|
 |
| Sound
On Sound誌
|
 |
真空管マイク&プリアンプ
マイクプリと電源サプライの合体
|
|

ここ数年の間、「マイクプリを真空管マイクの電源サプライに組み込んだ商品を作らないか」とマイクメーカーに話を持ちかけては相手にされないことが続いていました。電源サプライには外枠と電源トランスが装備されているのだから、マイクプリを組み込むコストなど僅かにも関わらず、メーカーは聞く耳を持ってくれませんでした。私がこの商品を思いついたのは、DTMが浸透するに従い、真空管マイク出力をサウンドカードのアナログまたはS/PDIFデジタル入力に直接接続できれば便利だろうと考えたからです。マイクプリを購入する代金が浮きますし、配線もスリムにすることができます。
TLAUDIOのIvory 2 5000は私のアイディアを実現した商品です。真空管マイク用パワーサプライとマイクプリが2Uのシャーシに結合されています。ラック耳は取り外し自在なため、デスクトップでもラックマウントでも使用できます。私は真空管マイクによく付属している箱型の電源サプライを想像していたのですが、ラックマウント対応のほうがよりエレガントになったと満足しています。リアパネルにはオプションの24bitアナログ/デジタルコンバーター用のスロットも装備。コンバーターは44.1kHzもしくは48kHzで作動しますが、外部ワードクロック信号にも同期できます。
5000に付属しているのが中国製のマルチパターン真空管マイクです。マイクはデュアル・ダイアフラムの1インチ・カプセルと金メッキマイラー・ダイアフラムを搭載。プリアンプのフロントパネルで9種類の指向性を切替可能です(無指向性、単一指向性、双指向性)。豪華なフライトケースはありませんが、分厚いショックマウントに、マイク用のビニール製ポーチが付属しています。10メートルのマルチピンXLRマイクケーブルが付属しています。ケーブルは塩化ビニール皮膜ではなく、布製の皮膜です。プリアンプはシンプルですが、必要な機能は全て備えています。入出力ゲインコントロール、円形の出力レベルVUメーター、メーターが表示しきれない一時的過入力を表示するPEAK
LED、また位相反転スイッチ、+10dBメーターボタンを搭載。+10dBメーターボタンを押すとメーター値が10dB減少し、高レベルの信号をより正確にモニターすることができます。オプションのコンバーターwp装着した場合、デジタル・フル・スケールは+18dBuに相当するため、+10dBメーターボタンは重宝します。 |
リアパネルにはマルチピンXLRマイク入力、バランス仕様3ピンXLR出力、電源入力があります。メイン出力をそのまま反映したアンバランス仕様MONITOR出力も搭載。ミキサー経由で信号をモニタリングしたり、AUXライン出力としても使えます。XLR出力端子の横にあるのはMIC
OUTスイッチです。これを押した場合、内蔵プリアンプを通さずに信号が直接出力されます。従って別のマイクプリアンプを使用することができます。ただし5000内蔵のプリアンプの性能は非常に高く、これを使わない手はありません(ノイズ−127dBu、周波数特性20Hz〜35kHz(+0/−2dB))。
デジタル拡張カード用スロットの下にあるのがLINK IN/OUT端子です。拡張カードはS/PDIF出力搭載であり、S/PDIFは通常2チャンネル出力(ステレオ/ノンステレオのどちらにも対応)です。このLINK端子で2台の5000をリンクし、単一のデジタル出力カードを共有させることができます。ワードクロックの同期化はBNC端子を使って行います。マニュアルによると、正しく同期化するためにはサンプリングレートをワードクロック入力とマッチさせる必要があるそうです。
入出力ゲインコントロール搭載のため、操作は非常にフレキシブルです。入力ゲインの調整範囲は16〜60dBまでで、出力コントロールでは更に+15dBが可能です。ゲイン・ポテンシャルが75dBもあるので、どんな信号レベルのマイクでも問題ありません。最大出力レベルは+26dBのため、どんなオーディオインターフェースも最大レベルにして接続可能です。
|
付属のコンデンサーマイクを使って数種類の音源を試してみましたが、その低価格を考慮すると実に素晴らしい性能を発揮してくれました。マイクの感度は極めて一般的で、14mV/Paです。周波数は20Hz〜20kHzであり、10kHz周辺で若干プレゼンスが持ち上がっています。従って高域が若干リフトします。最大SPLは130dBで、キックドラム以外のどんな音源にも適しています。等価ノイズは18dBA(EIN)であり、真空管マイクとしては悪くありません。また通常のスタジオでの使用ではノイズが耳につくことはありません。
マイクに使用している真空管は12AT7ダブル三極間であり、200Vで稼動します。マイク本体には10dBパッド用スイッチおよび6dB/オクターブHzローカット・フィルター起動用のスイッチがあります。全体的にサテンメタル仕上げが施してあり、精密でソリッドな印象があります。
|
|
|
| マイクとプリアンプの相性も抜群でした。ノイズはほとんど耳につかず、ポップスクリーンを使用すれば殆ど、もしくは全くEQをかけなくても素晴らしいボーカルトラックが録音できます。5000マイクとRODEのソリッドステート・マイク2本を使って男性ボーカルをテスト録音してみました。マイクを出来るだけ近接させ、比較ができるよう3つのトラックに録音します。音質は予想した通り、低中域が強く、RODEマイクより高域が若干弱いといった印象です。音量に厚みが足りないボーカルには最適な特性です。高域をもう少し強く出したい場合、12kHz付近で数dBのブーストをかけてやれば問題ありません。従って5000マイクは男性、女性ボーカルを問わず、幅広い用途に適用できるマイクと言えます。アコースティックギターおよびハンドパーカッション録音でも5000は優れたトラックを生み出しました。ラージダイアフラムマイクは通常アコースティック楽器用マイクとして最適なものではありませんが、どんな音源でも大きな欠点なく収音できるのが5000マイクの特徴です。殆どのテストにおいて、指向性はWIDE
CARDIOID(広単一指向性)に設定しました。ただしより開放的でナチュラルな音質がほしい場合、アコースティックな環境で指向性をOMNI(無指向)にすると効果的です。 |
真空管マイクとプリアンプは経済的で利便性にとんだ組み合わせです。コストパフォーマンスの高い中国製マイクと、プリアンプに関する高い技術力を組み合わせたことで、TLAUDIOのIvory
2 5000は非常に魅力的なパッケージ商品となっています。フライトケース非付属という欠点はあるものの、大抵のスタジオでマイクは引き出しに収納し、ケースはベッドの下にしまいこまれるのが常です。一つ文句をつけるとすれば、フロントパネルに楽器入力端子がないことですが、これも大きな欠点とはいえないでしょう。
現在音響機材の価格競争は激しく、Ivory 2 5000より安く、かつ同等の音質を持つ真空管マイクは沢山あります。また指向性変更機能が必要ない場合は5000よりも安価なマイクがあるはずです。ただし指向性変更が必要で、スタジオに持ち込む機材をスリム化されたい方には一見の価値ある商品といえるでしょう
。 |
by Paul
White
|
|
|