ウッドシェルの暖かさと全体のバランスの良さ
レコーディングを終えてみてYAMAHA LIVE CUSTOMシリーズの生音の印象はいかがでしたか?
大槻まず、スネアを叩いた時はウッドシェルの暖かさもあり、アタックもかなり出ているので華やかなサウンドの印象がありました。フロアを単体で叩くと、若干鳴りすぎる印象があったのですが、セット全体で叩いた時には全く気にならず、むしろ心地良く感じました。アクセントをつけた時にも素直に反応してくれますね。昔使ったことのあるOAK CUSTOMから音の太さを感じていたのですが、LIVE CUSTOMになって更に幅広い層に使えるようになったと思います。力む必要がなく、自然に鳴らせるドラムセットですね。普段はスネアにスチールの深胴を使っているのですが、LIVE CUSTOMのスネアはフープによるものなのか、倍音が適度に鳴って程よい心地良さでした。それと、5.5インチでもしっかりとした太い音が出ているので、物足りなさは一切感じませんでしたね。
チューニングに関してはどうでしたか?
大槻チューニングのレンジの広さには驚かされました。先ほども言いましたが、5.5インチのスネアでも物足りなさを感じなかったので、ハイピッチからローピッチまで対応できると思います。これ一台で様々なスタイルに、レコーディングからライブまで対応できる、オールマイティーさを感じました。
外観やハードウェアの印象はいかがですか?
大槻スタジオに入った瞬間「木目がとても綺麗!」というのが第一印象です。今回新しく採用されたストレイナーがとてもスムーズなので、ストレイナーのON/OFF、スナッピーの調整が片手でも問題なくできました。タムも浅胴でセッティングしやすく、鳴りすぎないのでレコーディングにも最適ですね。
エンジニア目線で、LIVE CUSTOMの印象はいかがですか?
小坂全体的なバランスもさることながら、単体の音もしっかりしているので、とても録りやすい印象を持ちました。
EQ無しでも十分に使えるクリアなサウンド
ダイナミックマイク AUDIX Dシリーズを通した時の印象はいかがですか?
小坂今回はドラム、マイクの素を集音するという事でコンプ、EQ等を一切使用せずに録りました。基本的なマイキングしただけで自然な鳴りが得られたのでドラム用マイクとしてしっかりチューニングされているなと感じました。実際にレコーディングした後も、気になる部分を少し補正するだけで十分なニュアンスが得られたので、とても好印象でした。
マイキングはいかがでした?
小坂Dシリーズは比較的ボディが小さいので、見た目も邪魔にならず、ライブでのセッティングもしやすいのではないでしょうか。
ドラムは生音とマイクを通した時の音が良くも悪くも変わってくると思いますが、ドラマーとしてはいかがでしたか?
大槻今回初めてAUDIXのマイクを使ったのですが、これまでレコーディングで使ってきたマイクとの比較して、EQなしでもサウンドに迫力があって、なおかつクリアな印象を持ちました。
小坂さんはAUDIXマイクを何度か使ったことがあるとお聞きしましたが、どんな音作りをしたい時に向いていると思いますか?
小坂スネアにセットしたAUDIX i5は、特に上が伸びていると感じました。明るいサウンドなので、ポップスやロックで使うと良いと思います。明るく、乾いたアメリカンなサウンドを目指しているときに向いていると思います。
キック用のD6はどうでしょう?
小坂タイトで余分な帯域がカットされている印象でした。とりあえずマイクを立てるだけでもキックのふくよかな鳴りとアタック感を感じられました。
越本さんはベースを弾いている際に「ドラムの音はこうであってほしい」といった要望はありますか?
越本とにかくアタックを意識して演奏しています。ベースがドラムのサステインになるので、アタックがしっかり出ていると気持ちよく演奏できますね。
その辺を踏まえ、YAMAHA LIVE CUSTOMやAUDIXのマイクはどうですか?
越本まさしくそのアタックがしっかり出ていて、気持ちよく演奏できました。ベーシスト好みのサウンドとも言えるかもしれません。
セッション時には、コンプやEQ等をかけた音も録音していましたが、エフェクトのかかり具合はいかがでしたか?
小坂きちんと集音されているので処理はしやすかったです。ドラムの出音がしっかりしているからというのはもちろんなのですが、Dシリーズは基礎がしっかり押さえられているマイクなので、幅を広げやすいというか、ジャンルにこだわらず色々な現場で活躍できるマイクだと感じました。
大槻レコーディングでの好条件が揃っているってことですね。

AUDIXが誇る楽器用マイクの決定版Dシリーズは、ドラム専用に開発され、著名なドラマー、プロデューサーからも絶大なる信頼を寄せられているダイナミックマイクです。ドラムやパーカッション、ギターと、それぞれの用途に合わせて5機種をラインナップしています。
パッシブとは思えないほどのパワー感がありますね
YAMAHA BB2024Xの音を出したときの印象はどうでしたか?
越本本当にパッシブ? と思ってしまうほど、ピックアップにパワー感がありました。上から下までしっかり伸びているという印象です。普段はアクティブを使っているので、パッシブに持ち替えたときに、どうしても物足りなさを感じるんですが、今回は全く感じませんでした。ピックアップ・セレクターも付いているので、ジャンルを選ばず使えるベースですね。
小坂ピックアップをミックスにしたときのバランスが本当に良いですね。
越本リア・ピックアップだけのサウンドは、ファンキーな感じなので、自分のバンドではあまり使う機会がないのですが、CDでよく聞く“あの音”がするという感じでした。
ベースの弾き心地はいかがですか?
越本ネックが手に馴染みやすくて、とても弾きやすい印象を持ちました。弦の通し方が通常のブリッジ通しと、裏通しの両方が選べるので、好みに合わせられるのは大きいと思います。プレイ・スタイルを選ばずに使えますし、気分によって変えられるのはすごく良いと思いました。
A.R.E(Acoustic Resonance Enhancement)と呼ばれる、長年弾きこんだビンテージのようなサウンドになる木材改質技術が採用されていますが、実際に弾いてみていかがでしたか?
越本ボディがとにかく良く鳴ってくれるので、繊細なピッキングでもしっかりと受け止めてくれる感覚がありました。それと、新しいベースを弾いたときにありがちな、音が暴れる感じは特に感じませんでした。
2個のノブ操作だけで幅広い音作りが可能
プリアンプ/D.I.のSummit Audio TD100はいかがでしたか?
小坂今日はラインとプリアンプ・アウトの両方から音を抜きましたが、ラインはラインらしい素直な音で、プリアンプは真空管を通っているのもあると思いますが、中域に特徴がありました。ブリブリさせた音作りにすごく向いていて、特にポップス、ロック系には最適だと思います。ローディングつまみは、本来は楽器に合わせてインピーダンスのマッチングを取るためのものなのでしょうが、つまみの位置によって音質が変わるので、サウンドのバリエーションとして使っているベーシストも多いのではないでしょうか。シンプルなコントロールで、幅広い音作りもできるところが良いですね。アウトプットはプリアンプ、ラインの他に、ヘッドホンアウトも付いているのですが、そのようなD.I.はなかなか無いので、ベーシストが家で練習したり、ライブやスタジオなど持ち歩いて使うのにも向いていると思います。
ドラムを叩いているとき、ベースの音はこうであってほしいということはありますか?
大槻越本が言ったように、ドラムのアタックに対して、ベースが気持ちよくサステインを付けてくれるという点で、バスドラムの音とベースが絡むときに、破綻せずに気持ちよく鳴ってくれると嬉しいですね。
ドラマーから見て、BB2024Xはどうでしたか?
大槻パッシブの物足りなさは感じないし、音の立ち上がりが良いですね。
越本弾いていても、右手のピッキングに対してレスポンスが良いと思います。
大槻細かいフレーズを弾いたときでも、音がぼやけずにしっかり聞こえていたので、ドラムも演奏しやすかったです。
越本あと、音が伸びすぎないというか、止まって欲しいときに、きちんと止まってくれます。ミュートしたときに音が残らない。
小坂上から下まですごくバランスが良いと思います。
越本BB2024XもTD100も、幅広くオールマイティーに使えると思います。普段は癖の無いD.I.を好んで使っているのですが、TD100はローディングのつまみが面白くて、ゲインでもキャラクターが変わってくるので、幅広い音作りができるので好印象です。
小坂ラインの音は癖が無いので、D.I.として必要な物は備えた上に音作りも出来るという、プラスアルファが付いていてお得感がありますね。
ALL OFFプロフィール
2008年<COUNTDOWN JAPAN 08/09>に出場し注目度が急上昇、エモ、ロック、メタルの要素を詰め込んだサウンドと、アグレッシブなライブパフォーマンスが若い世代に支持されている。2013年6月にミニAL『Follow Your Heart』をリリースし、真骨頂であるメロディックなロック・チューンを中心に、ダンスからバラードまで充実した楽曲を収録。渋谷WWWで行われた同アルバムのツアーファイナルでは、初のワンマンライブを開催しソールドアウトとなった。2013年12月に最新EP『Soundtrack For Your Lonely View』をリリース。
2013年12月にリリースされた最新EP『Soundtrack For Your Lonely View』。ALL OFFの作品はiTunes Storeでも購入できる。
小坂康太郎プロフィール
音響技術専門学校卒業後、マルニスタジオにてキャリアをスタート。Westside Studioを経て、現在はLAB recordersのチーフエンジニアを務める。
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ドラムセットはYAMAHA LIVE CUSTOMを使用し、バスドラム 22x18"、タム 12x8”、フロアタム 16x15”、スネア 14x5.5"、シンバルにはZILDJIAN/A ZILDJIANシリーズをセッティング。マイクは、バスドラムに AUDIX D-6、タム にD-2、フロアタムに D-4、スネアに i-5、オーバーヘッドにADX51をペアで使用した。
ドラムのマイキングの様子。オーバーヘッドは床から2m程の高さに、ハイハットとクラッシュ、ライドとクラッシュの中間を狙うようにセッティングされた。プロテクションラケット製のドラムマットを敷いている。
Summit Audio TD100のアウトプット・ゲインはDRIVEのランプが付かない程度の位置で固定し、インピーダンスのマッチングをするLOADINGのつまみは9時と3時の方向の2パターンを録音。
ピックアップ・セレクターの位置はフロント/リアのミックスを使用。エンジニアの小坂氏もバランスの良さを絶賛していた。
レコーディング時のモニターには、YAMAHAヘッドホンHPH-MT220を使用。
レコーディングは西麻布にあるミキサーズラボ所有のスタジオ「LAB recorders」のA STUDIOで行われた。SSL SL4064GとProTools HD3 Accel、ラージモニターにGENELEC 1035Bを導入している。
メインフロアは60㎡、天井高3.9mと広々とした空間を確保し、バンドの一発録りなど、様々なセッションに対応。グランドピアノのレコーディングも可能な4つのブースを備えている。
左からALL OFFのドラム大槻氏、ベース越本氏、エンジニアの小坂氏。ALL OFFと小坂氏は古くから面識があり、同年代ということでレコーディングもスムーズに進んだ。