PRO AUDIO REVIEW
April 2003

  最近は安価で性能の良いプロセッサーが各社で発売されています。全米では、HHB社が販売するRadiusシリーズ(旧Ivoryシリーズ)がその性能のよさで高い人気を誇っていました。特にHHB Radius40は600ドル前後で購入できる優れたチャンネルストリップとして私のイチオシでした。残念ながら各社が価格/性能面でしのぎを削るようになると、Radiusシリーズの人気も衰えていきました。今回TL AUDIOとしてIvory2シリーズを新しく発表するのはまさに時流に乗った決断といえるでしょう。新シリーズはIvoryシリーズを再びトップ製品にのしあげる新機能を搭載しています

TL AUDIO製品は1998年以降、ブランド名をHHBとして米国で販売されてきました。つまりClassic、RadiusシリーズはHHB製品として販売されてきましたが、元々はTLAUDIOで製造/開発された商品です。90年代のほとんどをヨーロッパで過ごした私にとって、TL AUDIOは長年愛用しているメーカーです。始めに購入したのは今や業界の古典であるC-1デュアルバルブコンプレッサーです。次に購入したのはEQ-2です。この頃からスタジオ・システムを構築する仕事を受けるようになりましたが、TL AUDIOはしばしばシステムの基盤をつくるマストアイテムでした。TL AUDIOのTony Larking氏がNeveの元設計士であるDavidKempson氏と共同でバルブ製品の製造を始めたのが1993年です。Larking氏はそれ以前にもヴィンテージ・ギアを改良する優れた技師として活躍してきました。同氏は昨今の真空管製品ブームが始まるずっと前から、バルブ製品の設計を行ってきたのです。またソリッドステートとバルブを組み合わせる設計により、バルブ製品の欠点だったノイズ・フロアと故障の多さを改善したのもLarking氏です。最近になってHHBバージョンのTL AUDIO製品が製造完了となり、米国でもTL AUDIOブランド製品が手に入るようになってきました(米国でのディストリビューションは以前通りHHB社が受け持っています)。

新しく発表された5051 Ivory2はボイス・チャンネルという異名があり、実際に入力するどんな音源にも優れたプロセシング機能を発揮します。5051の主幹である入力、コンプレッサー、イコライザー部分には合計3種類のECC83管が搭載されています。また瞬間的に発生するピーク信号を抑える為、マイク回路には30dBパッドが装備されています。コンプレッサーはハード・ニー・コンプレッションに対応、ゲート/エキスパンダー・セクションはオプティカル回路を使用しています。またもうひとつの新機能は、S/PDIFおよびワードクロック対応のDO2デジタル出力(オプション)です。サンプリングレートは44.1kHz/44kHzで切替可能です。

5051 Ivory2の全米小売表示価格は749ドル、巷では679ドルで出回っています。TLAUDIO 元祖Ivoryシリーズを見慣れている方であれば、外見の違いはわずかと言えるでしょう。米国のユーザーから見ると紫色のHHBプレートが外れている点が顕著な違いです。知り合いの音響エンジニアの反応は、「Radius40に比べてよりレトロでクールな外見」と上々でした。また全モデル共通のアナログVUメーターも好評を受けています。個人的にはIvory1、RadiusおよびIvory2のデザイン性、機能性にいつも感嘆させられます。音響システムの中心的役割を果たすしっかりとした機能を備えています。またよくある安価な真空管商品とは違い、Ivory2シリーズは高電圧で稼働する本物の真空管を搭載しています。

5051 Ivory2には6種類のバルブ・ステージが搭載されています。各ステージでECC83デュアル三極管が3本装備されています。ゲインのほとんどを生み出す第一ステージは入力セクションにあります。コンプレッサーは2本の真空管を使用し、片方はゲインカット、片方はゲイン補助に使用します。EQセクションには3種類のステージがあり、シェルフ・セクション(×2)では真空管1本を、中域セクションでは真空管2本が使用されています。

入力セクションにはマイクファンタム48V、マイク、ライン、インストゥルメントDIの四種類の切替スイッチがあります。また30dBパッド、90Hzハイパス・フィルター・ドライブ、ピークLEDが搭載されています。ゲインレンジは入力のタイプによって切り替えてください(マイク:+16dB〜+60dB、インストルメントDI:−20dB〜+38dB、ラインレベル:+20dB)。コンプレッサー・セクションにはアタック、リリース、スレッショルド、レシオ、ゲイン・メイクアップ機能が搭載されています。アタックの固定比率は0.5〜40msの4種類から選択できます。リリースの固定比率は40ms〜4秒までです。残りのパラメーターは常に変化します(スレッショルド20dB、レシオ1.5〜30:1、ゲイン・メークアップ20dBまで)。バージョンアップされたコンプレッサーは、ハードニー機能追加によりコンプレッションの幅が広まりました。

新機能であるオプティカル・ゲートはスレッショルド・コントロール(−10〜−60dBu)で調整します。4バンドEQセクションには高低シェルビング機能および、固定Qピーク/ディップスイッチが2系統搭載されています。中域の周波数特性は4ポジションに設定されています。Q値は0.5に設定されます。出力レベルはツマミでコントロールします(OFF〜ゲイン+15dB)。EQバイパス、プリコンプレッサーEQの専用ボタンが搭載されています。また2台の5051をステレオとして使用するためのリンク・バスボタンも装備しています。メーター・セクションにはアナログVUメーターが採用されており、入出力、出力+10dBおよびゲインカット・レベルがメーター表示されます。5051の背面には、マイク、バランスライン入力用XLR入力端子、バランス仕様ラインXLR出力端子が搭載されています。

アンバランス機材の接続にはフォン入出力端子を使用してください。周波数に応じたコンプレッションを行う場合、サイドチェーンインサートTRS端子を使用します。ラインレベルは+4dBuおよび+18dBuで切替可能です。アンバランス入力レベルは−10dBuまたは+4dBuです。新しい5051Ivory2は綿密な設計の下に作られています。5051と各社のマイクプリおよびチャンネル・ストリップと聞き比べをしてみましたが、5051の性能は抜群です。また旧タイプのIvoryおよびRadiusシリーズに比べ、5051のマイクプリ・ステージは格段に性能が良くなりました。5051を通したボーカルには温かみや空気感があり、低音がよく通ります。また薄っぺらく聴こえがちなシンセ/キーボードの音源にもちょうど良い厚みが生まれました。90Hzハイパス・フィルターはどんな音源にもすばらしい効果を発揮しました。

5051の使いやすさも特筆すべき点です。コンプレッサー・セクションはAttackおよびReleaseが4段階にプリセットされており、EQの中域もHIGH MID、LOW MIDに分かれ4段階にプリセットされています。レベル調整可能なコンプレッサーを使い慣れていないユーザーにとって5051は理想的なチャンネルストリップと言えるでしょう。また大量のツマミ設定をするくらいならトラック数を切り詰めたほうがましと考えているプロの音響エンジニアにとってもちょうど良い商品です。プリセット・パラメーターはすべて最高の音質を作り出すようデザインされています。5051 Ivory2は600〜700ドルで1バルブ・チャンネル・ストリップを探している全ての方にお勧めします。
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