MIX誌(米) 2000年6月号

Universal Audio 1176LN


経験豊富なエンジニア達が愛用している往年の名機にはいくつもの名前が挙げられるだろうが、その中に今もなお不動の人気を誇る"UNIVERSAL AUDIO1176 ピーク・リミッター"がある。

1176LN
1176LN リアパネル Logo
 1967年以来、約12,000〜15,000台の1176が生産されたが(当時の小売価格は$489程度)、30年たった今、コンデションの良いユニットが少なくなり、現在市場では類似品のニーズが生じている。

  1176モデルの原型はその後、何度となく改良を重ねたが(欄外に労力を結集した調査結果を表示)、ビンテージにこだわるプロ達は"ブラック・フロント"のDバージョンとEバージョンが一番だ、と口を揃えて言っている。新Universal Audio 1176LNはDとEバージョンを基盤にデザインされ、"67年代の音"をより身近に再現したのである。

 新型1176はビンテージ1176同様に素晴らしい出来に仕上がっている。唯一、目に見える相違点といえば、XLR入出力コネクターがオリジナルの端子台のかわりに整備されていることである。私は1176のシンプルな操作が気に入っている。たった4つのプリセットされたコンプレッション・レシオがあるだけだ(4:1, 8:1, 12:1, 20:1)。アタック・タイムは20〜800マイクロ秒、そしてリリース・タイムは50ミリ秒〜1.1秒間で調節可能だ(以前、Universal Audio LA2レベリング・アンプなどでは、アタックおよびリリースの調節が不可能であった。パラメーター・コントロールは1967年代では極めて新しいコンセプトだった)。

 レシオ、アタック、リリースの設定が済んだら、大きな入力ツマミを回してゲイン・リダクションの量を設定する。スレッシ・ホールド・コントロールが内部で最小のディストーションに設定してくれる。バックライト付の大きいVUメーターがRMSゲイン・リダクションや出力レベルを測定し、+4dBmあるいは+8dBmの目盛りを指す。求めていた量のゲイン・リダクションが得られたら、アタック・タイムとリリース・タイムを再調整する必要があるだろう。
出力ツマミでゲインと最終的な出力レベルを調節するが、入力ツマミを回してもポスト・コンプレションの出力レベルを調節することができるので、両手で1176の設定することができる。左手で入力を回してコンプレッションを上げ、右手で出力を調節する。

 1176LNには通常のバイパス・スイッチの代りにオフ・スイッチが付いていて、反時計回りいっぱいにアタック・ツマミを回せばオフになる。このモードではユニットがストレートのラインアンプになる。一部のエンジニア達は、音の為だけにオフモードの1176に信号を送りこんでいる。

OLD vs. NEW

 ビンテージの新1176LNと4種類の異なるブラック・フロント1176LN(2台の"D"と2台の"F")とを比較することに成功した。これらはすべて新品に限りなく近い状態であり、私が試聴したどの1176よりもいい音を出していた。
 たとえシリアル番号が連続したものであっても、ビンテージ1176は全て、それぞれわずかに異なった音を出すということを知っておくのは重要なことである。これは、これらのユニットのキャリブレーションが多少ずれてきており、通常よりハイ・レベルのディストーションをつくりだすからである(あるアプリケーションにおいては有効である)。年代を過ぎたコンデンサーや他の問題なども音の違いに影響しているだろう。1176は、マイクレベルの入力トランスフォーマーとFETをゲインリダクションの為に採用し、その後マイクプリが続くので常に"ホット"な音を提供することができる。どんなサウンドを入力しても、鋭くより攻撃的なサウンドを得られる。これは理にかなっていると私は思う。ゲインが45dBで0.5%THDというスペックを見て欲しい。今時のVCAコンプレッサーではこのような数字にはお目にかかれない。
 私が行ったテストではすべてアナログ・レコーディングからの音源を使用した。5台すべての1176を1kHzのキャリブレーションで調整し、各ユニットに同じ量のコンプレッションを設定した後、始点を見つける為に異なった量のコンプレッションを試してみようと思った。徹底的に音の比較をする為に、最終的にレシオを4:1、アタック・タイムとリリース・タイムをミディアムにし、ゲイン・リダクションを−3dBちょうどにした。4つのビンテージ・コンプレッサーは、入力ツマミの数字設定を同じにして同じ量のコンプレッションを得た。これは全てのユニットのQ-Biasとコンプレッション・スレッシホールドがきちっと確立されていたことを示している。
リスニング・テストでは、ライブバンドやシングルのグランドピアノ・トラックと共に、シングルのリード・ボーカル、ベースギター・トラック、スネアドラム・トラックを録音したものを使用した。Fモデルのバージョンでは、AB出力アンプを採用していて出力レベルがより大きかったし、Dモデルよりもホットなサウンドがでた。音の大きさを合せる為に新1176LNモデルとrev Dモデルの両方の出力をコントロールをする必要があった。
 予想していた通り、rev Dは新1176LNにより近い音をだしていて、中でも古いDモデルなどはそっくりな音を出していた。ビンテージユニットにくらべて音がクリーンになる為、ベースや低周波帯に向いている新モデルの1176LNの音が好きだ。ボーカルについては2台のDモデルと新1176LNとはほとんど似た音を出していた。また、ドラムキットや各ドラムは新1176LNモデルにおいてスムーズな音を出していた。ピアノにおいてはハーモニック・ディストーションの素晴らしいテストが実現し、新型1176LNが勝った−これが一番きれいだった。1176は出たばかりの新製品のコンポネートが新しい為で、30年間使いこんできたコンデンサー液のもれ始めたモデルとは異なっていることが直接の原因かもしれないが、一般的に言って新型1176LNはビンテージ版よりもサウンドがよりクリーンに、またスムーズになる。
 しかし、Bill Putnam Jr.氏によると、新型1176LNはわずかにゲインが少なく、出力ポットのテーパーが異なる為、古い機材の音量とマッチングするために出力ツマミをもっと回さなければならない。そして、新型モデルではすべてのレシオ・ボタンを一度に押すことができるのである−20:1と4:1のボタンを一緒に押せば同じ効果が得られる。
2台の1176LNは1176SAを使用するか、ステレオ・接続用のアクセサリーを接続すればステレオ仕様にすることができる。ステレオでのセットアップは調節の必要があり、アタック/リリース・コントロール、つまりどちらかのユニットのコントロールを変えると両方のユニットに反映される。ステレオ・モードではアタック・タイムが2倍になるので、一番速くて40マイクロ秒となった。

入力インピーダンス 600Ω、ブリッジ-T コントロール(フローティング)
出力ロード・インピーダンス 600Ω、フローティング、ダンピング・ファクター20
外部接続 ジョーンズ・バリア ターミナル&XLRコネクター
周波数特性 ±1dB 20Hz〜20kHz
ゲイン 50dB
歪率 0.5%以下(50Hz〜15kHz w/Limiting)
S/N比 70dB(+10dBm)以上
アタックタイム 20〜800マイクロ秒
リリースタイム 50ミリ秒〜1.1秒
ステレオ・インターコネクション 1176 SA Network accessory
電源 120 / 240V
サイズ 19インチ/2Uサイズ
シュレショルドVS出力レベル
コンプレッション比
( 入力レベル(+-2dB)/ 相対出力)
20:1 (-25dBm/ +13dBm)
12:1(-26dBm/+12dBm)
 8:1(-27dBm/+11dBm)
 4:1(-32dBm/+6dBm)

詳細レポート商品一覧へ