SONO WORLD EDITION 誌
#27

BOSE 802IIIはそのユニークな外観が有名です。高さより横幅の方が長く、コンパクトな奥行き。曲線を描くフロントは全面メタルグリルで覆われています。エンクロージャーは合成樹脂製で、壁や天井への設置、スタンドマウントなどマウント装備が万全なのも特徴です。入力はリアパネル上に装備され、パラレル配線のスピコン端子を使用します。また802IIIをフロアモニターとして使用する場合、付属品の保護フロントカバーをスタンドとして使用できます。要するに、ポータブル・スピーカーとしての使い勝手を第一に考えた製品といえます。


An Unusual Concept

BOSEスピーカーの基本コンセプトは直径の小さい、フルレンジ・トランスデューサーです。ただしこの手法だけでは音声信号を十分に再現できません。そのため802シリーズはEQと共用されるのが一般的です。802IIIはBOSE製Panareyデジタルプロセッサーを使用するか、対応アンプ(1600や1800)に差し込んで使用するEQカードという選択肢もあります。EQカードのほうが設定作業がシンプルですが、フレキシブルな設定ができない欠点があります。Panareyプロセッサーなら多種多様な設定ができ、802III以外のラウドスピーカーにも使用可能です。
Panareyプロセッサーは19"ラックマウント可能。入力2系統、出力4系統で全てバランス仕様XLR端子です。接続端子はワイドバンド、バイアンプにも設定できます。バイアンプ設定では、2出力信号を802に送信(ローカット・フィルターON)、残り2出力信号をウーハーユニットに送信します(各モデルに応じてフィルターが変化)。Panareyはステレオ、モノラル、デュアル・モノに対応している為、様々な設定が可能です。Panareyシステムはリミッター、ディレイ、EQ、フィルターを搭載。入力信号はLED VUメーターでモニターされます。

Technique and Construction

メタルグリルにはゴム製のフレームがはめられ、消音材の役目を果たしています。固定ネジを取り外すと合計8個ものフルレンジドライバーがペア配置されているのが分かります。各ドライバーはネジ3本でメタル部分に固定されていますが、これは自動車でよく用いられる手法です。ドライバーの直径は約11cm、電磁コイルと一緒にプラスチック製のフレームに組み込まれています。
ドライバーは全て同じ負荷量で稼動します。直列/並列ハード・ワイア仕様で、フィルターはありません。ドライバーの後ろにプラスチック・フォームを装備して電荷を和らげるなど、大変手の凝った音響技術が施されています。フォームのほかはバスレフがほとんどのスペースを独占。Bose資料によると、バスレフポートは55Hzに設定されています。802IIIではKevlarや樹脂など、様々なコーティングを施しています。その目的は全天候型スピーカーとして性能を高めること。温度の高低、塩分、湿気、ホコリ、砂などあらゆる環境に対する耐性が高まりました。

Measurement and tests

ドライバーが8つも搭載されているとピークやディップが発生しやすい為、802IIIのようなSRスピーカーの音響テストは楽ではありません。しかしながら、802IIIの音質は非常にバランスがよく安定していました。ただし1700Hz帯で音のディップが集中するようです。思い通り、802の出力は高音/低音のどちらかに偏ることはなく、50Hzまで低音を再現することが可能です。これはPanareyコントローラーの特殊なEQカーブによる効果です。すなわち低域が増幅され、高音はハイカットフィルター(スレッショルド65Hz設定)により制限されます。
EQ値はフルレンジを反転させた値です。つまり最低音/高音が増幅されます。フィルターを起動すれば、再現できない周波数帯域はサブ・ベースと極端に高い音だけになります。当然ながら、802IIIで微細な音を事細かに表現することはできません。Bose社も802IIIが広帯域でカバーできるのはたった91dB(ピンクノイズ)と公表しています。300Hz〜3KHzでは99dBです。ただしここでもEQの存在を考慮に入れなければなりません。終点と中間点までの差は約13dB、消費電力250Wです。
802IIIの水平方向に広がる音の分散度は非常に良く、120°に達します。これはスピーカーの用途によっては非常に有難いスペックです。音を聴けば分かりますが、120°の範囲ならどの位置にいても全く同じ音が聞こえてきます。従ってスピーカー設定が非常に楽に行えます。
上述の通り802IIIの音質は安定していて、音の広がりもよいのですが「通常のスピーカーとEQならもっと良い音がでるのに…」と感じてしまうのは否めません。そこが残念な点です。
802IIIは即座にクリーンで聞き取りやすいサウンドを作り出せますが、それ以上の音質の向上は望めないのが実際のところです。出力は十分ですが、その音に人を圧倒するような凄みがないのです。テストで使用したBOSE 1800-VIアンプ(450W/8Ω)は最大レベルでVU METERが全て点灯している状態でしたが、私の耳はまだ物足りないと感じたほどです。コンパクトサイズのスピーカーにしては、802IIIの低音はよく出ます。ただし低音を十分に出力させたい場合、802IIIと(サブ)ウーハーを併用するのが良いでしょう。バックグラウンド・ミュージックを再生するぐらいなら802IIIだけで十分です。

Who?Why?

結論として、バックグラウンド・ミュージックの再生からナイトクラブまで(サブウーハーを使用する必要あり)、802IIIは幅広い分野で活躍します。設置作業や運搬が楽なのも大きなポイントといえます。


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