX SCX-25A まずSCX-25Aとはどのようなマイクか大まかなイメージをつかむ為、ドラムセットの上部にセットしたSCX-25Aと、ドイツやオーストリア製のマイク(ともにソリッドステートのコンデンサーマイクとして著名なものです)、真空管を使用したモデル、SCX-25Aと同様のロリポップのような形をしたものまで、様々な他のラージダイアフラムマイクを比較してみました。

この中にはSCX-25Aより数百ドル高いものから2倍近い価格のものまでありました。 聞き比べてみると、SCX-25Aはそれらの高価なマイクと比べても引けを取らない事が判りました。

一つ言っておきたいのは、どれひとつとして音質が悪いマイクは無く、オーバーヘッドマイクとしては十分なマイクだったという事です。雑な言い方をしてしまえば、どれも同じ土俵上での勝負だったと言えます。しかし、よく聞いてみると各モデルにはわずかながら違いがありました。そして各比較においてSCX-25Aに分があるように思えました。

SCX-25Aをベースとしてみた場合、あるマイクではトップに荒い感じを受けました。他のマイクは、ミッドレンジが弱く幾分暗い感じがしました。もう一方のマイクでは、トップとボトム両方において、すこし誇張されすぎたような音質でした。

私が感じたSCX-25Aの第一印象はオープンでクリアー、そして過剰な色づけがされていないナチュラルなHI-FIサウンドというものでした。


Over the Head

大口径のコンデンサーマイクは、通常パーカッションのオーバーヘッドとして使われる事が多いので、私はSCX-25Aを様々なオーバーヘッド・セッティングで試してみました。まず初めに、コインシデント(XY方式)と呼ばれる録音テクニックで試してみました。この方法は、よりリアルなサウンドが欲しい時に使われる手法です。この手法でありがちなように、そのステレオイメージが不自然に広いということはありませんでした。(これは2つのカプセルが出来る限り近づくようにセッティングする為です)

 次に2本のマイクを5フィート離し、ドラムセットの4フィート程上側でスペースドペア方式(もしくはAB式)で、真っ直ぐ下を向く様にセッティングした結果、より広いステレオ感を得ることが出来ました。このセッティングでは、中域が抜け落ちたような音になる事がありますが、SCX-25Aではその様な事はありませんでした。これは、適切に広げられたカーディオイドのピックアップパターンに因る所が多いと思います。 A-B式で試した際は、ドラムセットに設置しているにも関わらず、か細いサウンドになったり、音がぼやけたりすることは無く、ウォームでリッチな、素晴らしいタムサウンドを得る事が出来ました。

 また、SCX-25AはEQのノリがとても良好です。例えばハイをブーストしてシンバルがより前に出るように、かつ全体的なサウンドが痛くならないようにする、という事も容易に行う事が出来ます。やりすぎと思われるかもしれませんが、18kHzを試しに15dBブーストしてみました。それでも十分音楽的なサウンドを録る事が出来ました。これはすごいです!

 次に試してみたのは、二等辺三角形になるようにセッティングする懐かしの"Glynn Johns"テクニックです。このマイクセッティングは60年代から70年代初期のクラシックレコーディングでよく見られる手法で、一本のマイクをスネアの数フィート上方から下向きにセッティング、もう一本のマイクは、スネアから同じ距離でサイドに離した位置、通常フロアタムの上方後ろ側からスネアを狙ってセッティングします。三本目のマイクはキックドラムの前にセッティングします。SCX-25Aのペアと、キック用にAUDIX D6を使用してこの方法を試してみた所、クローズドマイクを追加せずにとても生々しいドラムサウンドを録る事が出来ました。

リアルなシンバルのサウンドに加えて、離れた位置にも関わらず素晴らしいタムのトーン、スネアはファットでいながら歯切れの良いサウンドです。Glynn Johnsテクニックはコンプを多用していたようなので、オーバーヘッドにコンプをかけてみたところビッグでファットなアンビエントサウンド(状況次第では命取りになるかもしれませんが)を得る事が出来ました(ジョン・ボーナムを想像してみてください)。


Other Applications

SCX-25Aが、オーバーヘッドとして優れたマイクであることは十分判りました。しかし、それだけで評価を下してしまうのは勿体無い事です。このマイクを使って他にどんな事ができるでしょうか?初心者はルームマイクとして使用すると思いますが、それはオーバーヘッドでセッティングすれば簡単なことです。

ではクローズドマイクとしてはどうでしょうか?SCX25-Aを使えば、ドラムスティックによってダメージを受ける程近づけなくても、素晴らしいクローズドマイクサウンドが撮れることがすぐに判りました。12インチタムの12インチ上側にセッティングすると、通常のクローズドマイキングの距離(2~4インチ)にセッティングした、ハイクオリティーなマイクと同じようなサウンドを得る事が出来ました。そのトーンはビッグでファット、且つウォームなもので、スタジオクオリティーのコンデンサーマイクに期待する全てのアーティキュレーション(音の強弱、メリハリ)が備わっています。

 同様の結果をスネアでも得る事ができました。8インチ程上側にセッティングすると、まるでその場にいるかのようなマイキングを行う事が出来ます。マイクをドラムに近づけるにつれ、そのサウンドは良い意味で太くなっていきましたが、決して過度のSPLにより歪んでしまうことはありませんでした。

 ハイハットもつやのある、キラキラしたサウンドながら決して耳が痛くなるよう事はありませんでした。 また、コンガのマイキングで、二つのコンガの中央、両ヘッドからおよそ8インチ離れた位置にSCX-25Aを1本セッティングすると素晴らしいサウンドが得られる事も発見しました。タムに使用した時と同様のビッグでウォームな存在感のある音です。


The Lollipop Wrap-Up

 もしあなたがレコーディングを続けていけば、いずれ決めのコンデンサーマイク、それもスタジオクオリティーのものが1本欲しくなると思います。確かに、それらクールなヴィンテージテイストを持つ大口径コンデンサーマイクは、必要に応じてそれぞれのキャラクターを加えてくれる事でしょう。しかし、どんなアコースティック楽器と組み合わせても、普遍的に素晴らしいサウンドが得られるマイク、と言われると品質・価格両面でSCX-25Aに勝るマイクを探し出すのは難しいと思います。

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