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長年ソフトウェアやバーチャル・コントロール・サーフェスばかり使っていた自分にとって、アナログ・ハードウェアを使用することは、大きな方向転換と言えます。TLAudio製Ivoryシリーズは、そのソリッドで実用的、かつ音の良いプロセッサーとして多くのユーザーの信頼を集めてきました。ここ数年、TL Audio製品のほとんどはHHBブランドの元で販売されてます。その代表的製品はHHBのFatmanです。
Fatmanはステレオ専用のコンプレッサー(両チャンネルは常時リンク)で、ダイナミックの中心部をカバーしたプリセット・コンプレッション・セットアップが搭載されています。また真空管の働きにより、温かみのあるハーモニック・サウンドを加工された音に付け加えることが可能です。Fatmanが人気を集めた一番の理由は音のよさと、その価格の安さでしょう。
Fatmanのソフトなコンプレッションは、新製品である5021にも受け継がれています。5021は本格的なデュアル・バルブ・コンプレッサーでありながら、驚くべき低価格を誇ります。5021の第一印象は、プロフェッショナル用の機材であると言うことです。例えば、2Uのラックケースは全て鋼板製。フロント・ボードも鋼板製で、「Ivory」
の文字がエナメルで刻印されています。フロントパネルのツマミは安っぽいスライド・オン・スタイルではなく、コレット仕様です。ツマミのセンター・デテントも絶妙な位置に配置されており、細部まで手を抜かない、良心的な設計を感じさせます。また入力ドライブ、メイクアップ・ゲイン、左右チャンネル用の出力コントロールなど、5021には万全のコントロール機能が整っています。LEDはドライブ/ピーク・レベルを表示するだけでなく、ゲート回路が落ちた場合も点灯で告知します。またプロセッサーの両サイドにはスレッショルドが搭載されており、比率1:1.5のソフトなコ
ンプレッションから、1:30のハード・コンプレッションまで操作可能です。アタックおよびリリース・コントロールは4段階スイッチです。アタックのレンジは0.5ms〜40ms、リリースは40ms〜4秒です。最終的なコントロールはゲートを調節します。
各コンプレッサーごとに独立したプッシュボタンは反対側のコンプレッサーをバイパスし、バックリットVUメーターをゲイン削減と出力の間で切
り替えます。ハード・ニー/ソフト・ニーの切替もボタン操作一つで可能です。最後に押すボタン操作で、コンプレッサーをリンクし、ステレオ音源ソースを処理できます。リンク後も各コンプレッサーは別個に調節を行う必要があります。リンク機能はコンプレッション・レベルを揃えるだけです。このソリッド・ボックスの背面には、全ての接続が集約されています。左右チャンネルともバランス仕様XLRおよびアンバランス端子で接続可能です。サイドチェーン・インサートはピン端子です。そして5021の品質の高さを物語るのが、全ての接続で用いられているNeutrikコネクターです。I/Oレベルは−10〜+4の間で切替可能。電源はIECメイン・コネクターから供給します。またオプションではありますが、5021には24bit S/PDIFオーディオ・カード
を挿入可能です(ピン接続、BNCワードクロック)。サンプリング・レートは44.1Kおよび48K。このカード互換性により、5021のA/Dコンバーターとしての機能が高まります。またデジタル・レコーダー用のバルブ・フロントエンドは5021搭載機能の目玉と言えます。フロント・パネルのインストルメント入力により、5021はフロント・エンド・デバイス以上の働きを見せてくれます。デジタル・カードの挿入は簡単で、トップパネルを取り外し、ネジで固定するだけです。
5021を実際に使い、そのスムーズで音質を損なわないコンプレッションと十分なヘッドルームを実感して、やはりFatmanに似ていると感じました。TL Audio社によると、5021の周波数特性は10Hz〜20kHz(コンプレッション起動時)であり、フロント・パネルライン入力のダイナミック・レンジは106dBです。5021に搭載された2系統のバル
ブはロシア製のSovtek 12AX7Asです。真空管は入力ドライブ・コントロールを使い、ゼロからピークまでレベル調節可能。フロントパネルのインストルメント入力にギターを差し込んだだけでも、懐かしい、ぱりっとしたギター・サウンドが楽しめます。ステレオ・ミックスを若干加えることでスムーズなエフェクトが堪能できますが、私が思うに5021はFatmanと同じく、ボーカルおよびドラム収音の加工に最適です。
5021の多彩な機能及びプロ仕様の設計を鑑みると、驚くべきはその低価格です。5021は決定版というような大それたコンプレッサーではありません。リラックスして操作できるボーカル・プロセッサーとして、質の高いサウンドを再現します。またパーカッション・クランチャーとしても、5021の性能は抜群です。オプションのデジタル・カードを加えれば、どんなデジタル・セットアップにも対応する高級なアナログ・フロント・エンドにもなります。付属のキットを使えば、何年にもわたって愛用することができ、結果として大変経済的な商品です。
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