RODENT2000

 
マルチパターンスタジオ用コンデンサーマイク MIX誌 / 200311月

Henry and Astrid Freedman氏がオーストラリアにFreedman Groupを設立し、業務用オーディオ機材の設計、製造、設置サービスを始めてから35年以上の月日が経ちました。同社が最初に生産したSRスピーカー、アンプ、クロスオーバーは高度成長期のオーストラリア経済で使用されました。そして試行錯誤の末、最終的にRODE社の主力商品となったのは広いバンド幅、ローノイズとスムースな周波数特性を実現したコンデンサーマイクでした。1990年に発売されたマイク作品の第一号NT2以来、RODEは市場に溢れている二流マイクメーカーとは一線を画した存在となっています。
RODEの新製品であるNT2000は、「今までに無いものを作りたい」というPeter Freedman 現社長の情熱の結晶とも言えます。NT2000はソリッド・ステート、マルチパターン、大型ダイヤフラムを装備したスタジオ用コンデンサーマイクです。7dBA EIN、滑らかで透明感ある音質に加え、このマイクの大きな魅力となっているのが「100%コントロール可能」な3つのパラメーターです。マイク本体に搭載されたコントローラーで、極性(無指向性〜単一指向性〜双指向性)、ハイ・パス・フィルター(20〜150Hz)、パッド(0〜10dB)を調整可能。極性用POTはセンター・デテントタイプで、真ん中にあわせると単一指向性になります。NT2000はマイクを音源に対し垂直に向けて収音するタイプで、3つ並んだコントロールの面を音源に向けます。多重レイヤー加工した大型ウィンドスクリーンの下にあるのがHF-1コンデンサーカプセルです。カプセルには直径約5cm、5ミクロン厚のMylarダイヤフラムを搭載。ダイヤフラムは組立前にスパッタ加工され、手作業でテンション加工、エージングが行われています。ニッケル仕上げを施した真鍮ボディに搭載されているのは2重構造のボードです。ボード上には低ノイズFET電子部品とともに軸/マウントタイプのパーツが装備されています。全体的なつくりは見事なものです。他のサイド・アドレス型RODEマイクと同じく、単一指向性の表側の目印として、「RODE」のロゴがあります。

NT2000
スタジオでの実験
NT2000のパッケージが届いた瞬間から非常に興味をそそられました。付属品は専用ケース(内側にパッド付き)とショックマウントです。ショックマウントは丈夫なポリマー製で、ネジ穴の付いたメタルプレートによってマイクのスタンドマウントが可能です。また角度調節ネジを搭載している為、様々な角度でマイクをしっかりと固定することが出来ます。直径約15.2 cmのショックマウントはかなり大きめなので、パーカッションやスネアなどを録音する際はマイク設定が難しいかもしれません。ただしボーカルやギターなどの一般的な収音環境では全く気にならないと言えるでしょう。
NT2000CASE NT2000は非常に感度が良く、ノイズを拾いやすいのでショックマウントは必須アイテムです。マイク自体も内部バスケットでショックマウントされている構造です。バスケットは伸縮性のあるコードで保護されており、振動などによって生じる低音ノイズを防止します。NT2000はかなり重量のあるマイクです。ショックマウントと合わせて1キロ以上の目方があるので、丈夫なマイクスタンド(特にブーム)を選んでください。
まず録音してみたのが、4弦のアパラチアン・ダルシマーです。NT2000を単一指向性に設定し、音源の正面から70 cm程上に吊り下げて収録しました。これではダルシマーのブリッジから出る音が明るく目立っていたので、NT2000の設定をやや無指向性よりに直してみました。すると範囲が広めの単一指向性となり、全体にバランスのとれた良い音質を再現、高音のハーモニーと低域の単音をどちらも豊かに再現してくれました。驚くべきはNT2000のノイズの少なさでした。特にMillennia製Media HV-3プリアンプと一緒に使ったときのクリアな音は忘れられません。次に録音を試みたのが猫の鳴き声です。なかなか鳴いてくれないので諦めかけていました。そのとき猫がマイクから1.5メートル程遠ざかり、2回鳴いてくれたのです。幸運なことにそのときまだ録音機材が作動していて、音声信号の経路も非常にクリーンでした。したがってゲインを上げるだけで使える音になりました。
今度はNT2000で(人間の)ボーカルを録音してみました。対象はドゥーワップ・スタイルのアカペラグループ。マイクは双指向性に設定し、どちらか一方にボーカリストを配置しました。どちら側にボーカリストを立たせても音質の優劣はなく、単一指向性と同様、耳元で歌っているようなリアルさがありました。ソロ・ボーカルの場面では単一指向性に切り替えましたが、その場合ヒスノイズを除去するためポップガードが必要になりました。NT2000の場合、単一指向に設定してもロール・オフが始まるのは14kHzくらいです。したがって他のコンデンサーマイクによく見られるプレゼンス・ピークが発生しません。マイクの音質はAKGでいえばC414よりC-12に近いです。丸みを帯びた、豊かな低域とバランスのとれた高域により、男性/女性ボーカル用ともに適したマイクです。低域の強い男性歌手にはEQを加えたほうがいい場合もあります。NT2000を無指向性に設定すれば音源との距離をおいた録音に最適です。ピアノ、ギターアンプ(ロック)でも良い音質が得られました。高い音圧レベルにも耐えられるので、アンプをガンガン鳴らしてもパッドなしで近接録音ができました。リアルタイムで調整が可能な20〜150Hzロール・オフ機能は大変便利です。ある程度マイクと音源を離せば、ラジオのようなナレーションにうってつけの設定になります。ポップスクリーンは必要ありません。150Hz設定はドラムのオーバーヘッド録音など、低域をロール・オフするのに適した設定です。今回のテストでドラム録音はしませんでしたが、全体のオーバーヘッド録音は試しました。HPフィルターを解除し、NT2000をスタジオキットの頭上に設定しました。すると各音源の詳細まで再現しつつ、全体的には自然にまとまった音質が実現しました。
優れた音質とあらゆる音源に対応する応用力を低価格で実現したマイク、それがNT2000です。
by George Petersen