AUDIO MEDIA誌 2004年3月 

アウトボード開発の勝負所はどれだけのものを一つのボックスに詰め込み、かつそれを的確に作動させる事に成功するか、次にどれだけ多くの組み合わせを作り上げる事が出来るかにつきるといえます。もちろんそれは、基礎的な部分がしっかりしていればこその事です。その点でTL AUDIO は勝者と言えるでしょう。新製品はこのジャンルのクラシックとも言える、IVORY 5052です。マイクプリアンプ、EQ、コンプレッサー、リミッター、真空管、とこのボックスには全てが詰まっています。また全てステレオリンク、デュアルモノとして使用でき、それぞれにTLの特質が見えてうかがえます。メーカーによっては名目だけの宣伝効果として、ちょっとしたオールインワンタイプを出していますが、それはTL のスタイルではありません。5052 の機能の全ては完全なものであり、単純な簡素バージョンではありません。そのためノブの数は多く、一見大きな3Uパネルですら込み合って見えます。それでもその分かりやすいレイアウトと色付きのノブが操作をシンプルにしています。TL AUDIOが、ここ最近のトレンドとも言える宇宙船の操作パネルのような複雑なルックスを持つことに抵抗しているのと、機能性と操作性に気を使っていることが伺え、好感がもてます。

入力・出力

5052にはコネクターの為のスペースも十分にあり、全チャンネルで4つ以上のインプットを備えています。マイク、バランス・アンバランス使用のライン、そしてインストゥルメント端子をフロントパネルに配備、その他にもバランスインサート、コンプレッサー・サイドチェーン・ジャック、2組の出力端子、更にはSPDIF 出力とワードクロック入力が可能な、オプションのデジタル出力カード(別売り)のためのスペースも確保されています。

ベースとなる三つのブロック(インプットステージ、EQ、コンプレッサー)のそれぞれが、そのハイブリッド回路の中に真空管を使用しています。またLEDで真空管の稼動状況をチェックできます。TL Audio はかつてより真空管の特色をあまりアグレッシプに使用することはなく、むしろむやみに原音を加工しないことで、その開放的で暖かなブランドイメージを作っていると言えます。ハードな使い方をして、その効果を確かめる事もまた可能ですが、そのような使い方をしないのであれば、DCヒーターサプライと三つの12AXデュアル・トライオードの効果で全体的にクリアーかつ滑らかな音を得ることが出来ます。

EQステージはユーザーが望むであろうすべての要素を搭載した、全面4バンドセットアップです。2つのミッド・バンドはQ値を可変でき、HF・LFはシェルフ/ピークモードをスイッチで切り替えることが出来、各バンドは素晴らしいレンジをカバーします。アグレッシブにサウンド調整することも、甘い、微妙な音作りも思いのまま、出てくる音にがっかりするような事はありえません。これはTLが真空管を上手く使用していることの証明です。クリーンで透明感がありながら、常に音楽的なサウンドが作り出せます。事実、全てのユニットはノイズの少ない素晴らしい駆動を実現しています。もう一つTLのイコライザーで素晴らしいのは、そのステレオギャングモードです。一つのコントロールで両チャンネルを操作できるようになるのです。デジタルボックスでは当然のような事ですが、5052のようなユニットでこれを達成できたのは偉業と言っても良いでしょう。

同じ事がコンプレッサーについても言えます。コンプレッサーは完全可変・独立プログラムのアタック、リリース、スイッチ式ソフト・ニー・モード、広い範囲のスレッショルド、レシオ値を誇ります。EQはコンプレッサーの前・後どちらにかけるか切替できます。又、ディエッシングのような特定の周波数を意識したプロセッシングにも簡単に対応出来るよう、コンプレッサーのサイドチェーンにインサートする事もできます。しばしば軽視されるがちですが、役立つ機能が専用のゲイン・メイクアップ・コントロールです。これを使えば、どんなにコンプレッションを掛けた状態でも全体的信号レベルを一定に保つことが出来ます。特筆すべきは、この機能がユニットのメイン出力コントロールから独立していて、レベルが不意に上がったり下がったりすることなく、コンプレッサー効果のA-Bチェッキングが出来ることです。イコライザー同様、ユーザーが望むべきものは全て取り入れており、非常にフレキシブルなコンプレッサーであるといえるでしょう。繊細で控えめなものから作りこんだものまで全ての音作りをカバーする事が出来ます。

出力には可変スレッショルド付きのリミッターがついています(ステレオリンク可能)。これらは高速定数のブリックウォールリミッターで、コンプレッサーほど繊細ではないものの効果的で歪み難いものです。全てのセットアップはメーターでモニターでき、入力レベル、出力レベル(デジタルレコーダーにハイレベル信号を出力するときの為の+10モード搭載)を始め、コンプレッサー/リミッターを使用した際のゲインの減少を確認する事が出来ます。裏側入力ステージには、入力セレクター、ライン入力用仮想0ポジション付きの可変ゲイン、30dBマイクパッド、位相変換(マイクソースだけでなく全ての入力に有効)を装備。またコンプレッサー、リミッター、イコライザーの独立ON-OFFスイッチに加え、全体バイパススイッチを備えています。

結論

5052はたくさんの高品質な機能を詰め合わせ、その結果どんなレコーディングにも対応出来る非常に柔軟なパッケージになっています。マイクからDAWのフロントエンドとして、特にそのオプションデジタル出力端子をつかった時など、すばらしく秀でています。もう一つの使用範囲として、包括的なマスタリングを可能にしてくれます。また、それぞれ独立したイコライザー、コンプレッサーとして、二つを組み合わせて使うと強力なシグナルプロセッサーにもなりえます。他のIvoryシリーズ商品の価格に比べるとちょっと値段は張りますが、これだけの機能をそなえた本品はシリーズの金字塔であると言えるでしょう。TLの商品に感動を覚えないものはありません。そしてこの5052も例外ではないのです。

by Dave Foister


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