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米国Electronic
Musician誌 2005年3月 |
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EVENTのTR8XLが今回のテストにおける「大当たり商品」でした。以前EVENTのモニタースピーカーを使用したこともあり私達にとってこの結果は取り立てて驚くものではありませんでしたが、それよりも私達が驚いたことはEVENTがTR8XLのような非常に品質が高い製品を$699(ペア)という低価格で販売できるという事実でした。
TR8XLは8インチのウーハーと1インチのツイーターを搭載し、それぞれに150W RMSと50W RMSのパワーアンプを内蔵しています。また本体背面にRCA入力端子の他、XLR入力端子、アンバランス仕様のフォーン端子を装備しています。一方TR8XLはAlesisのモニタースピーカーのように音質補正用のカットとブーストスイッチを搭載していません。これは余計な機能を排除し、回路自体をシンプルにすることにより音質を上げようとする意図があると思われます。その為、入力端子以外には電源スイッチと入力レベル調節ツマミ(‐20dB~MAX)のみ装備されています。TR8XLの前面には直径2.375インチのポートがあり、また電源オン表示LEDがウーハーリムの下部に搭載されています。
私達のTR8XL対する最初の印象は、「滑らかな音質で長時間にわたるレコーディングなどでも耳が疲れにくい周波数特性を持ったスピーカー」ということでした。部屋の周波数特性を考えた上で補正を行う機能が搭載されていないことは多少気になりましたが、デイビッド・ダーリントン氏(Bass
Hitスタジオのオーナー、ミキシングエンジニア)はD'Angeloのレコードを聴いた際に、Genelecの1031A程ではないにせよ、TR8XLの低域が驚くほどタイトで正確に表現されており、ボーカルは明瞭感があり、バランスが非常に良いと評します。
さらにクラシック音楽では、実際にオーケストラの中にいるかのように感じてしまうその解像度の高さに驚かされました。また中高域に関しては音量の大小に関係なく非常に安定しており、ボーカルとソロイストのバランスを容易にとることが可能でした。ツイーターはきめの細かい滑らかさを持ち、決して耳障りでなく、その高域における周波数特性の余裕を感じさせます。ハイハットやボーカルの歯擦音も強調されすぎることなく聴くことが可能で、弦楽器においてはガサガサ感が出ることなく高域がハッキリと聴こえました。またダーリントン氏が行ったアコースティックギターとパーカッションの録音は特に良く、その音質はとても自然で音像が見えるほど明瞭でした。
ダーリントン氏がGenelecを使用して録音したバーネット/マルサリス・プロジェクトはTR8XLで聴くとサックスがギターと比べて少々前に出すぎる感じがしますが、それ以外は録音時と同じ印象がしました。中高域がやや強調されているのかもしれません。またTR8XLは、周波数帯域が近い楽器を素早く識別することができるということにも気付きました。更に少々低域が足りないと感じた為、ダーリントン氏はベースのボリュームを上げ、キックドラムの40Hzあたりを持ち上げました。私達はそのミックスを車の中で聴いてみましたが、それほど手を加えることがなく、ダーリントン氏はTR8XLを使ってミックスすることは大変簡単にできると言います。またTR8XLがプロのレコーディングやミキシング等、非常にレベルの高いモニター環境を求められる現場においても、十分に活躍できるという点でも意見が合いました。さらにTR8XLの周波数特性は音量に関わらず非常に安定していますし、また様々な種類の音楽に幅広く使用することが可能です。
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by Rusty
Cutchin
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