AUDIX SCX25
Electronic Musician 誌
by Richard Alan Salz / 2003 8月

SCX25
ナチュラルなサウンド、
幅広い用途に対応する大口径ダイヤフラムコンデンサーマイク

見た目の良い大型マイクを探している方にとって、AUDIX SCX25は魅力があまり無い商品かもしれません。ただし通常のラージ・ダイヤフラムマイクよりコンパクトで、音質の優れたマイクをお探しの方にはうってつけの商品です。製造/発売元のAUDIXは1990年代に丈夫で手頃、優れた音質のダイナミックマイクを次々と発売し、今や不動の地位を築いています。そのAUDIXが自信を持って発売したのがSCX-25です。
コンデンサーマイクの製造はダイナミックマイクより複雑に見えますが、技術的により難易度が高いのはダイナミックマイクのほうです。コンデンサーマイクのメーカーは星の数ほどありますが、一流のダイナミックマイク・メーカーは五本の指に入ることからもその難しさが伺えます。コンデンサーマイクは様々な電子部品(EQ回路など)を使用して最終的な音質を高めることが出来ますが、パワードでないダイナミックマイクはメカニックな部品(ダイヤフラム、磁石、ボイスコイル)のみで音を再現しなければなりません。今日市場に溢れている大口径のダイヤフラムマイクと違い、SCX25はアメリカで設計、製造されています。

ロリポップ

SCX25は指向性が固定されたコンデンサーマイクです。超小型なデザインのため、パッドやロー・カットスイッチはなく、トランスフォーマー・レスのマイクプリを搭載しています。ソリッドな真鍮のボディは小型(SCX25木製ケース長さ15cmほど)で、つや消し加工が施されています。細部まで精密な造り、170gと軽量ながら、ソリッドな感触が印象的です。カプセルを内蔵リングに直接ショックマウントする革新的なサスペンション・システム。外部ショックマウントは一切使用していません。
特筆すべきはプリアンプセクションで、サーフェスマウントのトポロジーが使用されています。金でスパッタされたダイヤフラムは直径2.54cmほどにもなります。
付属品は内部をスポンジで覆った木製ケース、ナイロン製マイクホルダー、ポーチです。ケースにはSCX25が2本収納できるようになっている為、ペアの持ち運びに便利です。
ペアマッチでないSCX25を2本使い、様々な音源を収録してみました。モニター、録音のために以下の機材を使用しています:Neotek IIIcコンソール、Urei 809、Fostex NF-1モニター、D.A.V. Electronics Broadhurst Gardens(ソリッドステート)マイクプリ、PEAVEY VAMP-2真空管プリアンプ、MCI/Sony JH-24マルチトラックレコーダー、Studer A80 RCマスター2トラックレコーダー。 SCX25はソリッドステート、真空管マイクのどちらとも相性が良いことが分かりました。

VOICE OF REASON

廉価なコンデンサーマイクにありがちなのが過剰に強調された中域ですが、SCX25のミッドレンジは極めて自然です。中域の強調は、表面的には音声の明瞭度を増すとされていますが、音質が不安定でとげとげしくなるのも事実です。またマルチトラックを録音する場合、周波数がブーストされるに従って音声に滑らかさが欠けてくることがあるのです。
SCX25は不必要なプレゼンスの強調を避けるので、クリーンで自然な中域を再現します。私が行ったテストでは、SCX25は男性、女性ボーカルのどちらでも優れた効果を発揮しました。その音質は決して耳障りではないものの、ミックスしてもくっきりと際立ちます。
EQを多用しなければ聞き取れないボーカルでもない限り、特に不向きな種類のボーカルはないと言って良いでしょう。
低域に関してもSCX25は極めてナチュラルです。一般的な大口径ダイヤフラムマイクでは、近接収音によって不必要に低域が強調されることがありますが、SCX25では大して耳障りになりません。マイクを近接させ、小さな声で歌ったボーカル録音をSCX25に通してみたところ、十分なボリュームと自然な音質が得られました。

ピアノ・フォルテ!

極めて高価なマイクを除けば、SCX25は私が知る最高のピアノ録音用マイクです。私が持っているHallet Davisアップライトピアノは低域に欠け、中音がやや狭まっているのですが、その欠点をSCX25は正確に再現してくれました。よりプロフェッショナルな環境でテストするため、ジャズ、クラシックコンサート会場で録音を行いました。ピアノは1940年代のSteinway Dコンサートグランドで、PAシステムを通して聴いたその音は今までで最良のものでした。今ではコンサートホールの音響エンジニアもSCX25の購入を考えているほどです。

SLAPHAPPY

SCX25はドラム、パーカッションの収音にも優れた効果を発揮します。特に相性が良いと思われる楽器はCABASA、タンバリン、トライアングル、GOURD SHAKERでした。高音を細部まで繊細に再現しつつ、甲高い音にならないのです。騒がしいミックスではEQが若干必要かもしれませんが、殆どの場合加工が必要ありません。
ドラム・オーバーヘッドのテストでは、GMSキットの上に間隔を空けてSCX25を2本設置しました。その音質に大変満足しました。いつも同じ用途に使っているMicrotech Gefell MT711S(SCX25よりはるかに高価)と同レベルの音質です。次にドラムセットと同じ高さで、SCX25を3メートル程離して録音してみました。SCX25を通した音は実際に耳に届く音とあまり変わりません。プレゼンスが足りないためか、サウンドに今ひとつ迫力が欠けているようでした。
AUDIXによると、キックドラム内部で発生する高レベルの音圧でSCX25が破損する恐れがあるとのこと。そこでひとつ実験してみました。SCX25を一本、22インチメープル・キックドラムから0.6メートルほど離して設置しました。このポジションで録ったサウンドはウッディで、低域もちょうど良いものでした。ただしキックドラム以外のドラムから漏れる音まで拾ってしまうのです。そこでマイクとキックドラムとの距離を0.3メートルほどに縮めてみました。すると音のかぶりは改善されたものの、限界の音圧レベルだったらしく、音質が不安定になってしまいます。そこでSONOTUBE(コンクリートを流し込む際に使用する紙製のシリンダー)の出番。別の雑誌でも紹介しましたが、音のかぶりを避けながらキックドラムの低域をキャッチするには、SONOTUBEが一番です。これでSCX25の音がソリッドになりました。ただし正直なところ、SCX25をキックドラムマイクとして一番にお勧めは出来ません。


HORNS OF PLENTY

金管楽器は暖かみがあってメローな音が好みです。デジタルレコーディング初期によくある、扁平なブラス音ほど嫌なものはありません。あまり音源に近づけすぎない限り、SCX25はトランペットやトロンボーンでも暖かみがあって素晴らしい音を再現してくれました。


GUITAR GODS

ギターに関しては、Jean Larrivee Jumboカッタウェイ・アコースティックギターでSCX25のペアをテストしました。音源から1メートル程離し、2本のマイクをXY軸の形で設置して見ました。それでも十分な音質が録れましたが、マイクをネック、ブリッジの近くに分けて設置すると更に洗練された音になりました。ブリッジは0.2メートル、ネック側は0.3メートル離した時の音が最高でした。ネックとブリッジの結合点にマイクを持っていくのが良いようです。
PEAVEY VAMP2真空管プリアンプでも同じ設定を試しました。ソロギターの場合、音質は極めて優れたものでした。ただしフル・ミックスを行うトラックが必要な場合、真空管プリアンプとSCX25の相性はあまりよくないようです。クリアな音質を保つ為には、クリーンなソリッドステート・プリアンプを使うのが良いでしょう。
SCX25はナチュラルなアコギの録音にはうってつけですが、中域がフラットな為、極端にリズミカルなギター演奏にはあまり合わないようです。
音響エンジニアとミュージシャンにとって有難いのがSCX25のサイズです。コンパクトなため演奏者の邪魔になりません。また軽量の為、限界までブームを傾けることが出来ます。
SCX25は高音圧に弱いことを念頭において、Paul Reed Smith CE24を一本録りしてみました。アンプはビンテージSilvertone1484です。Silvertoneは小型の真空管コンボアンプで、12インチスピーカーがセミオープン・キャビネットに格納されています。驚いたことに、SCX25は他のどのマイクよりも、アンプの音質を忠実に再現してくれました。もう一本のSCX25をキャビネットの背面、オープン部分から6cmほど離して設置すると更に良い音が得られました。もちろん背面に設置したSCX25のチャンネル極性は反転させています。2トラックをミックスすることにより、厚みがあって完璧なギター・トラックが完成しました。
SCX25には、エレキギター・アンプを録音する際のルーム・マイクとしての用途もあります。Mesa/Boogie Dual RectifierをMarshallの4×12キャビネットと組み合わせ、SCX25のペアを3〜8m離して設置した際の音質は深みがあり、素晴らしかったです。同じ価格帯のマイクよりもSCX25はステレオ音声に深みがあります。また同価格のマイクには音の不安定さが目立つのに対し、SCX25の暖かみのあるサウンドも特筆すべきでしょう。

LITTLE BIGGY

SCX25は同価格帯のコンデンサーマイクによく見られるように、ミッドレンジの不必要な強調がありません。幅広い用途に対応し、ポジションニングも簡単です。軽量ボディながら、暖かみがあって滑らかでナチュラルなサウンドを再現します。手頃なピアノ録音用マイクとしてはこれ以上の商品はないでしょう。オーバーヘッド・ドラム用としても透明感ある音質を実現。また男性、女性両方のボーカルに対応します。
SCX25は音圧レベルが高い音源には適しませんが、音源との間に十分な距離をとれば問題ありません。決して格安マイクとはいえませんが、原音に忠実な音質と精密なつくりを見れば、決して無駄な出費ではないはずです。AUDIXがダイナミックと並んでコンデンサーマイクの大手として君臨する日も近いのではないでしょうか。

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