dbx Quantum Review
by Dr.Frederick J.Bashour

概要
アプリケーション:マスタリング、レコーディング、そして簡単な装置から世界水準の設備にいたるまでのあらゆるオーディオ環境における次世代の製品。
主要機能:下記参照。コンプレッション、リミッティング、ゲーティング、EQ、ノーマライジング、サンプル・レートの転換、44.1〜96kHz間でのアナログ−デジタル、デジタル−アナログの転換、TSE(テープ・サチュレーション・エミュレーション)。
価格:$1,995(推定)

製品評価
利点:必要とされるすべてのデジタル信号のプロセッシングを非常によくこなしている。
欠点:若干使い勝手が難しい。Wizard機能と無数のファクトリー・プリセットがあるため、怠けずせかすと、特定のアプリケーションに適さない適当な音を選びかねない。

総合評価:偉大な素晴らしい製品だ!


○はじめに
デジタル・マスタリング・プロセッサーという概念は常に私の興味をそそるが、それを所有したことはない。しかし最近、私は密かにクラッシック音楽の制作において結構プロセッシングを行っているので(アナログ→デジタル/デジタル→アナログ共に)、こういったいくつかの機能を持ち合わせた道具のもつ適応性の向上にかなり惹かれるのである。これは多分私がクラッシック音楽におけるオーディオ・プロセッシングにより大胆に行い始めたからではないかと思っている。CLEVELAND CDの一枚に紹介記事で、PAR誌が去年の春2回に渡り私が完成した音質について触れた。
"レコーディングしたサウンドは美しく自然なものに仕上がった"自然だって?"PAR"の読者がすべての微妙なコンプレッション、リミッティング、EQ、デジタル・リバーブをどう扱っているのかを知らないのだろうか。その紹介記事を書いた人物は私の紹介記事は読まないほうがいいと思う。
dbxのQUANTUMプロセッサーが真夏に私の手元に届く以前から、製品のデザイナーであるRICK KREIFELDT氏と興味深いEメールのやりとりを続けていた。その中でこの製品がクラッシック音楽において充分に巧妙なものであるかどうかたずねてみると、KREIFELDT氏はこの質問を肯定した。そして彼の意見を裏付けるためにわかりやすい回路の説明をしてくれた時、私は直に興奮してしまった。何と彼は、精密な48ビットですべてのデジタル・プロセッシングを行い、またその結果は必要があれば、オペレーターがデジタルのクローン(全く同じもの)を作り出すことも可能にする"箱"が完成したと言った。実際にその音質がハイファイ愛好家好みで、その機能の設定は宣伝通り幅広く深いものなら、この商品こそこれまでデジタル・マスタリング・プロセッサーを避けていた人々の為にデザインされた製品となる。
私はdbxのQUANTUMが、メーカー側が語る全てをこなし、何の機種にも勝るリラックスかつ、オープンな音質を得ることができることを報告できることを嬉しく思っている。私のわがままなこだわりに答えてくれる多くの新しいツールが加えられ、丁寧に扱うことにより私の作品をより素晴らしい、自然な音に仕上げてくれるだろう。

○概観
dbxのQUANTUMは1Uで、アナログのバランスI/Oがキャノンとフォンジャックの両方に、そしてデジタルI/OがAES/EBUとS/PDIFフォーマットの両方についていて、MIDIのIN/OUTジャックも付属している。また、WORD CLOCK I/OがBNCコネクターについている。電源供給は自動的に世界の様々な入力電圧に適合する。DSPエンジンはフロントパネル上で15ヶのボタンとデータ入力ノブによってコントロールし、その他のPUSH/DEPRESS機能がナビゲーションを補助する。プロセッサーのデジタル設定と結果については大型LCDディスプレイで確認することができ、選択した演算法や現在のI/Oメーター、コンプレッサー/リミッター/ゲート・パラメーター、ROUTING DIAGRAMS、MIDI情報、その他ありとあらゆる表示がでる。出入力のLEDメーターがペアでついており、A−D段階の直前およびDAC直後にレベル・パラメーターを表示する。これらすべての表示のおかげで、アナログの操作に負担がかからず、また48ビットのデジタル・プロセッシングが200dB以上のダイナミック・レンジを持つ為、QUANTUMではそれまで必要だった微妙なレベル調節等は必要ない。
典型的なマスタリング機能についてはここで説明するつもりはないが、dbxの方針がいかに重要であるかということを、説明書の2ページ目に強調されている数字を使って言い換えてみようと思う。

・ 4バンド(又はブロード・バンド)ステレオ・ゲーティング、コンプレッション、リミッティング
・ 5バンドパラメトリックEQ(アダプティングQ、もしくはコンスタントQを採用)
・ ハイ・フリケンシーおよびロー・フリーケンシーのシェルビングEQ(3,4.5,6,9,12dB/オクターブの切替可能スロープ付)
・プリ又はポストにEQを配置可能
・ 5バンド・パラメトリックサイド・チェーンEQ(アダプティブQ、又はコンスタントQRESPONSEを採用)
・ RMSパワーサミングTMによるデュアル・モノまたはステレオ操作。
・ノーマライザー・フレキシブル・ゲイン最適化
・ ステレオ・イメージのステレオ調整
・ 8,16,20,24ビットへのディザー出力(3種類のノイズ・シェイピングの内1つを使用)
・リアルタイム・サンプルレート・コンバージョン(RSC)
・低ジッター向けのdbx クロック・チップを採用したシンク入出力
・サンプルレート44.1,48,88.2,96kHzにおけるタイプIVTMの24ビット・アナログ−デジタル変換
・TSETM/テープ・サチュレーション・エミュレーション
・広範囲なMIDIコントローラー・マップ機能
  いかにこのユニットの機能設定が広く深いものであるかを示す為に、ここでリストアップしてみた。次のセクションでは、私のスタジオにおいてどのような音を作り出したのかを伝えながら、これらのいくつかの機能について見ていこうと思う。視聴テストでは生の音、そして44.1kHzと88.2kHzでレコーディングした24ビットのマテリアルを使用した。

○音質詳細
初めに音質の概要について。2文字で表現すると、"大変""すばらしい"ということになる。とても魅惑的なことは、ADC回路がすべての上等なデジタル・プロセッシングの前に作動する為、QUANTUMの機能を特定のプログラム・マテリアル向けに最適化することができるということだ。QUANTUMの全体の音質を評価する為、私はプロセッシングが全く行われていない、セットアップ(詳細は後に示す)を設定し(全てが完全にオフ状態になるまでプログラム#40を使用)、素晴らしい音質のアナログソースを使った。そしてユーティリティ・ページに行き、アナログ入力のサンプル・レート(44.1, 48, 88.2, 96kHz)を選択した。そこでそれらの違いを聞き比べた。驚くべき大きな違いがそこにはあった。
 たとえばADCを96kHzの設定で始めた場合、それより低いレートではますますぼんやりとした暗い音になった。もちろん、44.1kHzにおいてもその音は納得がいくものだったが、96kHzはとても際立っていたのだ。そして、その音はアナログ・ソースにかなり近いものだった。88.2kHzちょうどに落としてみても、音色の透明感と解像度が落ちるのが明らかであった。これは私が先月、LUCID TECHNOLOGIES AD9624プロセッサーの概説の中で伝えたのと同じ現象で、96kHzで操作をすると88.2kHzかそれ以下で操作するよりも格段にいい音を作った。たぶん、LUCIDとdbxは同じADCのチップ・セットを使用していて、サンプリングにおいて高い周波数帯を能率的に活用しているのだろう。どのレートにおいてもQUANTUMをアナログ入出力のプロセッサーとして使い最も透明感のある音を得たいのであれば、96kHzで操作するにかぎる。
 もちろん、そうするとデジタル出力を96kHzで操作させ、QUANTUMがドメイン内で接続する装置に問題が出てくる可能性がある。ラッキーなことに、dbxにはリアルタイムSRC(サンプリングレート・コンバーション)回路が付いているので、選択したどのサンプリング・レートでも、実際に出力させることができるのだ。使ってみると、リアルタイムSRCは非常に役に立った。96kHzに設定してデジタル出力を44.1kHzに転換した場合と、44.1kHzに設定しそのままにする場合とでは音質は異なる。どちらがいいとか悪いとか言っているのでなく、違う、といっているだけだ。どう感じるかはあなた次第だが、QUANTUMを使用するなら少なくともあなたがどちらかを選べる。次号のPARではできるだけ多くのSRCをテストし、読者の皆さんに様々なソフトウェア、ハードウェアの問題がどのようにして解決されるのかをお伝えしようと思っている。QUANTUMのSRC回路はアシンクロナスで、私が持っている他のリアルタイムSRCと同じである。私はWEISS SFC20Sの同位相のSRCは聞いたことがないので、いまだに比較することができない。

○使用について
先に述べたが、dbxのQUANTUMの主なポイントは、プログラムとセットアップだ。dbxのセットアップが私の持っているLEXICON 300Lによく似ていることに気が付くのにしばらく時間がかかった。プログラムがdbxのプログラムよりもLEXICONのセットアップにより近いのだ。紛らわしい?様々なアプリケーション(ピアノ・トラック、クラッシックCD、カントリーCD、またはカントリー・ボーカル/E.ギターなどの)に役立つDSP設定に関連する信号回路がレベル/番号別に分類されているファクトリー・プリセットには、一つの(又はミックスの)ファクトリー・プリセットが含まれており、関連のプログラムと同じ名前が付いていると言えば十分だろう。新しいセットアップとしてプログラム変更したものを保存したり、プリセットのセットアップを上書きすることもできる。セットアップを上書きすると、そのセットアップを使用しているその他の全てのプログラムは、そこで新しく保存したセットアップを呼び出すのだ。一度、意味論のこつを飲み込めば、紛らわしさはなんとか解決する。

 QUANTUMを3つのレベルの動作に分けて見ていく。まず、フロントパネルにある15個のプッシュ・ボタンの内の11個の中から選択し、何を作動させたいのか(EQ、ダイナミックス、I/O、メータリングなど)を伝える。それが終わったら、ページ・アップ/ダウンボタンを使って各メニューが含まれる様々なページにアクセスすることができる。正しいページに行くと、デュアル機能のジョグ・ホイールがそのページの周辺をガイドし(ホイールを押す)、数値を入力する(回して入力)。ユーザー用の取扱説明書ではQUANTUMの多くの機能を一つ一つ説明しており、アプリケーション・ガイドのページでは9つの具体的な機能(アナログ・トラッキング、デジタル・マスタリング等)の詳細を丁寧に説明している。感謝したい。
 マルチバンドのDSP機能の様々なパラメーターについてはあまり深くは突っ込まないが、QUANTUMの本当に素晴らしい機能の一つを紹介したいと思う。それは別々のバンドをそれぞれモニターできることだ。メーター/モニターボタンを2回押し、ジョグ・ホイールを使ってモニターしたい場所を選ぶだけで簡単にモニターすることができる。グラフィックスが現在モニターしている場所とバンドの選択を正確に示してくれる。
マスタリングの技術者達にとって、QUANTUMのもう一つの大変便利な機能は前にも述べたクローン・バイパス・モードだ(バイパス・ボタンを2回押すだけでアクセスできる)。この機能のおかげで、再度配線しなくてもデジタル・クローンを簡単につくることができる。
QUANTUMが幅広いバンドのコンプレッション/リミッティング/ゲーティング、そして先に述べたマルチバンド機能(現在はよく知られているが)をこなすことを大変嬉しく思う。それは私自身マルチバンド・ダイナミック・コントロールをよく使うかどうかは疑問だからだ。私は"PURIST"(純正主義者)であり、マルチバンド・コンプレッションとリミッティングをする機器においてはその副作用を必ず耳にする。QUANTUMも例外ではない。こういう風に考えてみよう。当然、信号を別々のバンドに分けるすべてのフィルターは位相を変換させてしまう。音楽ソースの周波数と音量のバランスが変わると、位相変換の影響が生じ、音質が多少なりとも変わってしまう事がある。だから私はブロードバンドの使用にこだわっている。
一方、パラメトリックEQは心から歓迎だ。私はいくつかのデジタル・イコライザーのハードウェアを持っている(古典的なROLAND E−660、DYAXIS II DAWに構築した入出力EQ、YAMAHA O3Dのなかに入っている無数のEQ回路、そして言うまでなく私の様々なマック・シーケンサーとデジタル・オーディオ・アプリケーションに供給されているすべてのプラグインEQのソフトウェア)。これらは全て異なった音をつくりだす為、私は習慣的に異なった機能には異なった機材を使っている。例えばO3Dを使って44.1kHzのマテリアルをミックスする場合、私はいつもO3Dの中にあるEQを使用している。しかし、O3Dのステレオ出力がDYAXIXに入ったらすぐに、DYAXIX EQを使うのである。これはオーディオ・ファイルを編集し、CDのマスタリングに備える為だ。
QUANTUMのパラメトリックEQ回路一つでこれらのすべてが必要ないことを私はここで断言しておく。QUANTUMはよりスムースでより暖かく、私が所持している他の何よりも心地好い音を作り出してくれる(もちろんアナログのMANLEY MASSIVE PASSIVEは例外)。私は既にジャムに使用する為の最終のAIFFファイルを作る段階においてDYAXIS EQの代りにQUANTUMを使用中である。そしてコンスタントEQ(パライコと同じようなもの)とアダプティブQ(コンソールEQのようなもの)を切り替える能力は大きな利点となる。
dbxの切替可能なTYPE IVTM回路は、QUANTUMのコンバーター・ダイナミック・ヘッドルームを拡張する領域に対数を置き、また内蔵された機能として5種類の音色の中から選択が可能で、かなり明るい音から本当に暗い音まで一般的な音に課することができる。これは、すべてのプロセッシングを行う前にQUANTUMの音の概要をひきだすというもう一つの方法だ。
QUANTUMには他にも数々の機能がある。ステレオ調節、環境、一時的なカプセル・モード、個別のディエッサー、ノーマライゼーション、5つの細かい出力選択(8ビットまで)、ノイズ・シェイピングの3つの演算法など、他にもたくさんあるがスペースが足りないのでこれ以上ここで紹介するのは難しい。しかし、私のスタジオでその大部分を主力の機能として使用することができる。程良いものである。

○結論
RICK KREIFELDT氏は正しかった。この素晴らしいサウンド・ユニットはクラッシック音楽にとって充分甘く、透明感のあるものであると同時に、技術者にとってもこれほどの音質を巧妙に取り扱うツールは他に例を見ないものである。非常にお勧めしたい。

FRED BASHOUR博士はエール大学の音楽論の博士号を持ち、最近はジャズ・ピアニスト、教会オルガン奏者として活躍し、加えてクラシック音楽のプロデューサー兼エンジニアとしても活動中。また、過去25年間に多くのレーベルからリリースされているレコーディングにおいても評判を受けている。PRO AUDIO REVIEW誌においてもその活躍ぶりをみせ、ますます洗練された技術を活かし素晴らしく自然なレコーディングを手がけていきたいと考えている。

dbx QUANTUM


AUDIO MEDIA誌掲載文より

はじめにあたり、私が最初に持っていた偏見をここに記しておきましょう。新発売のdbx QUANTUMデジタル・マスタリング・プロセッサーの試聴や商品紹介に興味があるかと尋ねられた時、私の最初のリアクションは"ああ、嬉しいね。音楽をぶちこわすオールイン・ワンの製品の登場かい?"でした。プロのマスタリング・エンジニアとして、またマスタリングにおける"簡単な単純処理"に疑いを持つものとして、私は初め、"小さなプロセッサーパワーであまりに多くの処理をしすぎている"としてこの機材を忘れ去ってしまうつもりでした。私は日頃からマスタリングの各段階においてそれぞれ別のプロセッサーを使うことにしています。そうすることで各機材がそれぞれ可能な限り最善のやり方でプロセッシングを行ってくれるのです。ところがdbxはいい音をつくるハイ・パワー・プロセッシングを施す素晴らしい製品を、驚くほど手頃な価格で発売しました。さぁ、読みすすんでみて下さい。

■コントロール&インターフェース
私が"オール・イン・ワン"製品を好まない理由の一つは、要求された情報をユーザーに提示するのが難しいからです。もう一つの問題は、メニューが乱雑にならないようにたくさんのボタンとディスプレイの選択肢が用意されており、それを使いこなす必要があってBOXの操作が難しくなっていることです。dbxはその点でいえばバランスのとれた製品です。
QUANTUMのフロントパネルの左側はアナログの入出力セクションになっています。アナログ・プロセスの各レベル・コントロールには、12ヶのLEDメーターがついています。入出力のレベル設定が簡単なので、入力側のA/Dコンバーターをクリッピングしたり、D/A側のアナログ出力セクションをクリッピングさせなくてすみます。これらのメーターの動きは大変使い心地がよく、オーディオ入力やユニット出力がとてもいい感じになります。デジタル・ヘッドルーム・メーターはなく、アナログメーターのみがついています。これらはプリ/ポスト・コンバーターです。中央に(アナログ・メーターの間に)TSE(テープ・サチュレーション・エミュレーション)のメーター・ディスプレイがあり、使用しているTSEの量に対して情報を与えてくれます。(これについては後ほど説明いたします)。
ユニットの中央部にはLCD機能ディスプレイがあります。ユーザーの使いやすさを考慮したデザインで、一定のデータを表示するのに充分な大きさの画面になっており、私が知っているどの製品よりも便利です。LCDの左側にはデジタルI/Oメーターがついており、縦のバー表示でピークと平均レベルを表示します。ピークは各バーの中央にあり、平均値は各バーの角に表示されます。これらは常時に確認することができ、また、入出力のピークから平均レベルを一度に確認することができます。マテリアルのダイナミック性にどのように影響を与えているかが一目瞭然なのです。次の画面では、使用中のプログラムの状況をスレッシホールド、レシオ、周波数等で表示します。ここで見ているものが、文字で見ることのできる、操作中の内容です。
(これはまた別の話になりますが、時々、今操作中の状況を知らないほうがいいと思うことがあります。思い通りの音ができるまで、操作に専念したほうがいいと思うのです...)。横に目を移すと、ゲイン・リダクション・レベルメーターが2つあるのが分かります。このレベルメーターは"インバート・ディスプレイ"として機能します。ディスプレイの一番上から下まで拡張し、行われたリダクションの量を表示します。LCDディスプレイの最後の部分では、調節した機能をグラフで表示します。これはゲイン・リダクション・カーブとなって、スレッシホールドを表示し、調整したEQのカーブを表示するEQプロットや、機能を分けるバンドのクロスオーバー・バンドを表示します。フロントパネル中央にレイアウトされているのはジョグホイールで、これを使用してプロセッサーにデータを入力します。最後に15ヶのプッシュ・ボタンがついていて、機能を変えたり、オペレーション・モードを設定したり、電源スイッチの役目をしたりします。
リアパネルの左側から説明をしていくと、IEC電源プラグがあり、世界的に対応できる電源供給です。世界中のどこで使用しても電圧を切り替える必要がありません。QUANTUMは50Hzまたは60Hzにおいて、自動的に100V〜240Vに設定します。次にキャノンのAES I/Oジャック(プログラム・コントロール用)があり、それに続いてアナログI/Oジャック、キャノンとステレオ・フォンジャックがついています(共にバランス)。これらはバランス/アンバランス・コネクターのどちらも使用することができます。

■使用できる機能
QUANTUMは通常のプロセッシング・ツールのほか、独自の機能をいくつか搭載しています。この製品には2部に分かれたハイ/ロー・シェルフ・セクションで構成された5バンドEQと3部に分かれたパラメトリック・セクションがあります。ハイ/ロー・シェルフ・セクション・スロープが3〜12dB/オクターブの調節が可能であり、+/−12dBのブースト又はカットを20Hz〜20kHzのレンジで調節することができます。パラメトリック・セクションも同様に20Hz〜20kHzを+/−12dBの範囲でブースト/カットすることができます。"Q"においては、パラメトリック・バンドは0.25(1.5dB/オクターブ。大変広い)から16または96dB/オクターブのレンジで調節可能です。ユーザーは、このカーブを "コンスタントQ"または、アダプティブから選択することができます。イコライジングの量と何を目的にするかによっては、大変役に立つオプションです。
また、この製品にはマルチバンド・コンプレッション、ブロードバンド・コンプレッション、リミッティング、ゲーティングの機能がついています。マルチバンド機能は大きな3つのクロスオーバー・フリーケンシー・コントロールによってコントロールされ、通常の3バンドではなく4バンドもコントロールすることができます。QUANTUM独自の機能の一つは各バンドの出力を聞き取る能力です。これにより、操作しているスペクトル部分がどうなっているか聞くことができます。この機能は使い易いという意味で、大変優れており、ミックスのエネルギーの大部分が集中している場所を聞き分けることができます。コンプレッサーのスロープはどうかと言うと、0.75〜∞:1で選択することができます。そうです、これはマイナスのコンプレッション設定が可能な"アップワード・エキスパンダー"と呼ばれるものです。優先したいプロセッシングをやりすぎてしまった時に瞬間的な情報のロスを保存するのに大変役に立ってくれます。このコンプレッサーとリミッターセクションにはdbx社の"オーバー・イージー・コントロール"が採用されています。この機能は現存するデジタル・プロセッ サーのほとんどにはない部分です。"オーバー・イージー"はコンプレッション・レシオを変え、1:1のコンプレッションが行われていないものにおいて、ユーザーが選択したレシオを少しずつ変更してくれます。"オーバー・イージー"では10ヶの選択ができます。オーディオのコンプレスされた部分とそうでない部分との間で生じるわずらわしい突然の変化に悩まされることなく、コンプレッションをハイレベルにすることが可能です。また、"オーバー・イージー"はリミッター・セクションにおいても採用されており、通常試しているものよりもハイレベルのリミッティングにより、とてもいい音を再現することができます。アタック/リリース、スレッシホールド、レシオ、そしてオーバー・イージー・コントロールは全てバンドを基準に、または全体的に調節が可能です。グループ内のバンドを無効にしたり、そのバンドをすべて異なった設定にすることも可能です。たくさんの選択肢が用意され、音楽のサウンドを良くも悪くもするチャンスがたくさんあります。
ブロードバンド・モードでは、SEQやサイドチェーンEQを追加する機能がついています。この便利な機能を使って、異なるフリーケンシーにおいて感知度を低くさせたり高くさせたりするのが可能なリミッター/コンプレッサーを作り出すことができます。マルチバンド・モードにおいても同じことが可能ですが、1ヶまたは2ヶの主要な周波帯でコンプレッサーの感度を鈍くすることにより、よりよい結果を出す方法の為にも使うことができます。QUANTUMはノーマルなステレオ幅のコントローラーを搭載しており、これは実際、チャンネルを逆にする目的にも使用できます。この操作には2つのモードがあります。一つはバランスといって100%が通常の左/右のポジションとなり、−100%が逆のチャンネルになります。もう一つはM−S(MID-SIDE)といって、M-Sモードで2つのマイク・ロケーション・レコーディングをする人達にはよく知られています。このモードでは、−100%がモノで、+100%は実際、オリジナルのステレオ・レコーディングよりも幅広くなります。これにより、狭すぎてステレオ・イメージを拡張できないミックスを広げることができるのです。

QUANTUMにはdbxのTSEと共にTYPE IV 96kHzのコンバーターがついています。これは本当にユニークで興味深い機能です。技術面等の長ったらしい説明は抜きにして言わせてください。TYPE IVコンバージョン・システムを使用すれば、デジタル・コンバージョンの聞こえ方に驚くべき変化をもたらします。特に入力が強く入っているときです。ヘッドルームのトップ部分に大きな音を打ち込んだ時に通常失われてしまう音のクリア感とディテールを、TESプロセッシングを使うことにより維持することができるのです。凝った使い方をするなら、TSEはコンバージョン・プロセスにおいて素晴らしい付加機能となります。先月1ヶ月に渡りQUANTUMを試してみて、dbxのTYPE IVコンバーターをとても満足しながら使用しました。もしコンバージョン中に多少の補正が必要なテープがあるなら、カラー・モード5つの中から1つを使用して、簡単にプロセッシングを始めることができます。
QUANTUMには好評間違いなしの新しい機能が追加されました。アンビエンス(環境)です。この機能はミックス中、特定のレベル以下になるとゲインを上げることで、本質的に低い部分のミックスを圧縮してゲインを上げます。これは大変面白い機能です。これで簡単にかなりドライな音のミックスに対して、音楽のダイナミックスの中でそのスポットを選ぶことにより、その箇所をコンプレッションしたりリミッティングしないまま、低いレベルのディテールを引き上げて、もっと大きな音にすることができます。コンプレッションの副効果で嬉しいのはミックス中の低いレベルの信号を持ち上げられることです。通常のコンプレッサーの使用においては、その代わり、より高いレベルの信号をクリッピングしないようにする為にリミッターをかける必要があります。この素晴らしい機能の登場で、一瞬の音とピークを共に妥協することなくダイナミック・レンジを圧縮することができます。この効果は大変おもしろく、喜ばしいことです。
ディエッサーは中心周波数を800Hz〜8kHzの間で調節することが可能です。また、操作をバンド・パス・モードまたはハイパス・モードのどちらかに設定することができます。操作は簡単かつスムースで、予想通りの結果でした。必要に応じて使用してください。
この多目的プロセッサーにはサンプル・レート・コンバージョンも内蔵されています。24ビット/96kHzのオーディオにおける実用的なフォーマットがまだ発表されておらず、またマテリアルの保存に関しても制限がある為、A/Dコンバーターを24ビット/96kHzで使用することはあまり意味がありません。世界中のすべての人々が使用できるサンプルレートでプロセッサーからオーディオを引き出す必要があります。QUANTUMは実質上高いサンプル・レートを44.1kHz(あるいは48kHz)にコンバートする能力が追加されています。
他人のマスターテープで使用する際、マスタリングのエンジニア達を決まって怖がらせる機能があります。これが"ノーマライゼーション"です。ピークが最高に達する為、ヘッドルームが埋まってしまい、その他のサンプルがすべて同じパーセンテージで増加してしまうのです。"ディザー"を使わずに行ったノーマライゼーションは決まって出来の悪い音楽に仕上がってしまいます。しかし、QUANTUMではノーマライゼーションがリアルタイムで行われます。ユニットがモニターされ、最高ピーク時を記録している間にパッセージが表示されるのです。そしてゲインを上げ全てを最高レベルにし、使われていないヘッドルームを埋める為に必要なゲインを計算するのです。正確で適応性の高いディザーをプロセッシング・パスの最後で使用することができます。(マスタリング・エンジニアからのお願い:もし誰かにさらにマスタリングを施してもらう為にレコーディングしたものを送ろうと考えているなら、後のプロセッシングの為にヘッドルームを少し余分に残しておくことをお勧めします。)

■QUANTUMの動作
操作/確認する上で使い勝手のよいマスタリング・ルームにQUANTUMを設置してから、私はQUANTUMをマスタリング・モードに設定しました。WIZARD機能は私が何をしたいのかということやプリセットのルーティンはどのプロセスを通すかを尋ね、そしていくつかのデフォルト値を設定してくれます。私は数分耳を傾け、いくつかのパラメーターをひねってみました。そしてデッキをクリアして最初から始めることにしました。
本当に良質なレコーディングを施したアナログの1/2インチ・マスターを使用しながら、TYPE IVのコンバーターを使用して96k/24ビットでQUANTUMを使いました。内蔵のD/Aコンバーターを使用してモニターし、様々なプロセッシング・セクションを使ってスタートしました。EQから使い始めてみた私の初めての所見は、高域がなんてスムースでオープンなのだろうということでした。耳障りな音が入ることなく、素材の最後のトップ部分にそっとAIRを吹き込むことができたのです。そしてミッドQや低域EQをそっと加えることで嫌な音に悩まされることなくローエンドに神経を配ることができました。
プロセッシング回路にマルチバンド・コンプレッサーを入れて、調節可能なモニター・ポイントを使ってクロスオーバーの各バンドを聞きました。うまく操作できたのでほとんどのボーカル部は2番目のバンドに入りました。そこからこのセクションにゲインを1.5dB上げ、ボーカルをミックスのもっと目立つ位置にかなり微妙に持っていきました。もともとこの作業がマスタリングされた時、ボーカルのアップ・バージョンを採用し、ボーカルを目立たせるためにトラック・レベルを犠牲にしました。QUANTUMで仕上げた物と元からマスタリングされている物とを比較してみた時、マルチバンド・コンプレッションを使うことによりボーカル部分をレベルアップしながら、もっとミュージカルなバージョンの歌に仕上げることができたのです!
同じ歌でもう少し試してみます。"アンビエンス・プログラム"を少し加えてみました。ミックスの中で−42ポイント以下のゲインを3dB上げてみました。これは音楽の質をめざましく向上させ、空間の広がりとプレゼンスをミックス全体に与えました。トラジェント音全体に悪影響を与えずにサウンドに重みを加えることができたのです。これは、多少のコンプレッションとリミッティングを付加した場合にも起こります。)とにかく最小限のプロセッシングで素晴らしい変化をもたらします。
次に、既にオーバープロセスされた16ビットのDATを試してみました。そのレベルはすべてオーバー・ポイントに達してしまっていました。この場合、QUANTUMを通して2つのパスを使用しました。初めに、AES入力に着目しました。コンプレッサー・セクションを0.75:1のコンプレッション・レシオに調節して使用し、スレッシホールドを0からゆっくりと下げていきます。ゲインを少しマイナスにすると拡張されたピークを活かすスペースができます。するとオリジナルのミックスにトランジェントの情報といい感じの開放感を与えることが出来ました。以前"INVERTED DYNAMICS"(私はこう呼んでいます)がこのテープに悪影響を及ぼしていました。静かであるべきところがうるさく、コーラスに至った時に歌が出る所では音が小さくなるのです。私はこの状況をくつがえしました。コーラス部に再びインパクトを与え、音楽らしさが戻ってきました。QUANTUMの多彩なプロセッシングの選択幅が、"INVERTED DYNAMICS"の症状に悩まされることなく、同様の声高感を維持した創造的なマスタリングを可能にしました。

■試聴を終えて
何がこんなにもパワフルなプロセッシング・ワークを可能にし、こんなに良い音質を作り出しているのだろう?dbx社はQUANTUMに完全なる48ビットの内蔵データ・パスを埋め込みました。全てのプロセッシングはこのレベルで行われます。プロセス間で移動するので、オーディオに影響を与えるインター・ステージにおけるワード・リダクションはおこりません。内部には288dBのプロセッシングのヘッドルームが使用可能な為、多様なプロセスに生じる副作用は、出力は24、20、16、8ビットの出力ワード長へディザーされる際、耳にすることのできるスレッシホールドをかなり下回っております。これが何故このプロセッサーが暖かくてスムーズな音を作るのかという理由の一つです。
このような特徴や機能を持つプロセッサーがこの値段というのは、dbx社が本当に圧勝する商品を完成させたということです。これは一度使うと手放せなくなる製品です。似たような製品が多く出回っている市場で、dbxのQUANTUMの登場は嬉しい知らせです。

■プロからの提言
プロのマスタリング・エンジニアとして少し注意すべき点を上げておきたいと思います。QUANTUMにも、一般的にもいえることですがプリセットはその名前がたとえ魅力的で、設定が創造的であっても、私は個人的にプリセットの使用を避けることから始めます。ほとんどの人は特定のレコーディングを念頭において設定します。そして全く同じ素材を同じレコーディング・レベルで使用している限り、結果は満足のいくものではないでしょう。音楽のスタイルを示しているいくつかのプリセットは私が作り上げた設定からは程遠いものです。過去に、様々なプロセッサーに内蔵するプリセットを作って欲しいという依頼を受けた時にお断りをしたことがあります。なぜなら、最高の出来をつくりだすとは思えないからです。たとえ何台ものプロセッサーを持っていても、私が使えるパターンを1つに限ることはできません。依頼された仕事の中で、同じ技術者が10日〜15日に渡りミックスを施した箇所でも、使用する為に選択したプロセッシングのタイプとその量においては大きな違いが生じます。ミュージックのスタイルに基づいてプロセッサーを事前に設定してしまうことによりマザーを他人の考えによっ て制限してしまうわけです。
QUANTUMのような多機能プロセッサーは技術者に素晴らしいパワーを与えます。これは今日大きな強みとなります。ミックス時に使用すれば、これまでの音楽を崩し、マスター・テープを作り出す大きな手助けをします。これは私の信念なのですが、すべてのプロセッサーはマスターテープを作った後に、セカンド・パス・プロセッサーとして使用するべきだと思うのです。ミキシングした内容と完成されたマスターCDとを比較するのは常にリスクを伴う仕事です。なぜなら、1つのプロセスが他のプロセスに作用するといったように、マスタリング・プロセッシングとミキシングの相互作用が技術者に終わりのない作業を強いるからです。普段、私が技術者達に薦めているのは"典型的な"プロセッシング・セットアップを通してモニターし、ミックスを太くてしっかりしたものにすることでありながら、レコーダーへの実際のフィードはフラットでプロセスしていないものにすることです。こうすることでプロセスされていないマスターテープと、またモニター設定を付加したコピー両方を残すことが可能になります。これにより、方向性が変わっても、異なったプロセスを試みることができるので す。すべてがプロセス済みのものだった場合、元に戻すことは不可能です。これはよくあることですので注意して下さい。

■実験結果
QUANTUMの内部は効果的に配置がなされています。第一にあげるのはサーフェス・マウントの構造部分です。MOTOROLA 100MHz 56000シリーズの5ヶのチップがDSPに大きなパワーを与えています。A/Dコンバージョンはクリスタルを使用しており、D/AはAKMによるものです。アナログ・デバイスの1890サンプルレート・コンバージョンが内蔵されていますが、このチップは高いビット・レートに対応することが出来ない為、高いコンバージョンにはカスタムコードが必要となります。
周波数特性はスペックから-0.5/+0の誤差内にうまくおさめられています。ノイズ・フロアはフラットでクリアです。FFTの分析からノイズ・フロアはA/Dのバンドで-130dBFS以下であり、D/Aの最大出力と比例して-125dBよりも良いものでした。THDの性能も良いです。D/Aにおいて通常の入力レベル時にわずかな量の2番・3番のハーモニクスを確認することができます。クリッピングに近い状態ではイーブン・オーダーのハーモニックスが顕著で7番目までスパイクを見ることができます。2番目のハーモニクスはA/Dの中でも傑出していて、7番目までを通してスパイクは少なくなっています。
低レベル・リニアもまたよく出来ています。A/D向けに要求されるダイナミック・レンジのパフォーマンスは見られなかったのですが、入力レベルを下げると2.5dB以内で得ることができました。TSEプロセッシングはゆるい制限を伴いながらヘッドルームの拡大を可能にします。さらに"COLOR"モードはシェルビングEQの高域の量の変化に対応します。
96kHzでの動作は、フル状態のA/DとD/Aを通して測定されました。クロストークの性能はスペック上の-85dBよりもはるかに良いものでした。周波数特性は、他のコンバーターを使ったこの手のテストの際に見られるパターンと同じように、ハイ・エンドの周波数特性は96 kHzのサンプリングにおいて拡張されますが、ローエンドはほんの少し前にロール・オフします。もし何かの欠点があるとするならば、それはアナログの最大出力です。しかしアナログ・ヘッドルームを前持って認識しておくことで、残りのシグナル・チェーンを適切に埋め合わせすることができます。ただ唯一の問題は、-16Dbfs+4dBuよりもホットであるリファレンス・レベルが使用されていてミックスがホットな場合にA/DからD/Aのユニティ・ゲインを得ることにあると思います。
最終判定:QUANTUMのA/DとD/Aの測定値やパフォーマンスは、多くのコンバーターとほぼ同等ですが、QUANTUMのプロセッシングに勝るものは他にないでしょう。

〜測定値・略〜
すべてのテストは(注意している限りでは)1kHz,+4dBu=−16dBFS、10Hz〜22kHzのバンド値、ユニティ・ゲインに呼応して行われました。個別に行われたA/DとD/Aのテストは48kHz/24ビットで行われました。96kHzのサンプリング・テストはA/D−D/A及び、96kHz/24ビットのアナログ入出力で行われました。
すべてのテストはAUDIO PRECISION SYSTEM TWO DUAL DOMAINにより行われました。(協力:STARSTRUCKスタジオ)

■各方面からのコメント
QUANTUM を"マスタリング・プロセッサー"と名をうって広告するにあたり、最高のマスタリングを知っている人間−プロのマスタリング・エンジニア達−からの印象を聞いてみたかった。基本(透明なバイパスとRATE/DITHERのコントロール)が正確かどうか確認した後、機材をMASTERFONICS、GEORGETOWN MASTERS、MASTERMIXでオーディションにかけた。その相手はQUANTUMがターゲットとするオーディエンスである必要はないが、もちろん製品に対して厳しい評価をくだせる適任者達でなければならない。
MASTERMIXのエンジニアであるKEN LOVE氏は、パラメーター設定を(コンピュータ・ベースのGUI等で)素早く保存できないことを指摘したが、QUANTUMのサンプル・レート・コンバーターを大変評価してくれた。"僕は(EQに)24ビット欲しかったんだ"とLOVE氏は言い、さらに"24ビット/48kHzの中で24ビット/44.1kHzを得る方法がここにあった"とも述べた。他のSRC製品を入手できるのにも関わらず、QUANTUMはLOVE氏がコンバーター専用機の代りに使用することを決めた最初のSRC製品だ。
MASTERMIXのオーナーでありエンジニアでもあるHANK WILLIAMS氏は次のように述べている。"ユーザー・インターフェースはとても学び易いと思う。つまり、QUANTUMの値段の3倍はする他のプロセッサーと比べて、直感的で大変素早くなった。"
WILLIAM氏がQUANTUMを音質的に評価する前に、クライアントのBRIAN TANKERSLEY氏が機材を持ち逃げしてしまった。プロデューサー兼エンジニアのTANKERSLEY氏はTC M5000を所有しており、もう長い間これをマルチバンド・コンプレッションに使用している。TANKERSLEY氏はQUANTUMをほとんどこのような用途に用いていた。TANKERSLEY氏はQUANTUMに対して次のように述べている。(TCM5000とくらべて)"異なった音色だ。5000は低域が太くなり、プログラム素材によっては敵にも味方にもなるが、これはあまり影響を受けない。
QUANTUMはシングルの信号パスにおいてよりプロセッシングの効果を発揮する、とTANKERSLEY氏はすぐに付け加え、"すべてのEQバンドがフルレンジになっていて、私はコンプレッサーの前後にあるいくつかのセクションを使ってみたい。"と述べた。TANKESLEY氏は今後もM5000を使っていくだろうが、代替のプロセッサーとしてQUANTUMに気持ちが傾き始めている。その違いをたとえるとすれば、レスポールとストラトの違いとでも言おうか(この場合、QUANTUMはストラトキャスター)。
GEORGETOWN MASTERのエンジニア、JONATHAN RUSSELLは大変気に入っているマルチバンド・コンプレッサーを試し、WEISSユニットに匹敵するディエッサー・モード(彼が通常よくつかう機能)を見つけた。インターフェースが直感的であることも発見した。"シグナル・パスがよく考えられて配置されている。"GEORGETOWNのオーナーであるDENNY PURCELL氏は次のようにコメントをしている。"ファイナライザーを使っている人達やそれ以外の人達もQUANTUMを是非使ってみるべきだと思う。なぜなら、(QUANTUMは)他のどの機材よりも多くのことをやってのけるのだから。"



EM誌2000年1月号において
EditorsChoice ベストDATデッキとなった
TASCAM DA45HR その内容に注目したい

確かに、今年(1999年)はあまり多くのDAT新製品は発表されなかったが、TASCAM社のDA-45HRならどの年でも圧勝することができる。このDAT機器のデザインをした時に、TASCAMの技術者達が既成概念をぶち破る努力をしてきたからだ。

24ビットでのレコーディングが可能なだけではなく、完全にバックワードにも対応しており、16ビットのテープの録音・再生が可能だ(他社の機材で作ったテープでも可能)。DA-45HRは24ビットA/Dコンバーターと20ビットD/Aを搭載しており、44.1kHzと48kHzのサンプリング・レートを可能にしている。

DA-45HRをスタジオと屋外の両方で一ヶ月にわたり試してきたが、今回本当に見事なパフォーマンスを見せてくれた。16ビット・モードにしたDA-45HRでレコーディングしたテープと、標準の16ビット機器でレコーディングしたテープとでは、前者の音の良さが際立っていた。思うにこれは24ビットA/Dコンバーターのおかげだと思う。24ビットでのレコーディングは、ご期待通り16ビット・トラックをはるかに上回ったものであった。ダイナミック・レンジは素晴らしく、トランジュントも素早く、より低レベルのディテール(詳細)さえはっきりした。また、フリーケンシーはスペクトル上で均等になっていた。もう単なる"CD品質の音響機器"を聴き続けることはできなくなる程、素晴らしい。
HRモードでは、DA-45HRは通常の2倍速で録音し、24ビットのワードでテープにのせる。HRモードのDATテープにおいては時間を半分ほどに短縮するが、効果はこれに値する。このユニットの便利な機能の一つは、テープがHRモードで録音中されている時にはユニットが自動的に認識してくれることだ。だから再生中にワード長をわざわざ設定する必要は全くない。
また、DA-45HRは最大60文字を使って各プログラムに名前をつけることが可能で、作成したミックスを分類するのに大変便利だ。
最高の逸品であるDA-45HRは他のDAT機器と同様に使い易く、様々な応用が効くのも嬉しい。ライブのレコーディングやスタジオでのマスタリングであろうと、DA-45HRはDAT技術の新しい指標となったことは間違いない。


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