誌上レポート
 MIX誌(米) 2000年6月号

RODE CLASSICII


オーストラリアでデザイン、製造されているRODE社のマイクは、レコーディング・エンジニアの間でかなりの人気を博している。同社のCLASSIC、NTV、NT1、NT2は世界中の有名スタジオで愛用されており、更に最近発売された新型CLASSICIIの登場によって前作で収めたRODE社の成功を再現させたのである。
 RODE CLASSICII は前作のCLASSICを原型とした真空管のコンデンサーマイクだ。CLASSICII の制作をすすめる上でRODE社が目指したのは、CLASSICの特性をそのまま残しつつ、更にグレードアップしたものに仕上げることであった。
 CLASSICII はどこを取ってみても最高級のレコーディング・マイクだといえるだろう。出荷時には、固いスポンジが内蔵された頑丈なアルミニウム製のフライト・ケースの中に様々な部品と共に収納されている。マイク本体に加え、専用電源/約9mのダブルシールド・ケーブル/特製の最高級金メッキ・コネクターを使用した真空のマルチコア・ケーブル/スタンドマウント・アダプター/ショックマウント・サスペンションが付属している。重さ約1kgのCLASSICII は重厚で豪華な感じに仕上がっている。マイク本体は真鍮製で2ヶのメッシュ・グリル(内部のヘッドスクリーンと外側の固いケージ)で覆われていて、金色の点はマイクの正面を示している。新作CLASSICII は、新しいカプセルの組み合わせと電子回路の改良により、前作のClassicとは一線を画する。

 CLASSICII にはデュアル・プレッシャーの約2.5cmのカプセルと、純金を蒸着したダイヤフラムが内蔵されている。更にこのマイクには、雑音が少ない6072のツイン・トライオードのチューブ・プリアンプが組み込まれていてJENSENの出力トランスをドライブしている。マイク自体に調節機能はついていないものの、CLASSICII には好みの音を確実に得ることができる数多くのオプションが用意されている。
 CLASSICII は‐10dB及び‐20dBのパッドに、二段階切替式のハイパス・フィルターが付属している(共にマイク電源部からの切換)。ハイパス・フィルターは20Hz以下が-15又は-21dB、ロールオフする。同様に9ヶの指向性パターンがあり、反時計周りの位置のオムニから中央のカーディオイド・パターンから、右いっぱいに回した場合のパターンまで多岐にわたる。
 スペックには周波数特性20〜20kHz、感度13mV/Paとある。最大SPLは130dB、ノイズは22dB以下に抑えられ、インピーダンスは250Ωである。




【マイクのセットアップ】

 マイク本体と同様にCLASSICII の外部電源もしっかりした造りで、220V〜240V用に設定を変えることも可能だ。グランド・ループのハムノイズ対策用にグランド・リフト・スイッチも付いています。
 マイク本体は専用のマルチ・コア12ピン・ケーブルを使用し、コネクターについている目印に合わせてマイクと電源をつなぐ。白い点に合わせて接続すればよい。コネクターにはすべて金メッキが施されていて、最高品質の信号が得ることができる。また、オーディオ信号は電源のリアにある標準キャノンコネクターからマイク・レベルで出力される。(ファンタム電源は不要)
 マイク本体に電源を入れた後、マイクが暖まって安定するまで数分待つ。電源のLED回路が真空管のフィラメントから情報を読み取り、マイクが最適なオペレーティング・レベルに近づくに従い明るく点灯していく。CLASSICII の準備が整ったかどうかが表示ひとつで一目瞭然なのである。



【セッションで】

 CLASSICII では9ヶの指向性パターンから様々な音色のバリエーションを楽しむことができる。総合的に言ってこのマイクの周波数特性は全体的にフラットだが、双指向性のパターンでよく見られるように、このモードを使うとハイエンドがわずかに音落ちする。ボーカル録りでは、カーディオイド・パターンが中域から中高域にかけて緩やかなブーストを示す−つまり、人間の声に不思議な程、心地良いプレセンス効果を与えるのである。オムニ・モードの場合は、10kHz付近でおよそ6dBのバンプが起こった。これら3つの主要な指向性パターンの中間にある様々なパターン、そして2つのハイパス・フィルターと-10dB/-20dBパッドの組み合わせにより、無限にあるレコーディング・パターンに合う音が容易に見つかるのである。私は数多くのボーカル、及び楽器のレコーディングにCLASSICII を使用し、一連のダイアログ(対話)やボーカル、ソロ・フルート、そしてアコースティック・ギターをレコーディングした。また、FENDERのストラト・キャスターの音をヤマハのギター・アンプから出してマイク録りをした。
 マイクに対してかなりの至近距離で行うダイアログ録りと、ボーカル録りの両方のセッティングにおいてCLASSICII は素晴らしい威力を発揮した。まずダイアログに関してだが、私はカーディオイドのパターンを使った。タレントにはマイクから20cm前後離れた所から話して(歌って)もらい、ナイロン製のポップ・フィルターをその間に置いた。その結果、CLASSICII の使用で大きくて深いフルサウンドのレコーディングに仕上がった。破裂音の発生を抑えてくれるポップ・フィルターの使用をぜひお勧めしたい。同じ音をポップ・フィルターを使用しないで録ってみたが、破裂音や歯擦音がかなり入ってしまって、調節した後さらにもう少し手を加える必要が出てしまった。
 同様にボーカル録りもうまく行った。暖かみのある自然な音を再現したのだ。CLASSICII のオフ・アクシス・レスポンスは賞賛に値するもので、たとえ高音を出そうとしたボーカリストが多少動いたとしてもむらのない音で再現してくれる。また、私達が求めていたボーカルの抑揚をもつけてくれるのだ。
これはフルートの場合とよく似ていた。CLASSICII は大変均等でフルサウンドな音を再現しているにもかかわらず、オープンで軽快感もありミュージカルのような音に仕上げている−これがたとえ演奏者にかなりの動きがあったとしても、である。
CLASSICII はアコースティック・ギターにおいてもひときわ優れた成果を見せている。フローリングの部屋でアコースティック・ギターを弾き、ギターから直接拾う音と反響する音との両方を拾う為にギターとマイクとの間に充分な距離をとった。CLASSICII は、ギターを弾く指の音や周囲から受ける音、基音といった様々に混ざり合った音を、驚くほど正確に拾ってくれるのだ。
 真空管マイクとして考えると、CLASSICII 自体から出る雑音はほとんど感じられない。CLASSICII は、重要なクラッシック系のレコーディングに使用する際に真っ先に選ぶマイクとは言えないかもしれないが、その他の場合にはまずCLASSICII を選ぶだろう。
 エレキ・ギターの場合、CLASSICII はマイクをスピーカーから約45cm程離して、わずかにオフ・アクシスで設置した時、CLASSICII のベスト・パフォーマンスを実現することができる。このマイクは感度が非常に良いため、高音圧レベルのキャビネットを使用する際は、-10dBと-20dBのパッド設定が使用できるので、より効果的に信号を処理することができる。CLASSICII は本当に大きな音を再現し、サウンド全体に深みを持たせることができるのだ。




【結論】

演奏された音色の微妙なニュアンスすべてをつかむ性能を持つCLASSICII は、楽器録りやボーカル録り用に最高の選択だといえるだろう。オフ・アクシスのレスポンスもまたすばらしく、むらのない首尾一貫した音質を再現してくれる。また、ハイ・サウンドプレッシャー・レベルを相対的に取り扱う性能を備え、CLASSICII の用途の幅を更に広げている。

RODE/CLASSICII は最高級の外見、感触を持つだけでなく、付属品も高級である。付属品も含めたすべての機材はVOLVO(車)で乗り上げても耐えられるであろう美しいフライト・ケースに収められている。9つの極性スイッチ、2つのパッド設定、2段階切換式のハイパス・フィルターが内蔵されるなど、カスタマー・ニーズに合致する音を実現するための楽器を調整する融通性を持ち合わせている。 更にすごいのは$1,995というその価格設定だ。


RODE CLASSICII は
ありとあらゆる機能を搭載したフルサウンド・マイクで最高の結果を生み出してくれるマイクなのである。


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