

手頃なアナログ機材メーカーとして確固たる地位を築いたPHONIC社が、I7600によってついにデジタルへの参入を果たしました。I7600はスタイリッシュな外観が印象的なグラフィックイコライザー/スペクトラムアナライザーです。
昨今EQは音声を修正するだけではなく、音作りにも活用されています。その両方の用途で求められるのが、ターゲットとなる周波数特性を確実にピンポイント加工できる性能でしょう。その目的のためにPHONICが作り出したのがデュアル30バンド設計であり、作成したEQ設定を保存、またプリセットされたEQトラブルシューターでどんな音づくりにも柔軟に対応します。
I7600 はスタイリッシュなシルバー仕上げが印象的な1Uサイズです。リアパネルは非常にシンプルになっており、バランス/XLR共用入力端子が2系統、バランス出力、XLR出力を搭載。バランス/XLR出力は+4dBまたは-10dBのレベル切替スイッチが付いています。またピンクノイズ出力(XLR)、電源ソケット、スイッチを装備。フロントパネルは13セグメントからなる緑LED(左右30列ずつ)が並んでいます。LEDの中心(0dB)はオレンジの点灯。LED列の中心にはLCDディスプレイおよびグラフィックレベルなどの編集ボタン、モード切替ボタンがあります。
中心のプログラム・セクションはほんの10センチほどの幅しかありませんが、基本操作は極めて快適です。拡張機能を使いこなすには多少慣れが必要ですが、取扱説明書があるので心配無用です。本体の電源を入れると、LED上でI7600と点滅します。電源投入後、60種類あるプログラムから任意のものを選択してください。最初の30種類(P1〜P30)はファクトリープリセットですが、残り30種類(U1〜U30)は自由にプログラムが可能です。
|
I7600は1/3オクターブEQであり、バンド設定は25Hz〜20kHzに集中しています。1バンドにつき12dBのカットまたはブーストが可能です(+10dBで音量が倍増します)。全体的音量に対するローパスフィルター(1kHz〜20kHz、OFF)、ハイパスフィルター(20Hz〜1kHz、OFF)も搭載。ゲインの調整範囲は−40dB〜+6dBであり、他のパラメーターと同じくFUNCTIONボタンを回して調整できます。FUNCTIONボタンはプリセットの保存や呼び出しにも使用します。ただ残念なことに、プリセットに名前を入力することが出来ません。プリセットはP1〜P30、U1〜U30という番号で認識するしかありません。ライブなどでの使用では注意が必要です。
ファクトリーEQ設定には様々な活用法があります。例えば微妙なカットやブースト設定を使い、スピーチやベース、ドラムに暖かみを与えたり、音をシャッキリさせることができます。全設定はリンクされているため、左右2チャンネルは全く同じ信号を出力します。ただしP9は非リンクです。左チャンネルでバスドラを強調しつつ、右チャンネルでスネアの音をしゃきっとさせたい場合に使用します。
上述したとおり、楽器によって適したバンド帯に信号を分けられるのがI7600の大きな利点です。同様の設定を男性/女性ボーカル、ベース/アコギ、低域/高域に対して行うことも出来ます。そしてI7600の高域信号をSRスピーカー、低域をサブウーハー用アンプに出力することが可能です。
|
ファクトリープリセットにはシビランスノイズをカットするもの、わざと電話回線を通したような音声をつくるもの、ハムノイズを軽減するものなど様々あります。P17〜P18などはより選択的なブースト/カットプログラムを備えています。このプログラムによってフィードバックノイズを発生させる周波数特性を割り出し、カットします。
他のファクトリープリセットには以下が含まれます。Vinyl Warmth(125Hz、8kHzあたりで低域、高域をブースト)、テープによるヒスノイズのカット、Mini
TV(性能が低い、小型スピーカーをシミュレートしたものと思われます。あらゆる環境にミックスが耐えうるかテストするのに役立ちます)、Telephone、Cardboard
Tube(キンキンして低域が強い)、低/中/高域。全てあらゆる音づくりの現場で活用できるものばかりです。
EQレベルを変更する前にFUNCTIONボタンを回せば複数のバンドを同時に選択することが出来ます。FUNCTIONボタンで各バンドに同じブースト/カットレベルを設定してください。両方のEDITボタンを同時に押せば、現在の設定をロックして変更出来なくすることも出来ます。10秒以上操作を行わない場合、現在の設定が自動的に保存されるので、停電によるメモリー・ロスの心配もありません。万が一いずれかのチャンネルがオーバーロードした場合、LCD上にクリッピング警告が表示されます。
1〜30Uメモリーには自由にプログラムを書き込むことが出来ます。コンサート会場ごとにPA設定を記録したい音響エンジニアにとって非常に便利な機能です。 |
I7600はRTA機能を搭載している為、リアルタイム・スペクトラム・アナライザーとしても活用できます。RTAモードにした場合I7600に入力する音声信号に基づき、LEDがその周波数特性を表示します。よってモニタリングもしくはライブ音響システムにおける問題を突き止めることが出来ます。例えば低域がよく聞こえないにも関わらず、I7600が十分な低域を表示している場合、スピーカーの低域再生部分が故障している可能性があります。
I7600は背面のバランスXLR端子からランダム・ピンクノイズを出力することも出来る為、マイクを使って音響環境の欠点を突き止めることも出来ます。
RTAモードではFUNCTION CONTROLLERを使ってディスプレイ感度、ピークホールド、レスポンスタイム(250ミリ秒〜2秒)を調整できます。Weightingも変更可能。FはFlat、Aはローレベルサウンド、Cはハイレベルサウンドを示します。またテスト手順によってdBuもしくはdBvを選択できます。
I7600のようにグラフィックEQだけでなくRTAディスプレイとしても機能し、しかもこの価格帯の商品はめったにありません。Alesis DEQ230はイコライザーとしての機能では勝りますが、RTA機能は全く装備していません。I7600はただのグラフィックEQに過ぎませんが、豊富なデジタルコントロールおよびプリセットにより、それ以上の価値を感じさせる製品になっています。勿論I7600に追加してほしい機能は沢山あります。例えばMIDIインターフェースがある場合、データの保存、再生などの操作性がずっと上がったでしょう。更にはパッチを遠隔操作で選択したり、コントローラー・データを使ってシンセのようにダイナミックなスタジオフィルターエフェクトを作り出すことも出来ます。
ただし価格と機能性に着目すればI7600は既に素晴らしい商品です。スタジオ、ライブの両方で活躍するプロセッサーとして大きな将来性が見込めるでしょう。 |
|