AMERICAN DJ
Pro-Scratch 1
American DJ's scratcher!
SONO誌(カナダ) 2001年 #17より

主な機能

 この商品はアメリカから2種類の電源コードと共に輸入されました。一つはお馴染みの平らなピンを使用しているもの。もう一方はヨーロッパなどで使用されている丸いピンを使用したもの。スイッチ一つで115Vと230Vの切り替えが行えます。アナログオーディオは2つのフォン端子から、デジタルオーディオは1つのオレンジ色の端子から出力されます。

 このデジタル出力を使用して、信号のサンプリング・レートを落とすことなくピッチベンドができるのかは気になるところですが、この答えはYESです。この技術の発展により自分好みのBPMにカスタマイズした曲をCD-Rに焼けるという事です。Pro-Scratch1はボリューム調節可能なヘッドフォン出力を内蔵している為、ミキサーに接続せずに使用することが可能です。  3.5mmのミニ・ジャックの使用でAmerican DJのFader Qミキサーに接続できます。Fader Qの機能を使用することで、2つのデッキ間でプレイバックを切替することが可能です。1台目からは1つのトラック、そして2台目からは別のトラックを再生するなど色々な使い方ができます。
 主電源スイッチは本体の後ろに設置されていて、STOPとEJECTは同じボタンでフロントパネルの右上に設置されているため間違えて押してしまうということはまずありません。LEDは綺麗な青で、CDトランスポート・スロットの位置を暗闇でも簡単に確認できるように設置されています。ディスクをスロットに入れた瞬間、自動的にディスクがドライブ・メカに吸い込まれて行き、CDプレーヤーがトラックの読み込みを開始し、トラック1の頭を検索します。 青とオレンジのLCDを使用したことでディスプレイは読みやすくなっています。

 左上に設置されているジョッグホイールは早送りや巻き戻しを操作し、真中に設置されている"ターンテーブル"はライブ中に力を発揮するものです。
普通のプレイバック・モードでは、このホイールはピッチベンダーとして曲を早くしたり遅くしたりします。

 ここで開発者たちが生み出した魅力ある青く光る魔法のようなボタンの登場です。この"HOLD"と書いてあるボタンは、ホイールで変化したパラメーターを保存することができます。再生スピードとピッチを普通再生速度の0〜200%に設定可能です。残念ながら、American DJは即時に普通速度に戻す機能を設定がないため、一度CDを取り出しても次に再生されるCDも前回設定された速度で再生されてしまいます。トラックの再生終了の度にこのような設定が解除されたほうが便利でしょう。


 このユニットのメインの特徴といえるのがスクラッチングです。エフェクトの設定などが終わったら"ターンテーブル"を使用して本物のレコードをスクラッチするように使用するだけです。本物に近い感覚でスクラッチが行なえ、音楽の信号に対して不要な信号の干渉はありませんでした。スクラッチでは当然のことですが両方向のスクラッチが有効です。Pro-Scratch1は遅いモーターを装備しているターンテーブルがシミュレーションでき、高速、低速スタートからも選択できます。ベルトドライブ・ターンテーブルのシミュレーションも可能です。スタートタイムは調整可能でディスプレイに表示されます。同じエフェクト・ボタンが音楽信号をフェードさせるのに使用されています。このボタンは出来る事であれば再生/静止ボタンと連動させて欲しかったというのが本音です。

American DJは便利なフランジャーとエコーを装備しています。サスティーンを極端に低く設定するとロボットのような声に変わるといった面白い使い方が可能です。有効に使うと大変便利な機能です。
TRANSFORMERボタンは曲を設定した設定した感覚に刻むことができます。このボタンにはオートマチック・パンという機能も搭載されています。音楽信号を左右に移動させる機能です。
 各ボタンには2つのエフェクトが設定されています。このエフェクトを組み合わせる事で幅広い音を作り上げる事が出来ます。HOLDボタンで新しいパラメーターを保存します。様々な組合せを試して、エフェクトを使用する練習をしてからライブで活用しましょう。定番の3バンドピッチ変更ボタンで8、12、16%の変更をスライダーとショート・アクションボタンで行ないます。この機種はCDの逆再生も行なえます。継ぎ目のないループを簡単に作成できアウト・ポイントも設定できます。BOPボタンでLOOPの最初から再生が始まります。何度か押してインデックス・ポイントを呼び出し、お洒落なエフェクトも可能です。
 それだけだと思ったら大間違いです。似たようなボタンに3つのキューポイントを記録させる事が可能です。マニュアルによると128点のキューポイントを保存する事が出来ると書いてあります。これはCDを入替えても電源を切っても記録されるようになっています。
プレイバック・モードの時にBOPボタンが使用可能になります。サンプリングもあまり長くなければ可能です。最長6.5秒のサンプリングが可能になっています。CDの再生速度とは別にサンプリングの再生速度を設定できます。

 エフェクトまたはサンプルをミックスする事も可能です。エフェクト(またはサンプル)とCDから読み込まれる信号のエフェクト・レベルをターンテーブルで調節できますが、この操作は簡単ではないので、練習を重ねる事をお勧めします。
 またこの機種はリミックスを作成するのに最適な機械です。その手順は丁寧に31ページマニュアルで説明されています。

 

設計

 ADJはこのCDプレーヤーを台湾で製造しています。シリコン・ショック吸収型スプリング・マウントのカー・オーディオ・スタイルプレーヤを使用しています。アンチショックの使用により様々な状況でも実用的です。
 このプレーヤーは3つのモーターを使用しています。一つはターンテーブルの動きを感知する為、一つはディスクを回す為、そしてもう一つはディスクキャリアーを動作させるためです。このユニットはとても薄型で、ワームドライブと磨き上げられた金属レールの上を動きます。

 

 電子部品関係は2つのPCBが装備されています。電源回路に加え大きなフェノール回路が有り、数個のシグナルプロセッサーやモーターコントロールICやメインコントロールが繋がられています。DSPはモトローラの56362が使用されており金属マウンティング用穴付きの両面エポクシ回路を使用しています。バーン・ブラウンPCM1725D/Aコンバーターには6428アンプが続き、良く使用されている2極ユニットを装備。コンバーターは96kHz 16ビットマルチ段階デルタ・シグマユニット。この安さで96dBのダイナミックを与える事が可能です。

 

測量

 Playback fault detecting test CD(CD-R)を再生したが全く問題はなく、このディスクは粗悪なディスクをシミュレートする物ですが、全く問題はありませんでした。しかし、CD-RWは読むことができず、"no disk"というメッセージが表示されるだけでした。原因はCD-RWを読むために必要なピックアップを装備していないからです。CDを挿入してから5秒以内で再生が始まり、トラック間の移動は0.6秒。ディスクの最初から最後までの移動は約3秒程でした。 アンチショックのメモリー状態は横に表示されます。全体的のレベルはなかなか良かった。2チャンネル間には少量のズレは有りますが、気になるほどではありませんでした。

 信号を集めた時、実際集められた信号と集められるはずの信号にかなりの差が出ました。これはD/Aコンバーター必要な補正オフセットを行なっていないからです。速度の違いは表記されていた通りで、内蔵DSPのおかげで大分良くなっています。
 1kHzの信号を40Hzまで落とし、歪みを計ってみました。普通速度での40Hzに比べて若干高いだけで、ピッチシフトを使用したときのデジタル・データ信号も計ってみましたが全く問題ありませんでした。
 周波帯の上部には普通の波動がある位で、レスポンスはリニアで良く、サイン信号もポジティブでした。改善するべき点は有ります、が全体的には大変良く出来ています。ヘッドフォン出力は150Ωのヘッドフォンで34mW、32Ωで45mW出力します。
 2つの曲線(2種類の速度変化があるため)を描いてみました。一つはブレーキング・アクションをシミュレートする曲線、もう一つはブレーキングとアクセルを繰り返してシミュレートする曲線。シミュレート・ブレーキングで一つ注意しなくてはいけない点は、完全に止まるというわけでは無いということです。最後のアクションを終えても、1000分の1でイニシャル周波帯を最大レベルでループさせているからです。普通のCDでは問題はありませんが、ディスクの20kHz信号が直接最大のレベルでスピーカーから出力されてしまうと言う事です。これではスピーカーに凄いダメージを与えてしまいます。
 

 

誰が?何故?

 Pro-Scratchはある程度通常のターンテーブルの代りになるでしょう。スクラッチ機能は本物そっくりで、エフェクトの種類も色々と用意されています。サンプラーは3つのメモリーと3つのキューポイントを記録できるようになっているため、その場でリミックスを作成する事も可能です。デジタル・アウトも装備しているので録音にも便利です。CDを良く使うDJはこれを今すぐ買うべきでしょう。


 しかし、マニュアルを読んで機能を勉強する事が嫌いな人には向いてないかもしれません。何故なら、この機械の魅力をフルに引き出せないからです。

 


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