1. 導入のきっかけと選定背景
2025年10月に秋葉原で開催されたQSC試聴会に参加した際、L-Classのサウンドと取り回しの良さに大きな可能性を感じました。当時、客席数1,100席クラスの「有楽町よみうりホール」での舞台公演に向けてメインスピーカーの選定に悩んでおり、同時に「将来的に自社で保有できる現実的なシステム」を探していました。
L-Classの試聴を経て、「このスピーカーなら有楽町よみうりホールを攻略できる」と確信し、株式会社ムーサ・エンタープライズの加登様にご相談させていただきました。機材の手配から事前シミュレーション、当日の仕込み・調整まで多大なご協力をいただき、実際の現場へのデモ機導入が実現いたしました。
2. 事前シミュレーションと角度選定(AIM & EASE Focus 3)
仕込みに先立ち、加登様によりQSCのアレイ予測ツール「AIM(Array Installation Modeling)」および業界標準の「EASE Focus 3」を用いた事前シミュレーションを行っていただきました。
プランニングの狙い: 事前のシミュレーションでは「2階席前方あたりまで確実にカバーしたい」旨を加登様にお伝えし、それを基準にプランしてもらいました。
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AIMによる角度算出: ホールの断面形状や客席傾斜を入力し、キャビネット間の最適な可変角度(1.5°/6°/12°)をあらかじめ割り出していただくことで、現場での設営迷いがなくなり短時間での仕込みが可能となりました。
QSC AIM(Array Installation Modeling)によるアレイ角度算出画面 -
EASE Focus 3による予測: L-ClassのGLLデータを読み込ませ、会場全体の音圧分布やカバーエリアの検証を行っていただきました。事前に音圧が行き渡るイメージを共有いただき、安心して本番に臨むことができました。
EASE Focus 3による有楽町よみうりホールの音圧分布シミュレーション
EASE Focus 3から出力したシミュレーションレポート
3. 会場特性と設営性・可搬性の検証
有楽町よみうりホールは客席傾斜が高く、2階奥までの距離があるうえ、特有の反響音によりポイントソーススピーカーでは音が回り込みやすいという難点があります。
仕込みを行って改めて驚いたのは、設営の圧倒的なしやすさです。
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フレームと本体だけで組める: 細かな連結金具やピンを多数必要とせず、スピーカーフレームと本体のみで短時間にグランドスタックが完成します。加登様と一緒に仕込ませていただきましたが、事前に割り出していただいた角度へ素早く設定でき、仕込み作業の省力化に絶大な威力を発揮しました。
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電源回りの利便性と省スペース化: アンプ不要のパワード仕様のため、C型電源から全システム(Hi 8本 + Low 2本)の駆動が可能です。今回はL/Rそれぞれに用意したC型電源から平行2系統(片側あたり平行×2)で分岐し、余裕を持ったシステムを構築できました。パワーアンプラックが不要になるため、搬送時の積載量・重量も大幅に削減できます。
4. 当日のシステム制御・運用(System Navigator / SysNavi)
仕込み完了後の現場での実動作・音出し制御には、QSCの制御ソフトウェア「System Navigator(SysNavi)」を使用しました。各スピーカーへLANケーブルを接続してネットワーク化し、SysNaviを立ち上げるだけで瞬時に全ユニットが認識されます。
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PCやiPadから各ユニットの出力、EQ、Delayを一括制御可能。
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動作温度やシステムのステータスがリアルタイム表示されるため、仕込み時やチューニング時だけでなく、本番中のコンディション把握や現場での微調整も非常に容易でした。
5. 音響特性・カバーエリア(1,100席ホールでの検証)
実際に音出しを行った結果は期待以上でした。
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2階席後方への音飛び: 事前のシミュレーションでは2階席前方あたりまでを目標にしていましたが、実際は2階席後方までしっかり聞こえているのを確認できました。ラインアレイ特有の直進性が高く、広い客席全体をクリアにカバーできました。
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セリフの明瞭度: MKE2等のマイクによるセリフ音声も、Hiの伸びが良く2階後方までハッキリと聴き取れます。
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LS118(サブウーファー): 片側1本のみの設置でしたが、十分なローエンドを供給し、LA108(4本)の音全体に豊かさをプラスしてくれました。
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サウンド所感: L-ACOUSTICS ARCSに近い豊かな音質傾向を持ちつつ、音飛びに関してはKARAと比較しても非常に優秀な印象を受けました。
6. 導入検討者へのアドバイス&総評
LA108は、キャパ1,000人規模の演劇や会話劇、2.5次元舞台などにベストマッチするシステムです。(※大音量のロックライブや2,000人規模の大劇場には12インチモデルのLA112がおすすめと感じます。)
仕込みの手間削減、搬送コスト削減、高いサウンドクオリティ、そしてAIM/EASE Focus 3による事前予測性とSysNaviによる現場制御の高次元な連携を備えており、価格帯を考慮しても「とんでもなくコストパフォーマンスが高いラインアレイ」だと実感しています。
事前の精密なシミュレーションから現場でのサポートまで、貴重な機会をいただきました株式会社ムーサ・エンタープライズ 加登様に心より感謝申し上げます。来年以降、自社システムとしてフルセット(LA108 / LS118)の導入を前向きに検討いたします。
(レポート作成:舞台音響家 齋藤 正樹)




