STEREO VALVE COMPRESSOR


AUDIO MEDIA誌 2001年1月号より


 TL Audioはとてもユニークな会社だ。プリアンプからあの最高のVTCチューブ・コンソールまで作ってきて、彼らは真空管・プロセッシングの世界で幅広く自分達の名前を刻み込んできた。TL Audioがこのジャンルに責任を持ちながら素晴らしい物を作ってきたことは誰にも否定できないだろう。では他社の真空管・プロセッサー製品とどこが違うのか?1つはプリセット…それから楽しいパネルデザイン…それから比較的低価格なところ…では性能はどうだろう?もちろん言うことなしだ。では紹介しよう。FAT-1、2チャンネル・コンプレッサーだ。
 このコンプは一見奇妙な外見を持ち、一体型だが別売の3Uラックトレーを使えばラックにもマウント出来てしまう。このコンプはハイブリッド・デザインで、ノイズや歪みの少ないソリッド・ステートのバランス仕様ライン入力から、2段目のトライオード真空管アンプを通すことによってあの美しい真空管独特の太い音を作り出している。

 2チャンネルの入力と出力はどちらも本体の後ろにあるバランス仕様の端子を使っている。オペレーティング・レベルはスイッチで-10dbと+4dbから選ぶことが出来る。フロント・パネルには1個のVUメーターがあり、このメーターは出力レベルかゲイン・リダクションを表示するように設定できる。1つしかVUメータを持たない理由は1チャンネルずつ別の設定をする事が出来ないからである。入力と出力ゲインはそれぞれ±20db、ゲインの可変レンジは0〜+20db。そのゲイン設定はコンプがONの状態でなくてはバイパスされてしまうが、出力ゲインはコンプに関係なく常にアクティブである。フロントパネルで1番目立つつまみはProgram Control Knob(プログラム・コントロール用つまみ)。このつまみでプリセット15種類かマニュアルモードから選ぶようになっている。マニュアルモードはスレッシホールドとレシオを自由にコントロールでき、アタックは0.5msと5msそしてリリースは0.2sと1.5sからそれぞれ選ぶ事が出来るようになっている。プリセットは、スレッシホールド、レシオ、アタック、リリース、そしてニーがすべてその表示されたパート(ボーカル、ギター、ベース等)に対して最適な音を出せるために設定されている。

…使用…

 最初は少し機能に制限があるような気がした。2チャンネルあるのにモノで使う場合1チャンネルしか使えないのだ。それからアタックとリリースの数値を自由に設定できない。だが、考えておかなくてはならないのが価格とこのコンプを1番使いそうな場所だ。私は何度かスタジオに持っていき、セッションをする時にTL Audio Fat-1を使用してみたら、大変使いやすくて音も他に比べてかなり良かった。TL Audioを使った事がある人なら、分かってもらえるだろう。このとき使用したスタジオには何種類かTL Audioの機材があり、そのうちコンプレッサーも置いてあった。音質はスタジオのコンプに比べてもFat-1はなかなかの物であった。
 プリセットも思った以上によかった。はじめにドラムのプリセットを試してみた。生のドラムとプログラム・ドラム両方に試したが、プログラム・ドラムは特に真空管を通してから暖かみのある太い音になった。ベースを通しても同じく良い結果が出たと思った。ギターのプリセットも良かったが、アコースティック・ギターの設定が1番良かった。あの音の広がり方、そして暖かみがなんとも言えないほど美しかった。全てのパートを三つのミックス用のプリセットを通してみると、驚くほど良い結果に恵まれた。1〜3になるにつれコンプレッションのかかり方が強まり、3つめのプリセットではプログラムされた音楽を通すと、コンプを掛けるだけでなく低音を程よく効かせてくれた。ヴォーカル(男性と女性両方)に関しても良い結果が得られた。マニュアル設定はとても簡単だったが、やはりアタックとリリース・タイムの設定にはもう少しバリエーションが欲しかった。

…結果…

 またもTL Audioから素晴らしい機材が登場した。マニュアルモードでの設定の自由に欠けること、そしてモノラルで通す時に1チャンネルしか使用できないことでプロとして使いたくない、使えないという人も出てくるかもしれないが、やはり覚えておかなくてはいけないのが価格である。FAT-1のコストパフォーマンスと使いやすさ、そして素晴らしい音質は、多少の設定の不自由さなど問題にならないほど勝っているのだ。


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