2022年9月、目白に誕生したライブハウス『MARK Ⅵ』。プロサックス奏者である奥野祐樹氏と松下洋氏が経営する株式会社Mouton&Companyが運営している。国際コンクールで優勝経験のある二人が、なぜライブハウス事業に取り組むに至ったか、その経緯を語る。
まずはプロサックス奏者としてのお二人の活動内容を教えてください。
松下:自分はクラシックサックスをずっとやっていたんですけど、3〜4年前からジャズもやるようになりました。それをきっかけにクラシック、ジャズ、ロック、現代音楽と全部やります。あとは、コロナが明けて、海外に行くことも増えましたね。じつは明日からロシアに行きます。音大でもレッスンをしていますが、コンサートの企画に始まり、コンサートではない企画も。会社もその流れでスタートしました。
奥野:僕もサックスの演奏家として活動しています。いま、一番力を入れているのはサックス4人で演奏するサックスカルテットです。特にコロナ禍以降はYouTube配信を精力的に始めました。それがきっかけで、いろんな人に見ていただく機会が増えた。全国いろんなところに行って、子どもの前で演奏したり……そういう親しみやすい系の活動に力を入れています。
お二人の出会いはいつになるのでしょうか。
松下:元々、自分がやっていた「横浜サクソフォンアンサンブル」という300人くらい集めてやっていたイベントに友達の紹介で参加してもらったのがきっかけです。
奥野:二人とも地元が一緒で横浜なんです。
松下:そのイベントでパートリーダーを頼んだり、アレンジを頼んだり。
奥野:大学を卒業してすぐくらいだったので、もう十数年前からの付き合いですね。
松下:会社を作ろうってなった時に、僕が誘って。適任なんじゃないかと思って。
会社を設立したのはどれくらい前になるんですか?
奥野:会社にしたのは、2020年の1月です。何か二人で一緒にやろうねって、ちょうど4年くらい前から話はじめて、会社を立ち上げた瞬間にコロナになって……
松下:会社にするってなったときに、奥野くんに代表になってもらいました。
ライブハウス『MARK Ⅵ』が誕生したきっかけを教えてください。
松下:会社として、音楽のサービスというか、音楽に関わる全ての業種をコンプリートしたいというのがあって。元々ビルの3階を店舗兼事務所としていたんですけど、『MARK Ⅵ』がある1階には元々は八百屋さんがあったんですが、八百屋さんがもう閉店するってなったんです。
松下:ライブハウスがやりたいから借りたというよりも、何かやらなきゃもったいないなと。消去法っていうとあれなんですけど、できることを探した結果、この場所にはライブハウスが一番面白いんじゃないかな、と。
それは立地的な?
松下:目白には、歴史上『ライブハウス』は今まで無かった。コンサートができるようなカフェはあったという話は聞いたんですけど。目白っていうと、結構昔から住んでるみたいな人が多くて、どういう人が集まるのか?というのもちょっと興味がありました。
松下:元々3階の事務所にミュージシャンが集まってきて……
奥野:最近は毎日来るよね。
松下:この池袋・高田馬場・目白エリアって、結構人が集まって来やすい、今までなかったところから新しい発信ができるんじゃないかと。
2022年9月に『MARK Ⅵ』がオープンし、ちょうど1年が経とうとしていますが、振り返ってみていかがでしょうか。
松下:あっという間でしたね。最初の3~4カ月くらいはめちゃくちゃ手探りだったので、ミスしつつ、知り合いのミュージシャンが出演してくれたりして、そのあたりは理解しつつ、利用してくれるお客様に本当に助けられて……みたいなところから、少しずつお客様が付き始めて、広がってきたなという感じはありますね。
松下:あとは、作ったきっかけの一つなんですけど、ライブハウスって暗くて、入りづらくてちょっと怖いみたいなイメージがあると思うんですけど、そういう所じゃなくしたいというか。この内装もそうなんですけど、クラシックから何から色んなジャンルに対応できて、演奏する人も聴く人ももっと気軽に来れるような場所にしたいっていう念願が少しずつできているかなという気はします。
松下:例えば、お店の名前がジャズの曲名だとジャズに偏ってしまうし、〇〇ホールみたいな感じだとクラシックばかりになってしまうし。『MARK Ⅵ』という楽器の名前にしたら、サックス吹きばかりになってしまったんですけども(笑)
松下:でも直近では、アイドルのかたによるピアノ弾き語りのライブイベントが入っています。定期的に利用してくださるお客様も出演者も増えてきて、いつも感謝の気持ちでいっぱいです。
アイドルですか(驚)
松下:ファンミーティングのようなイメージです。300、400の会場では出来ない、20人くらいで限定ライブをやるというな。この距離感が、そういったのにすごく適しているなっていうのがこの1年で判明しました。
『MARK Ⅵ』に入るとやっぱり一番目を引くのが、この白いグランドピアノですよね。
松下:内装を完全に決め切る前は、色んなジャンルをできる構想で白い内装というのがあって、あとは目白だから白がいいなっていうそれだけなんですけど。
松下:そうしたら、白いピアノのほうがいいよなぁと。当初は中古ピアノやノーブランドのピアノも探していたんですけど、白いピアノってあまり良いピアノが無くって。ライブハウスで一番大事なのって音というか。ピアノがいいってすごく大事な条件なんですよね。水が美味しいみたいな。ただ、予算を大幅に超えることになってしまったんですけど。
『ベヒシュタイン』ですもんね。
松下:フェイスブックで500万貸してくれる人いませんか?って投稿をしたら、ある指揮者の方が申し出てくれて。すぐ借りてすぐ買いまして。
松下:中(フレーム)もシルバーなんですよ。すごく珍しくて。普通はゴールドなんですけど。ピアノが決まって、それに合わせて内装も決定しました。ピアノが黒だったら、ここまで白で統一するのは難しかったと思います。
開店するにあたってクラウドファンディングもされたそうですね?
奥野:工事費が全然足りて無かったんです。最初の見積りで自分の中でこれくらいだと思っていたのが、結果3倍かかりました。必死でお金を集めて。工事しながら工事資金を集める、というような状況でした。できることはなんでもしようということで、その中の一つがクラウドファンディングでした。
クラウドファンディングでは想定の金額を超える支援があったと聞きました。
奥野:そうですね。目標の1.5倍くらいのご支援をいただくことができました。
松下:こういった分でグッズを調子に乗って作ったんですけど、かなり余ってしまって(笑)
元々グッズはお礼品という意味合いだったのですか?
奥野:それもありました。
松下:それに加えて、レインコートとかドッグフードとかメタルコースターとか色んなものを作りました。
松下:お土産のあるライブハウスもいいかなぁと思って作りました。まだまだ、改良点があります。一番売れてるのはドッグフードですね。
今回は、お二人の出会いから会社設立、そして『MARK Ⅵ』ができるまでのお話を聴かせていただきました。次回は『MARK Ⅵ』でライブをするには、そして機材の紹介なども予定しています。
次回更新もお楽しみに!
奥野祐樹
神奈川県横浜市出身。
12歳からサクソフォンを始める。
神奈川県立横浜平沼高等学校を経て、昭和音楽大学音楽学部器楽学科弦管打楽器演奏家コース卒業。卒業時に読売新聞社主催の新人演奏会、同伶会湘南支部新人演奏会に出演。在学中より、佐渡裕氏監修の富士河口湖音楽祭、JTアートホール「期待の音大生によるアフタヌーンコンサート」など様々な演奏会に出演。
ザルツブルク=モーツァルト国際室内楽コンクール2015にてサクソフォーンとして初の第1位、グランプリ受賞。副賞として、レリンゲン音楽祭(ドイツ)に参加し、総スタンディングオベーションを受ける。
平成28・29年度公共ホール音楽活性化アウトリーチフォーラム事業愛知セッション派遣アーティスト。
サクソフォン四重奏団「Adam」メンバー。
これまでに、サクソフォンを大森義基、室内楽を栄村正吾、有村純親、松原孝政の各氏に師事。アレクサンドル・ドワジー氏、モーフィンサクソフォンカルテットによるマスタークラスを受講。
現在、ソロ、アンサンブル、吹奏楽などを中心にジャンルを問わず演奏活動を展開するほか、各地でのアウトリーチやTV CM音楽のレコーディング、作・編曲など様々な音楽活動を行っている。
松下洋
彼は私の名を冠する国際コンクールにおいて見事に勝利し、その人格の豊かさを世界に証明した。生れながらのアーティストであり、私はその輝かしい未来が来ることを確信している。私は自信を持って彼を薦挙します。
ジャン=マリー・ロンデックス
世界中でネクストエイジを象徴すると称されるサクソフォン奏者。主としてソロで活動、超絶技巧のコントロール駆使し多種多様かつ膨大な量のレパートリーを擁す。新曲発表および初演に多く携わり、独自奏法の開発や失われつつあるCメロサックスの復旧など、21世紀の聴衆の興味を惹く新企画の実施に余念がない。洗足学園音楽大学非常勤講師、TokyoRock'nSAX主催。
https://mark6mejiro.com/
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