

幼い頃から漠然と、たくさんの国の人と出会ってみたいと“It’s a small world”を口ずさみながら思っていましたが、大人になった今、京都に住みながらグローバルな世界に触れていることがとてもとても幸せなSugarです。

一緒に写っている素敵な笑顔の大人たちは、みんなスペシャリストたちです。
分野は"文化遺産保護”や”防災"で、ユネスコ・チェア国際研修『文化遺産と危機管理』(UNESCO Chair Programme on Cultural Heritage and Risk Management, International Training Course (ITC) )の講師や参加者です。

(美しい女性陣と一緒に)

(参加者の皆さん)
この研修に参加している人たちの出身を尋ねると、インド、ロシア、アメリカ、イギリス、韓国、イタリア、イラン、エジプト、アルメニア、アフリカ、コスタリカ、マレーシア…と数え切れない国の数を耳にすることになり、本当に世界各地から来ていることに驚きます。


(研修の様子)
彼らが研修の中で深めている学問は、世界文化遺産や歴史的な街並み、人々が愛し大切に残してきた芸術・文化・美しいものたちを、どのようにして災害や人災から守っていくのかという、文系と理系の両方の学問が一体となった『文化遺産防災学』です。
専門家たちの経験や知識を、国境を超えて共有して、関係する様々な分野の研究者や機関が協力しあうことで国際的なネットワークが広がっていくようにと、UNESCOが主体となり、京都の立命館大学の歴史都市防災研究所(Institute of Disaster Mitigation for Urban Cultural Heritage (DMUCH))を拠点として開かれています。
さて、私はもちろんこの分野において完全な素人なのですが、それを生かして彼らが取り組むワークショップの中で「被災した現地の人」という役柄を演じる為、ボランティアとして去年から参加させてもらっているんです。旦那さんからもらった、有難いご縁です。
演じている間は「英語わかりません」の一点張りを貫き通し、研修参加者たちを困らせるのが、ある意味私の役目です。
実はこれ、被災現場において専門家たちが遭遇するいくつもの場面(現地の言葉しか喋れない今回の私の役"House owner"や、記者”Press"が押しかけたり、泥棒が出現したり...等々)を想定し、その中でもチームワークをどのように発揮し、何がどのように被災したのかを記録・ラベリングしていく術を学ぶ為のワークショップなのです。




(実際の様子。最後の写真は、“泥棒”役が密かに現場から持ち去った物たち。)
彼らがいつか災害の現場に立ち向かう時、大切なことは一体何なのかを知る為のこの”エチュード”=即興劇(場面設定だけ与えられて、セリフや動作は役者自身が考える劇)に参加すると、音楽をやっている私にもたくさんの気付きがあります。
ライブに向けての練習の中で、部屋の中であっても当日履く靴でピアノのペダルを踏んでいる時の感覚に近いというか、どこまでリアルな感覚を自分の中に呼び醒ませるかが本番の演奏を高める鍵になると思うのです。
もともとエチュード(étude)は美術・音楽用語でもあるフランス語で、絵画・彫刻制作の準備の為の下絵や習作、楽器練習の為に作られた楽曲・練習曲を意味しています。
その言葉が転じて、即興劇を指すようになったことで、”練習”は常にリアルな環境の中で本気で演じきれ、と教えてくれる気がします。

世界で活躍する文化遺産防災学に関わる人たちとの本気のエチュードに刺激を受け、温かいコミュニケーションに感激しつつ、私は私の専門分野をしっかり深めていきたいなと思った今日この頃です。
台風で被災された方々が1日でも早く穏やかな日々を取り戻せますように、祈っています。