LINE6 PODXT
Electronic Musician 誌
by Jon Chappell / 2003 10月

PODXT LINE6は初めてギターアンプ・モデリングの原理を取り入れたメーカーの1つです。モデリング機器を製造しているメーカーは他にもありますが、LINE6はモデリング機能主体の機器を中心に製造していることで有名になりました。LINE6の商品は、デザイン、機能、音質を改善し続け、モデリング機能がレコーディング・アーチストの変わり続ける嗜好や多種多様な要求に応えられる事を証明しています。PODXTは以前のモデルと比較すると見た目や質感等、共に似ていますが、音質、編集性能、その他インターフェースの面において大きく進歩しています。PODXTは32ビットフローティング・ポイントプロセッシング技術(浮動小数点演算)を利用して設計が一新されており、さらに多数の新機能を搭載しています。
     
今年のモデル

PODXTはオリジナルPOD(現POD Ver.2、現在も製造中)から大きく飛躍しましたが、派手な赤色で豆型のフォルムは健在です。PODXTの傾斜はなだらかでフロントパネル上でより多くの機能を操作する事が可能です。
USBポートが加わったことを除けばPODXTの入出力はオリジナルPODと同じです。
フロント・パネル上の配置も前のモデルに似ています。新しいPresence controlを加えた‘アンプ’ノブはボディーの外縁の上部三分の二に半円を描いて配置されています。割り当て可能なエフェクト・ノブはフロント・パネルから操作可能になりました。ディスプレイとその他のコントロールつまみが配置されているため、中央部分が少し広くなりました。リア・パネルには以下の端子が搭載されています。
フォン・アンバランス出力(L/R)、オプションのFBVフット・コントローラー用端子(RJ-45ポート/FBVへの電源供給が可能)、MIDI IN/OUT、16、24ビット・オーディオ用USBポート(ASIO, Sound Manager, WDM, Directsound用ドライバ付)、アンバランス・フォン楽器入力、ヘッドホン端子。

ニューフェース

フロント・パネル上の一番大きな変化は4桁表示、122×32ピクセルのバックライト付LCDです。見た目だけの進化に留まらず、オリジナルPODの欠点であった数字表示ではなく、製作したプログラムをわかりやすくグラフィック表示し、プリセットのパラメーターの状態も確認できるようになりました。PODXTの新しいディスプレイはプリセット名を表示し、8つのうち7つのアンプノブの状態をわかりやすく画像で表しています。こうすることで、保存したデータの状態を一目で確認でき、調整時に憶測で値を調整しなければならないということが減ります。ディスプレイに表示されるアンプノブ表示の一つ一つにあるドット表示は現在セーブされているノブの位置を表し、その後アンプノブのセッティングを変更しても、現在セーブされているセッティングを頭に留めて置く事ができます。
この機能は便利ですが、残念ながら、前の設定と今の設定を比較する機能はついていません。ツマミをいじっている内に元のサウンドを忘れてしまうのはよくある事です。PODXTではその場合一つ一つのパラメーターを見ながら元の設定に戻すしかありません。アンプノブの中で唯一マイクロプロセッサーによって操作されておらず、セーブできないのが、アウトプットノブです。アウトプットノブは、音量ではなく、接続する機器の入力レベルに合わせ出力レベルの調整を行う為に設計されているためです。セーブされているプリセットの音量を調整したい場合はチャンネルボリュームノブを使用してください。チャンネル音量はプログラム、セーブが行えます。
PODXTの編集作業はとても簡単です。Editボタンを押し、Selectノブでページをスクロールさせます。これで極めてスムーズにエディットしたい箇所に辿り着けます。この方法だとエフェクトが初めから最後まで予想可能な順番に並んでいるので、1からの音作りに最適です。またStomp-box-styleボタン(Comp/Gate,Stomp,Mod,Delay,Cab/A.I.R)を2回押して各ページを呼び出し、編集作業をすることも可能です。特定のパラメーターを急いで編集する場合、こちらの方法が便利です。


MODEL PERFORMANCE

私はPOD2.0とPOD Proを所有しているので、PODの操作同様、サウンドにも慣れ親しんでいます。オリジナルPODが素朴な魅力で他のモデリング機器を出し抜いたのに対して、PODXTは今までに無い繊細な音質を可能にしながらも、激しいギターサウンドも再現するモデリング・アンプと言えます。
PODXTの中の新しいアンプモデルはLINE6の代表的商品、Vettaを元に設計されています。24bitだったオリジナルPODに比べると32bit浮動小数点演算技術を持つPODXTは驚異的な進歩です。オリジナルPODの音質が印象的で神秘的だったのに対して、PODXTは極めて現実的で複雑である上に、音楽的な響きを持っています。例え音色が好みに合わなくても、実質的にPODシリーズは、どのモデルも実用的だと思います。しかし、PODXTの真髄であるFender, Marshall, Matchless, Mesa/Boogie, Soldano, Voxクラシック・アンプのモデリングは正に現在のモデリングアンプの本領を発揮しています。
私はアシスタントと一緒に何週間にもわたってある実験をしました。PODXTのモデリングとそのモデルとなった私のコレクションである実際のアンプ(60年代後期と近代のMarshallsとFender, 60年代中期のVox AC30、90年代のMatchless Cheftain)とをかわるがわる演奏して聴き比べました。私がモデリングに求めていたのはアンプが出す正確な音色のクローン(例えアンプ同士で製造年月日が同じでも難しい事でしょう)ではなく、各アンプが持つ大体の性格をどの位再現できるかでした。
PODXTは決して期待はずれではありませんでした。中でも、64年のFender Delux Reverb をモデリングしたBlackface Luxはクリーン・レベルに設定にした場合はガラスのように滑らかな艶を持ち、オーバードライブさせると適度にこもった音になります。68Marshall Plexi Super LeadをモデリングしたPlexi Lead 100も素晴らしいモデルです。歪ませると生々しいリアリズムを奏で、真空管アンプそのもののような音質を持っています。更に原型がそうであるようにPlexi Lead 100モードでパワーコードを弾くと音がたわみます。 プリセット名は極めて明確で、しばしば“Won’t get fooled”、“Sultans of Swing”、“Eruption”などの曲名を想起させます。このようなネーミングは、例えば“Clapton Woman-tone”のようにアーティストやスタイル名を使うよりも分かりやすいと言えるでしょう。プリセット名を聞いただけで試してみたくなってしまう魅力があります。マニュアルで薦められているピックアップの組み合わせで使うと、すぐにクラシック・リフを作り出し、PODXTのモデリングを体験することが出来るでしょう。

STOMPIN’

StompboxをモデリングしたエフェクトもPODXTに新たな可能性を開拓しました。アンプ自体がひどいものではない限り、アンプの前に仮想のDistortion Boxを置くことも出来ます。この機能はオリジナルPODでは出来ない事でした。PODXTのストンプ・ボックスはProCo Rat, Arbiter Fuzz Face, Tycobrake Octavia, Electro Harmonix Big Muff Pi, Ibanes Tube Screamer(TS-808バージョン)をモデリングしています。同じように、コンプレッサーやモジュレーションエフェクトも一般的なものではなく、ヴィンテージエフェクトの音質を再現できるようになっています。Boss CS-1(生きのいいカントリー・テレキャス調で私のお気に入り)や極限までコンプレッションを加えたMXR Dynacompを選ぶことも出来ます。Stompboxに基づいて開発したモジュレーション・モデルはBossCE1をモデリングしたSine Chorusや、電力管のバイアスを変えることで、トレモロ・エフェクトを作り出すBrown Fenderアンプを元に設定されたBias Termsがあります。
更に驚いたことに、LINE6はアンプ・モデリング機能だけではなく、キャビネット/マイク・モデリング機能A.I.R(Acoustically Integrated Recording)を更に進歩させました。この機能は、空気を揺らすスピーカーとその振動を捕えるマイクの相互作用をモデリングしています。
多くの場合、私は気まぐれでアンプモデルを変えるのではなく、マイクモデル(例えば、SM57 OFFマイクからSM57 ONマイク)やキャビネットモデル(4×12CelestionV30から2×12Blackface)を変えることで満足するサウンドを得ることが出来ました。このような調整は、実際にスタジオでレコーディングをしている時、今あるアンプではなく、新しいアンプに入れ替える前に行われる事です。通常、1台のアンプでマイク調整を工夫し、ベストの設定を見つける事になるでしょう。
微妙な調整をするために外部プロセッサー(EQ, 音響ルーム、コンプレッサー)に頼らなければならない事は一度もありませんでした。音響上の特徴はすべてアンプ、キャビネット、マイク・モデルが一体化して生まれるものです。例えば、一度試聴してみて高域が欲しいと思ったらSM57を、より幅広い周波特性を持つU67に変えるだけです。少なくとも最初はそうして調整した後、もう一度試聴し、まだ足りなければ単にTrebleかPresenceを上げてみます。

Tweak Deeply

オリジナルPODではフロント・パネルから調整できるパラメーターはわずかで、MIDIエディター・ライブラリーを使ってさらにディープな機能の調整をしていました。PODXTは、どのパラメーターもフロント・パネルから調整可能です。エフェクト・スイッチを2度押してEditモードに入り、カーソル・ボタンで画面を移動し、Rotary Controlでエフェクトの調整をします。この機能はモジュレーション・エフェクトの調整で特に役立ちます。例えば、LFOの速度を0.10Hzから15.00Hzまで100Hertzの単位で調整できます。また、LFOの速度を16小節や8小節のように現在のTapTempoの倍数に設定することも出来ます。
PODXTでは特定のエフェクトの配置を変える事も出来ます。ボリュームペダルを一番手前にしたり、一番後ろにしたりすることが可能です。モジュレーションとディレイをプリアンプの前(Stomp-boxのように)にしたり、逆にプリアンプの後(Effect-loopのように)に配置したり出来ます。
コンピューターを使ってパッチを編集、構成したい方のためにダウンロード可能なエディター・ライブラリーPODXT Edit(Win/Mac)があります。PODXT Editではパッチをスクリーン上に表示して、コンピューター上でパラメーターの編集を行えます。他にもバックアップ機能やパッチを種類やシークエンスに従ってグループ分けできる機能もあります。

X-TRAS

PODXTは素晴らしいサウンドを作り出し、便利な編集機能も付いていますが、その機能は単なる音色作りの域を超えています。ライブ・ミュージシャンはFBV、FBVショートボード(RJ45ケーブルでPODXTに接続可能なフットペダル)も試してみたいでしょう。PODXTはバックパネルCVジャックが無いために、パラメーターをリアルタイムで操作したい場合は、FBVボード又はMIDIフット・ペダルが必要です。
レコーディングでは、USB I/O機能が重宝します。デジタル・オーディオ信号やMIDI信号を伝達でき、LINE6のウェブサイトからFirmwareやDriverをインストール、アップデートすることもできます。Line6は近々PODXTをGuitarPortと互換性を持たせ、LINE6ホームページ上の充実した内容のギター教材を利用可能にする予定です。

MODELS&SUPERMODELS

ビンテージ・ギターアンプを長い時間をかけて調整したり、マイクの配置を変え、エフェクト・ペダルを幾度も交換し、好みの作り出す事はギタリストにとって何物にも変えられない喜びです。しかし、もしすぐにそのセッティングを行わねばならないとしたら、PODXTのヴァーチャルテクノロジーは優れた結果を得ることができます。簡単にビンテージ・アンプ設定の本質を知りたいのならば、PODXT1台で十分と言えます。



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