
エレキギター、ベース、キーボードなどの楽器を直接ミキサーやインターフェイスに接続するためのインピーダンス変換器です。ダイレクト・インジェクション・ボックスを略して「DI(ディーアイ)」、または「ダイレクトボックス」と呼ばれます。
主にエレキギターやエレキベースなどから出力されるハイインピーダンス信号を直接ミキサーやインターフェイスに入力すると、ノイズが発生したり、高域が減衰するといった問題が生じます。そのためDIを間に接続し、ローインピーダンスに変換する必要があります。エレキギターやエレキベースの信号は、DIを通してミキサーに接続することにより、その楽器が本来持っているサウンドを発揮できると言えます。
信号の接続にはアンバランス接続 (ノイズに弱い / 短距離用:~5m程度)と バランス接続(ノイズに強い / 長距離用)があります。ギター、ベース、キーボードをはじめとした大半の電子楽器から出力されるアンバランス信号は、DIによってバランス信号に変換することにより、長いケーブルの引き回しでも外来ノイズが乗りにくくなるという利点があります。
TSフォン-TSフォン
RCA-RCA
XLRオス-XLRメス
TRSフォン-TRSフォン
従来のシンプルなダイレクトボックスには、パッシブタイプとアクティブタイプの二種類があります。また派生品としては、DIを内蔵したレコーディング用マイクプリアンプや、ギター/ベース用エフェクトペダルにDI出力を搭載したものなど、様々なタイプの製品があります。
トランスを内蔵しただけのシンプルな構造で電源が不要。手軽に使用可能でナチュラルなサウンドが魅力ですが、入力インピーダンスをアクティブタイプほど高くすることができないため、一部の極端に出力インピーダンスの高いエレキギターやエレキベースなどに使用する場合には性能を十分に発揮できない場合もあります。
9V電池やミキサー等からファンタム電源の供給が必要となりますが、入力段にFETなどのトランジスタを搭載し、十分な効果と安定性を得られます。現在はこちらのアクティブタイプが主流となりつつあります。
アクティブベースやエレクトリック・アコースティックギター(電池が入っている=プリアンプを搭載しているタイプ)、キーボードなどは、すでに楽器側でローインピーダンス化されているため、電源不要で歪みにくいパッシブDIが向いています。
電池の入っていないパッシブタイプのエレキギターやベースは信号が微弱(ハイインピーダンス)なため、DI側でしっかり信号を受け止められるアクティブDIが向いています。
現在では多くのマイクプリアンプがHi-Z入力対応の楽器入力端子を装備し、DI不要でハイインピーダンスの楽器を直接接続することができます。DIスルー端子を搭載し単体のDIとして使用できるモデルもあります。
ギター/ベース用のエフェクトペダルには、XLRのバランス出力端子を搭載し、ミキサーなどに直接接続できるモデルがあります。
DIには、1つの楽器だけを接続できる「1ch(モノラル)タイプ」と、2つの信号を同時に扱える「2ch(ステレオ)タイプ」があります。自分が使う楽器の「出力端子の数」に合わせて選ぶのがポイントです。

出力端子が1つしかない楽器は、シンプルな1chモデルを選びます。基本的にはDI1台につき楽器1台を接続します。
主な楽器: エレキギター、エレキベース、エレクトリック・アップライトベースなど

音に広がりを持たせるために、L(左)とR(右)の2つの端子からステレオ出力する楽器や機材は、2chモデルが圧倒的に便利です。
主な楽器・機材: キーボード・シンセサイザー、電子ピアノ、DJミキサー、パソコンやタブレット(DTMの同期演奏や再生用)など
1ch DIを2台使用する場合と比べて、機材管理や配線をシンプルにできる点がメリットです。1台で左右2系統の信号をまとめて扱えるため、設置や撤収の手間を軽減し、ラックやステージ上のスペースも節約できます。また、左右チャンネルを同じ筐体で一括管理できるため、運用時の設定ミスや接続ミスを防ぎやすくなります。特にステレオ出力機器を使用する現場では、1ch DIを2台用意するよりも効率的で、スマートなシステム構築が可能です。

多くのDIには「GND LIFT(グランドリフト)」と書かれた小さなスイッチがついています。「使い道が分からなくて触ったことがない」という方も多いのではないでしょうか?
ステージやスタジオで機材をセッティングした際、スピーカーから「ブー」「ジー」という原因不明の低音ノイズ(ハムノイズ)が聞こえることがあります。これは、ステージ上のアンプと、客席側のミキサーの間でアース線がループ状態(グランドループ)になり、電気的なノイズを拾ってしまうことで発生します。
このスイッチを「LIFT(またはLIFT側)」に切り替えると、アンプとミキサー間の電気的な繋がりを一時的に遮断(リフト)することができます。これにより、厄介なループノイズを一発で解消することができます。現場でのトラブルシューティングにおいて、最も頼りになる重要な機能です。 ※通常時は「GND(またはGND側)」にしておき、ノイズが出たときだけ「LIFT」に切り替えましょう。

DIの入力付近にある「-20dB」や「-40dB」といった切り替えスイッチ。これは「ATTENUATOR(アッテネーター)」または「PAD(パッド)」と呼ばれる機能です。
出力の非常に大きいキーボードやアクティブベース、あるいはアンプのヘッドから直接信号を分岐させる際、ミキサー側の限界を超えた大音量が入力されてしまい、「音がバリバリと歪む(音割れ)」というトラブルが起こります。
このスイッチをオンにすると、DIの内部であらかじめ音量を適切なレベルまで下げて(減衰させて)くれます。楽器側のボリュームを無理に下げて音質を落とすことなく、ミキサー側に綺麗な音を送ることができるため、「DIに繋いだのに音が割れる…」という時はこのスイッチを確認してみましょう。
ライブの接続例を見ると、「ベース ⇒ DI ⇒ ベースアンプ & ミキサー」という形になっています。「ステージに大きなベースアンプがあるなら、そこから直接マイクで音を拾えばいいのでは?」と思うかもしれません。わざわざDIを間に挟むのには、主に2つの重要な理由があります。
ステージ上は、ドラムの大音量やギタリストのアンプなどさまざまな音で溢れています。もしベースアンプの前にマイクを立てて音を拾おうとすると、ベースの音と一緒に周りの楽器の音までマイクに入ってしまいます。DIを使えば、周りの環境に左右されない「ベースだけのピュアで芯のある音」を直接ミキサーに送ることができます。
ライブ中、「演奏しやすくするために、ステージ上のアンプの音量を上げ下げしたい」という場面がよくあります。もしアンプの音をマイクで拾っていた場合、ステージの音量を変えると客席側の音量まで変わってしまい、PA全体のバランスが崩れてしまいます。 DIを使って音を2つに分岐させれば、「客席に届ける音(ミキサー)」と「演奏者がモニターする音(アンプ)」を完全に切り離して、それぞれ最適な音量にコントロールできるようになります。

01エレキベース→DIのINPUT
02DIのTHRU OUT (LINK OUT)→ベースアンプ
03DIのOUTPUT→ミキサー