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誌上レポート M-AUDIO MICROTRACK 24/96

M-AUDIO MICROTRACK 24/96
Electronic Musician 誌
by Rudy Trubitt with Bruce Koball/ 2006 9月
M-AUDIO MICROTRACK 24/96    
『これは“使える”ポケットレコーダーです。

完璧なポケットサイズのオーディオレコーダーとはどんな商品ですか、と問われたなら、あなたはどのようなものを思い浮かべるでしょうか?私であれば次の条件を上げるでしょう。まずハードドライブのような保存方法ではなく、メモリーカードのようなソリッド・ステートのメディアを用いた小型のもので、ファンタムパワー駆動のマイクだけでなく、1/8インチミニジャックのマイクも入力できること。
それからオン・ザ・フライのMP3エンコーディングから高サンプリングレートの24bitリニアPCMファイルまで、ステレオでもモノラルでも幅広い解像度でレコーディングが行える事。そしてレコーディング後はそのレコーダー本体やメディアをPCにつなぎ、オーディオ編集ソフトにファイルを簡単にドラッグできること。そして、これらの機能付きでも$500以下の価格で買えるものです。
一昔前まではこれは夢のような話でした。それが今日ではApple iPodのようなポータブルのコンシューマー・オーディオ機器の登場により集積回路の性能が上がったこともあり、低価格であるという事を含めて、私の希望の条件を全て満たした、小型サイズの高解像度オーディオレコーダーが登場しました。M-AUDIOから発表されたMicro Track 24/96もそんなレコーダーの一つです。
我々は今回のレビューで2つのMicro Track 24/96をテストしました。1つはM-Audioから渡されたもの、もう一つは通常の小売店で手に入れたものです。複数のファームウェアリビジョン(1.1.5/1.2.3/1.3.3/1.4.0)をテストし、7ヶ月に渡り数百件の録音を繰り返しました。ファームウェアのバグにより、出だしは困難なものでしたが、最新のファームウェアと共に使用しMicro Trackが有能な”使える”製品である事がわかりました。

Ins and Outs

トランプよりもやや大きいサイズのMicro Trackは約30秒ほどで起動します。フロントパネルには電源ボタン、LCDスクリーン、レコードボタン、L-R録音レベルコントロール、ヘッドフォン・ボリュームコントロールが配置されています。この中でも極めて重要なレコードボタンは、本体を見ないで感覚的に操作していても簡単に探し出す事ができます。
右手でこのレコーダーを持った時、親指の部分がNavボタンの位置に来るようになっています。このボタンはレバーのような上下の切り替えに加え、内側にクリックする事も出来ます。Navボタンを使って、メニューのスクロール、ボタン入力、再生、停止、早回し、巻き戻し、ファイルスキップなど様々な操作をする事が出来ます。

機体の左側、人差し指が位置する場所にはシステムオプションと、メイン録音画面を切り替えるメニューボタンがあります。その他、機体左側には3段階入力レベルスイッチ(Low、Medium、High)にファンタム電源スイッチ、そしてポケットに入れている時の誤動作を防ぐためのホールドスイッチが備えられています。トップパネルにはステレオ・ミニジャックを2つ(マイク入力、ヘッドフォン出力用)の他マイク、-10dBラインレベル信号用のバランス1/4"フォンジャックを2つ用意。1/4フォン入力には、標準的な48Vではなく30Vのファンタム電源を供給する事ができます。プロの現場で使用されるようなコンデンサーマイクの中には30Vでは正しく使えないようなものもあるので、このレコーダーと一緒に使用する予定のマイクのスペックを事前にチェックする必要があります。ボトム部にはRCAライン出力が1ペア(この出力はヘッドフォン・ボリュームコントロールの影響を受けます)、コアキシャルS/PDIFデジタル入力、ミニUSBコネクターを装備しています。
Micro TrackにはT型ステレオ・エレクトレットコンデンサ・タイプのマイクが付属します。このマイクをこんなに使うことになるとは思っていませんでしたが、その出来に驚きました。このマイクはステレオマイクとして、特に優れているという訳ではありませんが、小さくてとても使い回し効きます。私はシャツのポケットからそっとのぞいたこのMicro Trackで、たくさんの有用な音源を録音することができました。
電源は内蔵されたリチウムイオン電池から供給されます。付属のマイクと一緒に使用して4時間の録音をする事が出来ましたが、ファンタム電源使用時はもう少し短くなるかもしれません。AC充電器を使って、またMicro Track本体をPCにUSB接続することでバッテリーの充電をする事が出来ます。メーカー発表の充電可能回数は500回となっていますが、交換用のバッテリーはメーカーより販売されています。M-Audioからは外部バッテリーは販売されていませんが、私の同僚Bruce Koballは外部バッテリーからUSBコネクターを通じて5Vの安定化した出力を供給するポータブルアダプターをデザインしました。

Check Your Levels

私はまず、最初のテストとして私が所属するバンドSippy Cupsのリハーサルテープを作ってみることにしました。Tマイクを取り付けたMicro Trackをドラムセット傍のベースアンプの上に設置しました。なかなかの結果を得る事が出来ましたが、録音レベル、入力トリムを最小に設定しても時折オーバーロードを起こす事がありました。この問題を軽減する為、M-Audioはオプションでステレオミニ・インラインアッテネーターを発表しています。このアッテネーターを使うとMicro Trackのミニジャック入力に10dBのヘッドルームを追加する事が出来ます。
入力レベルのコントロールも少しやりづらいと感じました。録音レベルコントロールは12dBのレンジでしか行えませんが、少なくともこの2倍あっても良かったと思います。M-Audioは、このコントロールはフェーダーというより実際にはマイクプリアンプのゲイントリムだと注釈していますが、通常私が録音レベルボタンを見たら、レベルを一番下まで下げると完全に静かになるような類のものを想定します。このMicro Trackに関してはそれが当てはまらないようです。
1/8インチ入力使用時は3段階ある感度設定の内、2つだけが有効となります。このスイッチを使うと更に12dBの感度調整が可能になります。つまり、レベルコントロールで12dB、感度スイッチでもう12dB、合計24dBのレンジでミニジャックの感度調整が可能です。ただ、それでも余裕があるとは言えません。

1/4フォーン入力の場合はより広いレンジで調整する事が出来ます。まずフロントパネルのフェーダーで12dB、加えてLow、Medium、Highの3段階の調整が可能なので、ここで合計約18dBのレベル調整が可能、さらにメニュー画面で27dBのブーストをかける事が出来ます。最終的にはこれらを合計した約57dBのレンジでレベル調整が可能です。
 静かな音をマイキングする際はこの27dBブーストを使用したほうが良いでしょう。Micro Trackのマニュアルでは誤ってこれをデジタルゲインと記していますが、これはアナログ信号パスの一部となっています。我々が行った計測では、このブーストを使うと15dBのS/N比の改善がみられました。

マイクプリアンプ部のノイズの無さは素晴らしいものです。多くの機器の測定を行いましたが、Micro TrackはSharp MD702ミニディスクレコーダーと比べると5dB程ノイズが少なく、SonyのDAT Manに比べると3dB、Fostex FR-2(このレコーダーはMicro Trackと比べると格段に高価なものですが)と比べると8dB程ノイズ量が多い結果となりました。また、1/4フォーン入力では1/8ミニ入力より2dBほど静かだということも判りました。

バランスの1/4フォーン入力は+4dBuラインレベル信号を入力するとクリップします。CDレコーダーやカセットの-10dBV信号でも過入力となることがあります。ただ信号レベルを本機の操作範囲内にとどめておく事ができれば、素晴らしいトラックが出来るでしょう。我々はShure VP88マイクを1/4フォーン入力につないで、ロックバンドのライブレコーディングもクリーンに録る事が出来ました。また、9Vバッテリー駆動も出来るRode NT4を1/8ミニジャックに入力して、ラウドなジャズ・コンボやホールでの合唱隊のレコーディングを行いましたが、ここでも素晴らしい結果を得る事が出来ました。

Micro Trackのレベルメーターはデシベルスケールで表示されませんが、我々が行ったテストでは最後の目盛りで-39dBfを測定したので、10の大きな目盛り毎に約4dBを表している事がわかりました。信号が存在している事を示すグリーンのLEDは-40dBfで点灯し、赤のクリッピングLEDはデジタルクリップの約-1dB前に点灯します。残念ながら、このメーターはレコーディング時には、ややスローに感じられ、また再生時には不安定になるように思います。全く同レベルのサイン波をL-R両チャンネルに流したところ、レフトチャンネルはライトチャンネルよりも2から4dB高い値でクリップしました。メーターが正確にはどのくらいの値を表示しているのか、今ひとつ不確かだった為、私がMicro Trackで録ったレコーディングは全体的に、幾らかレベルが低いものとなってしまいました。

素晴らしいと思ったのは、Micro Trackはトランスペアレントなデジタル録音が可能だということです。S/PDIF入力からの録音でドロップサンプルが無いかテストしましたが、全く見つかりませんでした。16bit、44.1kHzのオーディオ・レコーディングでサンプル比較を行いましたが、サンプル値の変化は見られませんでした。ただ残念な事に、デジタル入力からの録音時はオーディオをモニターする事が出来ません。これは外部A/Dコンバーター用記憶機器としての有効性を著しく損なうものだと思います。。

In the Field

ふとした瞬間、すぐ目の前で、クールなサウンドが聞こえる事があります。Micro Trackはそんなサウンドを捕らえるのに最適です。起動後たった1秒で録音を開始する事が、録音したファイルを5秒で閉じて新たな録音を始める事が出来ます。
新しい録音を始めるとファイルが新規作成されます。ファイル名はfile0001.wav(もしくはfile0001.mp3)より次々と番号が振られます。WAVフォーマットのファイル容量は最大2GBまでに限られています。最新のMicro Trackファームウェアでは、このリミットを越えると、ほんの僅かなブランクの後、自動的に新しいファイルにスイッチします。
Micro Trackで最も気に入っている点は、ちゃんとしたオーディオレコーダーをいつでも身につけていられると言う感覚です。以下は一例ですが-ちょっとした使いに行っている時、私は遠くの方で、金属質で激しい、何かを破壊するような音を聞きました。ちょうどその頃、とあるサウンドデザイン・プロジェクトでディーゼルエンジンのロッドが連結するサウンドをシミュレートしている真っ最中で、既にほぼ完成していた作品に、最後に付け加えるものを探しているところだったのです。3ブロック先で私はそのサウンドの源を発見しました。それはモビルクレーンから振り下ろされる巨大な削岩機で、その巨大な化け物は広大なコンクリートの壁を破壊しているところでした。私はすぐにMicro Trackを取り出し、そこで捕らえた音源はプロジェクトの最終バージョンの鍵を握るサウンドになったのです。
Micro Trackはミュージシャンのアイデアノートとしても同様に便利なものです。私が最近作った3曲は全てMicro Trackの録音を基にしたものです。このレビューのためにMicro Trackを試している間、このレコーダーは公共のラジオプログラム、Weekend Americaの仕事で、私の2番目の仕事場として充分に活躍してくれました。数多くのプロダクションのリハーサルやコンサートの録音にも使う事が出来ました。適切なマイクを適切なポジションで使用する事によって、Micro Trackでとても良いレコーディングをする事ができます。

Get Rev'd

M-AUDIOよりファームウェアリビジョン、1.4.0がリリースされるまで、Micro Trackには致命的なバグが存在していました。それはレコーディング中のファイルを消してしまうものや、コンパクトフラッシュカードをリフォーマットするまで新しい録音ができなくなる、といった重大なものでしたが、これらのバグの問題はどうやら解決したようです。もしあなたが初期のファームウェアを使用しているのであれば、今すぐにアップグレードする事をお勧めします。アップグレードの方法はとてもシンプルで、無料で行う事ができます。
もう1つ、ファームウェアのアップグレードと共に改善して欲しい点は、そのスクリーンレイアウトです。録音レベル・インジケーターのグラフィックによってピークレベルのグラフィックが見にくくなる点が改善され、目を細めなくても読めるように大文字でRECORDメッセージが表示され、ディスプレイが読みやすくなれば良いと思います。更に早回しや巻き戻しのコントロールに難があるので、レコーディング中にマークを付ける機能が追加されれば、長い録音中の特定のイベントを見つけやすくなり、ナビゲーションも簡単になると思います。


In the Pocket

全体的に見て、Micro Track 24/96はとても使える"セミプロ"向けのレコーダーだと思います。今年の私のフィールドレコーディングツアーで私の2番目の作業場として活躍してくれ、手持ちの機器の中でもレギュラークラスの働きをしてくれました。プロの録音エンジニアにメイン・レコーダーとして使う事は薦めませんが、リハーサルや曲のアイデアを録音したいミュージシャンや、ポケットに入れて持ち運びできるようなデジタルレコーダーを探しているアーティストにとっては、良いチョイスになるのではないかと思います。最新のファームウェアをインストールすれば、Micro Trackは間違いなくその価格に見合った働きを見せてくれるはずです。



 
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