Summit Audio MPE-200誌上レポート(1999年12月)

MPE-200 Mic-Pre Equalizer


元素記号表ではエレメント78はプラチナということになりますが、エレメント78とはサミット・オーディオ社がだしているデジタルコントロールのアナログ・プロセッサー・シリーズの名前でもあります。このシリーズの初の製品はMPE-200で、4バンド・パラメトリックEQ付のステレオ(デュアル・モノ)・マイクプリアンプです。MPEは他の新しいEQ付プリアンプとは以下の2つの点で完全な違いがあります。1つはRUPERT NEVE氏がデザインしたクラスAのトランジスタ仕様アナログ・マイクプリアンプであり、カップリング・セクション、出力ドライバー・ステージ、そしてイギリス製のトランスを搭載しそれはイコライザー・セクションの周波数特性とパフォーマンスを特定するものであるということです。2つめはサミット社の技術者によってデザインされた直感的でシンプルなインターフェースを使うことで、ユニット全体をデジタルでコントロールできることです。デジタル・コントロールを使うとフロントパネルのすべての設定を内部の25ヶのメモリーに保存したり、MIDIを通して外部機器に保存することができるのです。デジタル・コントロールにはひっかかりやすいつまみなどがなく、またスイッチ類を取り替える必要もありません。リア・パネルのMIDIポートを使ってMPE-200Sのような廉価版のプリアンプ/EQにすべての設定を送ることもできます。
 このユニットには、Ver.1.23のソフトがインストールされていて、前モデルのスペックや今まで読んできたほかのレビューとは違っていました。(いい意味で)今後のアップデートは(必要があれば)、サミットのディーラーに依頼して特殊なコンピューターのインターフェースをユニット内のポートに接続してダウンロードしてくれるはずです。見た目を言えば、重厚感のあるアルミ製のフロントパネルとがっちりしたシャシー部、大きなロータリーシャフト・エンコーダー・ノブ、そしてアルファベット順・番号順のLCDディスプレイ等、プロの満足を満たすデザインに仕上がったカッコよい好印象のMPE-200はその重さも約12kgあります。MPEの操作についてですが、友人が持っているBMWのカーステレオよりも簡単です。LCDディスプレイは現在アクセス可能なユニット・セクションのメニューの表示を切り替え、スイッチ自体を押せば、ループしてに他の使用可能なメニューに移ることができます。希望のメニューを見つけたら、ノブがパラメーター値を変更しながら、ロータリー・シャフト・エンコーダーつまみでメニュー間の希望のパラメーターへと飛ぶことができます。さらに、スイッチのLCDデ ィスプレイの色が変化して操作モードなのか、セットアップモードなのかをしらせます。感謝すべきことに、埋め込まれたややこしいサブ・メニューなどがなく、くせのあるデーターエントリー手順などもありません。ディスプレイ・スイッチが全データを表示し、シャフト・エンコーダーもまた、点灯するポインターを使ってこの情報を実際の周波数特性のダイアル位置、Q、ブースト、カット、ピーク、SHELF、ゲイン設定の細/粗さなどで、表示します。

MASTER OUTPUT/SETUP SECTION

MPEを3つのパーツに分けてみましょう。マイクプリアンプ/フィルター入力セクション、パラメトリックEQセクション、そしてマスター出力/セットアップセクションの3つです。まず、マスター出力/セットアップセクションから話を始めましょう。何故なら音造りをする為にはまずこのセクションに行き、保存するための未使用のプリセット・メモリーの場所を選択するからです。マスターLCDディスプレイ・スイッチにはメニューが4つあります。マスター・チャンネル・セレクト、マスター・プリセット、マスター・セットアップ、そして出力フェーダーの4つです。マスター・チャンネル・セレクト画面は、チャンネルAとBが"ロックされている"のか"ロック解除"なのか(追って詳しく述べます)を表示し、EQの出力レベルを表示するデュアル・バーグラフ・VUメーターが付いています。出力レベルは+/−16dBに調節することができ、EQブースト/カットの補正をします。ピーク時の+18dBまたは、クリッピング上の3dB以下で画面全体が赤く点滅し、これを見逃すことはまずありません。マスター・プリセット(黄色の画面)は現在取込んであるプリセットのロケーションとこれか ら取込もうとしているプリセットの両方を表示します。ここでどちらの設定を失うことなく、保存してあるプリセットと今日の作品を比べることができます。
本質的に設定はロックすることによって、プリセットとして保存されます。ロック時にプリセットの変更は可能ですが、電源が落ちていたり、MPEがオフになっていたり、別のプリセットを取り込んでいる時などには、バッファーの変更を保存することはできません。スリープ・モードになっている時は、たとえMPEの電源が落ちていてもバッファーのメモリー内容を保存することができます。マスター・セットアップではプリセットのロックを解除したり、ロックしたりすることができます。つまり、MPEがリンクされたステレオ(全設定が両チャンネルを一緒にたどる)上で動作するように選択するか、2チャンネルのモードを選択するかします。それぞれのチャンネルを個別に設定します。EQの出力にフェーダーを追加することもできます(ダイレクトなレコーディング中に"ON THE FLY"のフェードアウトに大変便利な機能)。これらのフェーダー設定は保存されず、プリセットを変更したり、電源が落ちると数値(バリュー)は0dBに戻ります。

PREAMP/FILTER INPUT&EQ SECTION

MPEのフロントの端にあるのは、マイクプリアンプ/フィルター入力セクションです。緑色のマイクゲイン画面は両チャンネルのゲイン設定を表示し、デュアル・バーグラフVUメーターは−28から+9dBuのレンジとなっています。ゲインは1.0dBのステップで調整します。シングル設定では、ステレオ・モードのマイクゲインを両方保存し、2チャンネルモードでは、マッチペアーのマイクが合わない時にもゲイン設定を簡単に調節できますマイクゲイン・ディスプレイ・スイッチはピーク時の+18dBで明るい赤色に変わります。
HP/LPフィルター画面(黄色)は2つのフィルターの様々な組み合わせができます。ハイパスは25〜320Hz で17ステップがあり、ローパスには4〜30kHz で17ステップがあります。これらは12dB/オクターブですが、同じコーナー周波帯を選択して同じフィルターを2回選ぶと、シングルで24dB/オクターブの深い設定ができます。また、2つのLPフィルター、または2つのHPフィルターを2種類の異なったコーナー周波帯に設定して珍しいコンツアーにすることもできます。入力セットアップ・メニューはファントム電源のON/OFFや、フェーズ・フリップ、そしてマイクプリの出力がEQの入力につなげられているかどうかなどの設定にします。これはプリアンプとEQセクションの間に外部のコンプレッサーを挿入したり、プリアンプとEQセクションへそれぞれ別々に使用する時に便利な機能です。リアパネルにはEQとプリアンプ・セクション用にステレオ・キャノンが一組とアナログI/Oが付いています。
パラメトリックEQセクションには4バンド付いています。バイパスが行われている時には各バンドのLCDディスプレイ・スイッチは黄色になり、アクティブ時は緑色になります。スイッチを入れると連続したクリッキングが聞こえ、しっかりとバイパスが接続されていることが分かります。MPEにはグローバルEQの入出力スイッチはありませんが、ブランクのプリセットを現在の設定と比較すれば簡単に実践できます。ローバンドは30〜300Hzで17のフリーケンシー・ステップをカバーしており、ゲインは+/−16dBです。MPEのマスターアウトプットやマイク入力セクションと同様、すべてのEQのパラメーター値はロータリー・エンコーダー・ノブのまわりにある照明付ポインター・カラーとLCDスイッチによって表示されます。周波数セレクト・ノブを押せば、CHARACTERISTICSのピークからシェルビングまでの選択を変更することができます。この4つのセクションすべてにおいて、ブースト/カット・エンコーダーノブを押すとCOARSE(2dB)とFINE(0.5dB)設定を切り替えることができます。これはマスタリングには大変便利です。EQのロー・ミッド・セクションは17のステップにおいて100〜1kHzをコント ロールします。ここで周波数セレクトノブを押すとノブがQセレクションに変わります。ディスプレイ・スイッチに表示される様に、Qは17ステップ中で0.60(又は1.6オクターブ)〜2.0(0.5オクターブ)に調節可能です。たぶん、Qの0.60と0.65を微調整するのは少し難しいかもしれません。ですからここではもっと広いレンジ−例えば0.40〜高いところで4.0のレンジであればと思います。ハイ・ミッド・セクションはロー・ミッド・セクションとほぼ同じですが、周波数ステップだけが異なり、500〜5kHzとなります。一番重要なミドル・フリーケンシーと重複する部分がたくさんあります。高域セクション・バンドは17ステップにおいて2〜20kHzをカバーし、切替可能なシェルフ/ピーク操作が付いています。

セッション使用

プログラムしたソースのイコライジングと個々の楽器とボーカルをEQセクション単独でイコライジングしてみて、MPE-200の音調のコントロールのしやすさに驚きました。ブーストとカットがたくさんあって、EQの大胆な使用や補正などに充分なQがあります。
2つのチャンネルを正確にステレオでトラッキングするのでステレオ・ミックスの両サイドが同じEQをしているだろうかということに悩む必要がありません。コンソール上に2つ同一の信号回路の設定をしないで素早いレスポンスをもって両者間で切り替えをするのですから、A/B比較は現実的に容易です。プリセット間を行き来しても何ら、ノイズ等の問題はありませんでした。もう一点、たとえボーカルのレコーディング時に1つのチャンネルしか使用していなかったとしても、私はいつもプリセットをステレオで保存しています。チャンネルAをロックすれば同じボーカリストに対して、代りのマイクを使用し異なったマイクのゲイン設定にしてもチャンネルBを使うことができます。
もう一つの便利な機能はレッド・ピーク・インジケーターです。このユニットは素晴らしくて、私はクリップにアプローチしていることを耳で聞かなくても知ることができたのです。
素晴らしいといえば、MPE-200のスペックでしょう。最大出力は+28dBとなっています。マイクプリの回路では、THDは8dBのゲインで0.003%(40〜16Khz)以下となり、出力レベルは+26dBuとなります。EQ 回路内でのTHDはユニティ・ゲインで0.003%以下(40〜16Khz)で、EQとフィルターをすべてオフにした状態でユニティ・ゲインでの出力ノイズは‐100dB以下です。ダイナミック・レンジは133dB、ゲインが60dBでの同等の入力ノイズは−128dBuです。
このマイクプリを様々な音源に使用すれば、大変透明感を持ち、かつ暖かみのある音を再現することができ、ビンテージのNEVEモジュールを彷彿とさせながらも、よりクリアで素晴らしく、またマイクゲインを高く設定した時よりもうまく一瞬のピークに対応できるのです。
サミット社のMPE200は、シンプルだが上品で高品質アナログのデジタル・コントロールを探している人にはぜひお勧めします。上質なクラッシック・タイプの機材を所有しようと考えていて、アナログ・プロセッサーをデジタルでコントロールできるものを、とお考えならMPE-200をぜひ購入してはみてはいかがでしょうか?(MPE-200S:廉価版)


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