免許不要で使用できるB帯ワイヤレスの中で、プロフェッショナル向けのシリーズがevolution wireless G4シリーズです。この記事ではevolution wireless G4(B帯モデル)の特徴と、選び方について解説していきます。
シリーズの位置づけ、お勧めセットを紹介したのちに、送受信機の概要説明を行っています。evolution wireless G4シリーズの知識を徐々に深めていただくことで、モデル選びに必要な知識と情報を取得できるようになっています。
evolution wireless G4はプロ向けラインナップであるため、説明もやや難しいものになっています。ワイヤレス・システムや音響機器に詳しくないという方は、以下のページで解説しているXSW 1シリーズ/XSW 2シリーズがお勧めです。
Sennheiserのワイヤレス・システムは、大きく分けて以下の8シリーズがあります。適したモデルを選ぶには、ラインナップの概要をご理解頂く必要があります。以下の図と表をご覧ください。
シリーズ名 | 周波数帯 | 伝送方式 | 受信機 | ターゲット |
---|---|---|---|---|
Digital 9000 | A帯(470 - 714MHz) | デジタル(HD) デジタル(LR) |
EM 9046 | PA/SRプロ向け(大規模) |
Digital 6000 | A帯(470 - 714MHz) | デジタル(LR) | EM 6000 | PA/SRプロ向け(大規模) |
Evolution Wireless Digital(EW-D) | A帯(470 - 694MHz) | デジタル(SePAC) | EW-DX EM EM-D EM |
PA/SRプロ向け(小〜中規模) |
evolution wireless G4(ew G4) | A帯(558 - 698MHz) | アナログ(HDX) | EM 300-500 G4-GW EM 300-500 |
PA/SRプロ向け(小〜中規模) 映像制作向け |
B帯(806 - 810MHz) | アナログ(HDX) | EM 300-500 G4-JB EM 100 G4-JB |
PA/SRプロ向け(小〜中規模) 映像制作向け |
|
XS Wireless 2(XSW 2) | B帯(806 - 810MHz) | アナログ | EM XSW 1-JB EM XSW 1 DUAL-JB |
PA/SRアマチュア向け(音楽制作) |
AVX | 1.9GHz帯 | デジタル | EKP AVX | 映像制作向け |
XS Wireless Digital(XSW-D) | 2.4GHz帯 | デジタル | RX 35 RX XLR |
YouTuber向け アマチュア向け(音楽制作) |
evolution wireless G4シリーズは、発売されているワイヤレス・システムの中で、唯一A帯/B帯に跨がるシリーズで、免許不要で使用できるB帯のハイエンドモデルです。B帯で最も高性能なモデルを選定したい場合は、evolution wireless G4シリーズから選びましょう。
evolution wireless G4シリーズのうちモデル名の末尾に「-JB」が付与されているモデルはB帯用のモデルです。「-GW」のモデルはA帯向けモデルとなります。
本記事でシリーズに含まれる多様な送受信機の特徴を紹介していますが、とにかくスピーディにプロ向けB帯ワイヤレス・システムを導入したい方のために、セット製品が用意されていますので特にお勧めの3セットを紹介します。
セットをご確認のうえ、必要に応じて記事後半の内容を参考に送受信機を好みで組み合わせると良いでしょう。
「ew 500 G4-KK205-JB」はNeumann KMS 105のマイクカプセルを備えたハンドヘルド・ワイヤレス・システムです。
受信機は高音質かつLANケーブルでのネットワークコントロールに対応したEM 300-500 G4-JBがセットされています。
マイクカプセル | KK 205 |
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送信機 | SKM 500 G4-JB |
受信機 | EM 300-500 G4-JB |
「ew 300 G4-865-S-JB」は、定評あるエレクトレットコンデンサーマイクe 865のカプセルを備えたモデル。送信機はSKM 300 G4-S-JBがセレクトされており、手元ミュートが可能。話者が音響関係者でなくてもミュート操作できるため、プレゼンテーションなどの用途に最適です。
受信機は高音質かつLANケーブルでのネットワークコントロールに対応したEM 300-500 G4-JBがセットされています。
マイクカプセル | MME 865 |
---|---|
送信機 | SKM 300 G4-S-JB |
受信機 | EM 300-500 G4-JB |
「ew 100 G4-CI1-JB」はギターやベースなどの楽器向けワイヤレス・システムです。ボディパック受信機には、楽器接続用の専用ケーブルが付属しています。受信機はリーズナブルでありながらRJ-10ケーブルでのデータリンクに対応したEM 100 G4-JBをセットしています。
送信機 | SK 100 G4-JB + フォン-3.5mm変換ケーブルCI 1-N |
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受信機 | EM 100 G4-JB |
「ew 512P G4-JB」は、MKE 2ラベリアマイク(ピンマイク)とボディパック送信機、コンパクトなポータブル受信機EK 500 G4-JBがセットになった、カメラ接続に最適なセットです。3.5mmプラグでの出力のほか、XLR出力用の変換ケーブルも付属しています。
マイクカプセル | MKE 2ラベリアマイク |
---|---|
送信機 | SK 500 G4-JB |
受信機 | EK 500 G4-JB |
同じコンセプトでリーズナブルな「ew 112P G4-JB」セットもラインナップしています。
マイクカプセル | ME 2-Ⅱラベリアマイク |
---|---|
送信機 | SK 100 G4-JB |
受信機 | EK 100 G4-JB |
モデル名の構造を理解するとモデルが選びやすくなります。
製品種別 | シリーズ名 | 世代 | 特徴的な機能 | 周波数帯 |
---|---|---|---|---|
EM(受信機) | 300-500 | G4 (Generation4) |
JB (Japan B帯) |
|
SKM(ハンドヘルド送信機) | 300 | G4 (Generation4) |
S(スイッチ) | JB (Japan B帯) |
SK(ボディパック送信機) | 300 | G4 (Generation4) |
RC(リモートコントロール) | JB (Japan B帯) |
SK(ボディパック送信機) | 100 | G4 (Generation4) |
JB (Japan B帯) |
B帯用evolution wireless G4シリーズには、EM 300-500 G4-JB / EM 100 G4-JBの2種類の受信機があります。(ポータブル受信機を除く)
以下の表では、比較対象として下位シリーズのXSW 2シリーズ受信機「EM XSW 2-JB」をリストアップしています。
受信機 | EM 300–500 G4-JB | EM 100 G4-JB | EM XSW 2-JB |
---|---|---|---|
ネットワークポート | RJ-45 | RJ-10 | なし |
最大同時使用数 | 8台 | 8台 | 7台 |
コンパンダー | Sennheiser HDX | Sennheiser HDX | 非公開 |
変調方式 | ワイドバンドFM | ワイドバンドFM | ワイドバンドFM |
受信方式 | トゥルーダイバシティ | トゥルーダイバシティ | トゥルーダイバシティ |
S/N比 | 115dBA以上 | 110dBA以上 | 103dBA以上 |
最大出力レベル (XLR出力) |
+18dBu | +18dBu | +12dBu |
THD+N | 0.9%以下 | 0.9%以下 | 0.9%以下 |
イコライザー | あり | あり | なし |
旧機種との互換性 | あり | あり | なし |
evolution wireless G4シリーズの大きな特徴として、ネットワークポートとネットワーク機能の搭載が挙げられます。下位機種では不可能な集中管理によって、効率的な運用を可能にしています。
特にEM 300-500 G4-JB受信機ではRJ-45 Ethernet端子が装備され、LANケーブルを介して複数の受信機とWindowsパソコンを接続し、ネットワークを構築できます。フリーの「Sennheiser Control Cockpitソフトウェア」を用いることで、パソコンからの集中管理を可能にします。
EM 100 G4-JB受信機の場合はRJ-10端子を介したデータリンク機能を装備しており、同じ受信機同士を接続することで周波数の一括設定が可能です。
Sennheiser現行アナログワイヤレス・システムの中で最高峰の音質もevolution wireless G4シリーズの特徴です。
アナログワイヤレスでは高音質化のためにコンパンダーシステムが重要となります。evolution wireless G4シリーズでは、惜しくも生産完了となったプロフェッショナル向け2000シリーズで採用されていた「Sennheiser HDXコンパンダーシステム」を採用しています。その他オーディオパフォーマンスも高く、S/N比は115dBA以上を誇ります。
モデル名に冠される「G4」はGeneratoion 4、つまり第4世代を意味します。旧モデルとして第1〜第3世代が存在しますが、これらのモデルと完全互換します。旧機種の送信機はそのままEM 300-500 G4-JB/EM 100 G4-JB受信機で使用することができますので、必要に応じ受信機・送信機を個別に更新していくことが可能です。
※周波数帯が異なる場合は使用できませんのでご注意ください。
様々な現場に対応し、高い信頼性を確保するためのアンテナオプションも豊富にラインナップされています。 無指向性・指向性アンテナ、スプリッター・コンバイナー等のアンテナオプションを活用し、現場規模や要望にあわせたシステムを組むことができます。
モデル名 | 製品種別 |
---|---|
A 1031-U | パッシブアンテナ(無指向性) |
ADP UHF | パッシブアンテナ(指向性) |
A 3700 | アクティブアンテナ(無指向性) |
AD 3700 | アクティブアンテナ(指向性) |
AB 4-DW | アンテナブースター |
EW-D-ASA | アンテナスプリッター/コンバイナー(1:4x2) |
ASP 212 | アンテナスプリッター/コンバイナー(2:1x2) |
AC 41 | 4:1 アンテナコンバイナー |
GA 3 | ラックマウントキット |
AM 2 | ラックマウント用アンテナマウントケーブル |
PA/SRや会議・プレゼンテーション用途に適したハーフラック受信機のほか、コンパクトなポータブル受信機(ボディパック受信機)もラインナップしています。CA 2カメラアダプターを同梱するため、カメラのシューマウントに載せて使用することができます。
ハーフラック受信機のようなネットワーク機能はありませんので、屋外、かつ少ない台数での使用に適しています。
受信機 | EK 500 G4-JB | EK 100 G4-JB |
---|---|---|
ネットワークポート | 無し | 無し |
最大同時使用数 | 8台 | 8台 |
コンパンダー | Sennheiser HDX | Sennheiser HDX |
変調方式 | ワイドバンドFM | ワイドバンドFM |
受信方式 | アダプティブ ダイバシティ |
アダプティブ ダイバシティ |
S/N比 | 110dBA以上 | 110dBA以上 |
最大出力レベル(3.5mm出力) | +17dBu、バランス出力 | +12dBu、アンバランス出力 |
THD+N | 0.9%以下 | 0.9%以下 |
下位グレードのワイヤレス・システムとの決定的な違いのひとつが、ハンドヘルド送信機のマイクカプセルが交換可能であることです。用途や好みにあわせて最大10種類のカプセルから選択可能。なんとNeumannのマイクカプセルも選択可能です。
※MM 435/445, KK 204/205カプセルはSKM 300/500 G4のみの対応となります。
カプセル名 | 変換方式 | 指向性 | ベースマイク |
---|---|---|---|
MMD 935-1 | ダイナミック | カーディオイド | Sennheiser e 935 |
MMD 945-1 | ダイナミック | スーパーカーディオイド | Sennheiser e 945 |
MMK 965-1 | コンデンサー | スーパーカーディオイド | Sennheiser e 965 |
MMD 835-1 | ダイナミック | カーディオイド | Sennheiser e 835 |
MMD 845-1 | ダイナミック | スーパーカーディオイド | Sennheiser e 845 |
MME 865-1 | エレクトレットコンデンサー | スーパーカーディオイド | Sennheiser e 865 |
MM 435 | ダイナミック | カーディオイド | Sennheiser MD 435 |
MM 445 | ダイナミック | ハイリジェクションスーパーカーディオイド | Sennheiser MD 445 |
KK 204 | コンデンサー | カーディオイド | Neumann KMS 104 |
KK 205 | コンデンサー | スーパーカーディオイド | Neumann KMS 105 |
ハンドヘルド送信機は手元スイッチの有無で2種類あり、受信機に対応したモデルを使用します。受信機はEM 300-500 G4-JB / EM 100 G4-JBの機種であるため、合計4種類の送信機があります。
どのハンドヘルド送信機も乾電池または専用充電池で約8時間の駆動が可能です。
※海外モデルはSKM 500の空中線出力が最大50mWとなりますが、日本国内では10mWに規制されており、30mW/50mWは選択できません。
送信機 | SKM 500 G4-JB | SKM 300 G4-S-JB | SKM 100 G4-JB | SKM 100 G4-S-JB |
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対応受信機 | EM 300-500 G4-JB EK 500 G4-JB |
EM 100 G4-JB EK 100 G4-JB |
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カプセル交換 | 可 | |||
入力感度調整 | 0dB 〜 -48dB 3dBステップ |
0dB 〜 -48dB 6dBステップ |
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手元ミュートスイッチ | 無し | 有り | 無し | 有り |
周波数特性 | 80Hz - 18kHz | |||
電源 | 単3乾電池 x 2(3.0V) または BA 2015充電式2.4Vバッテリー |
|||
動作可能時間 | 約8時間 | |||
重量 | 約390g |
ボディパック送信機は約160gとコンパクトな設計で、無指向性ラベリアマイクME 2等、3.5mmプラグ接続のマイクに対応します。また、CL 1(フォン-3.5mm)/CL 2(XLR-3.5mm)変換ケーブルを用いて楽器の接続にも対応します。ラインレベルも入力可能です。
どのボディパック送信機もミュートボタンが搭載されておりますが、SK 300 G4-RC-JBのみリモートコントローラーRMS 1に対応しており、手元ミュートが可能です。プレゼンテーション等の用途で便利です。
送信機 | SK 500 G4-JB | SK 300 G4-RC-JB | SK 100 G4-JB |
---|---|---|---|
対応受信機 | EM 300-500 G4-JB EK 500 G4-JB |
EM 100 G4-JB EK 100 G4-JB |
|
入力感度調整 | 0dB 〜 -60dB 3dBステップ |
||
入力端子 | 3.5mm | ||
ラインレベル入力 | 対応(CL 1/CL 2ケーブル別売) | ||
リモコン接続 | 非対応 | 対応 | 非対応 |
周波数特性 | 80Hz - 18kHz(マイク) 25Hz - 18kHz(ライン) |
||
電源 | 単3乾電池 x 2(3.0V) または BA 2015充電式2.4Vバッテリー |
||
動作可能時間 | 約8時間 | ||
重量 | 約160g |
2機種のポータブル受信機EK 500 G4-JB/EK 100 G4-JBそれぞれに対応したプラグオン送信機SKP 500 G4-JB/SKP 100 G4-JBもラインナップ。既存のハンドヘルドマイクに直接接続できるため、既存の取材用マイクをそのまま使ってワイヤレス収録を行うことができます。
上位機種のSKP 500 G4-JBはファンタム電源の供給に対応しています。