EVENT 20/20bas 誌上レポート(1999年9月)
Event Electronics 20/20bas by Rob Shrock おそらく、多くのレコーディング・エンジニアが経験していると思うけど、すべてのDick Van Dyke showという人気番組が全く見られないほど、忙しくトラック録りを毎晩しながら、やっとミックスする時がくる。全て順調に進むことを期待し、録音するに従って、トラックのサウンドは大変素晴らしくなっていくはずだ。でも、どういうわけか最後のミックスは、車の中で聞くと音がひどい。家のステレオで聴いていてもあまり良くならない。低域が強くなり過ぎ、中域がこもったような音になり、せっかくのサウンドが半分台無しだ。 つまり、信頼度の高い、正確なモニターシステムを使わないと、レコーディングの努力を無駄にしてしまう結果となる。考えてみると、レコーディングとミキシングのプロセスは自分の耳で聞いた音が基本になり、そして、モニタースピーカーは自分の耳と機材の間をリンクする大切な機器である。だから、信頼度の高い、正確なシステムが絶対必要になってくる。 幸いにも、Event Electronics社の20/20bas(バイアンプ・システム)パワードモニターは2倍、3倍、いや4倍以上の価格と同じパワードモニターに期待するパフォーマンスを提供してくれる。20/20basはパフォーマンスが優れている為、プロのスタジオでバラエティーに富むアクションを期待することが出来る。このシステムはパッシブ・バージョンでも提供されているので嬉しい。 20/20はEvent Electronics社でデザインされた最初のレファレンス用モニタースピーカーだ。この社名は音響機材の会社としては新しいかもしれないが、ここで働いているスタッフはそう感じてはいない。Event Electronics社はAlesis社の前社長のRussell Palmer、Alesis社元マーケティング・セールス・マネージャーのTed Keffaloと元エンジニア・ディレクターのFrank Kellyによって設立されている。そして20/20はAlesis社のMonitor OneとMonitor Twoのデザインを手掛けたKellyとWalter Dickによってデザインされた画期的なスピーカーだ。 A is for Active: 20/20basモニターはアクティブ・スピーカーであり、各キャビネットに2ウェイ・アンプとクロスオーバーが内蔵されている。内蔵アンプは通常、一貫したスピーカーのパフォーマンスを提供するため、モニタースピーカーが違う機種のアンプへ接続されて音色が変わってしまうことを避けることができる。その他、スピーカーの消耗を防ぎ、どんな状況下においても殆んで同じリスポンスがあるという利点がある。 だから自分の気に入っているモニターをどこへでも一緒に運ぶ際、誰かのボロなアンプがスピーカーの音をだいなしにするなどと言う心配はない。20/20basシステムを持ち出すには少しの不便しか感じられない。スピーカーの重量は1台13kgだし寸法もそれ程大きくはない。(詳細はスペックを参照) 入力端子はXLR又は、1/4フォン・コネクター(バランス又は、アンバランス)のどちらかを使用しており、入力コントロールは20dBまでのパッドに対応している。内蔵アンプに入力信号が入ると、モニターのフロントにあるグリーンのパワーLEDが点灯する。理想的には入力ゲインを目一杯上げたいが、この入力信号が強すぎる時にトリムするコントロール機能はありがたい。バックプレートがアンプのヒートシンクの役目をしている為、やや熱くなる。このプレートこれに関しての詳細は説明書のどこにも記載されていないため、最初に20/20basを設置する際に、ガードに触れてしまうことがあるかもしれない。少し火傷することもありえるので、注意が必要だ。 ローとハイ別々の周波数帯フィルターも好みの音に設定する為に用意されている。LFフィルターには400Hz以下の周波数を処理し、フルに上げると、100~400Hzの間を2dBまでブースト又はカット、100Hz以下は3dBまでをブースト若しくはカットする。HFフィルターは2.6kHzを超える信号を3dBまでをブースト若しくはカットする。 通常、フラットなリスポンスにする為にはフィルターを0dBに設定する。特別な室内やモニタースピーカーの位置がシステムの周波数リスポンスに悪影響及ぼすような場合は、状況に応じて設定を変える事が出来る。モニタースピーカーにはフィルター・コントロールを調節する小さなプラスチックのつまみのような物が付いている。フィルター・コントロールをする際は、細いドライバーを使って調節することができる。 小さな不満といえば、フィルタートリムは各dB毎にクリックして区切られていた方がいいと思う。そうすれば、スピーカー間のマッチングを簡単にできる。現状ではトリムは目で確認しながら設定しなければならない。それにフィルタートリムには、ユニティー設定の箇所でノッチが付いていない。各スピーカーは通常の設定で搬送され、フィルターのトリムは動かない様にひっこんでいるが、多少の接触では設定が変わってしまうことがあるかもしれない。しかし幸いにも一度設定したら忘れてしまうようなものだ。何度かひねって試したあと私は0dBに設定した。 万一のオーバーロードに備えて、それぞれのキャビネットにブレーカー回路が内蔵されている。ブレーカーが作動するとボタンがでてきて、パワースイッチをオフにすると簡単にリセットする事ができる。Event社は、内蔵回路上のコンプレッサー機能よりもブレーカーを採用した。というのは、コンプレッサーを使用すると大音量レベルでモニターする際に不正確な再生音が生じる場合があるからだ。 Acutely Accurate: 個人使用のモニタースピーカーをレポートする時に4つのポイントがある。ハイとローのモニタリング・レベルにおいて全体の周波数帯リスポンスの正確さを確認すること、ベース・パフォーマンスの確認、ステレオ・イメージの安定性の識別、そしてリスニングを継続した際の耳の疲れの度合いである。20/20は各テストで高得点を得ている。 最初に、今持っているCDをかけ、簡単なリスニング・テストを20/20basで行った際、大変驚いた。イメージとその微妙な雰囲気が細かく聞こえて、今まで認識しなかった音さえも識別できた。私は5時間半もその素晴らしい音に聞き入ってしまい、夜が明けてしまった。 これは、20/20basが音を良くするためにデザインされたシステムという意味ではない。今までのレコーディングでも気が付くことが無かった音の欠乏を、20/20basは見事に明らかにしてくれた。恐らく、最も衝撃的な発見は、このモニターを使って異なるCDでのオーバーオール・マスタリング・イコライゼイションを聞き分けることが可能になったことだ。これだけの微妙なコントラストを認識するのは、決して簡単ではないし、それはプロサウンドの厳しいクリティカル・リスニングだ。 2ヶ月間使用した今も、大音量やソフトレベルどちらでも周波数帯スペクトルにどんな抜け穴もなかった。メーカーは45Hzにおいて最大2dBしかスポンスが落ちないと言っており、確かに、60Hzのレンジまで低域の凄さをしっかり感じた。全体像として、存在する周波数はオリジナルのプログラムにあるまま私の部屋の中で聞こえてきた。最も低い低域においては多少揺らぐことはあったが、問題を指摘するほどではなっかた。 20/20basシステムの最も素晴らしい特性のひとつに、その実に素晴らしいステレオ・イメージがある。これはよくニアフィールド・モニターに指摘されやすい欠点であり、その為Genelecs製が良く使われている。しかし20/20basシステムはアンプがクリッピングになるモニターレベルの境目を除いて(通常のリスニングでは使わない)、サウンド・ステージの不鮮明さを経験した事は1度もない。その一方で、イメージングは全てのモニターリング・レベルにおいて正確だ。各サウンドはステレオ・スペクトラムのどこに位置付けられてもフォーカスがはっきりで明快であった。 もう1つの重要なポイントは、いいサウンドを得るのに、20/20basシステムの特定のスイートスポットにはこだわる必要がないことだ。このモニターは、人間を狭い一箇所に押し込むことなく、臨場感のあるよい音を提供してくれる。 20/20basシステムは耳にやさしい音で仕事がしやすいので助かる。仕事のときは、毎日10時間から16時間働くのだが、2ヶ月程前に1度だけ耳の疲労による病気にかかった事があった。それは音量を上げすぎ、2時間近く歪んだギターの音を用いた時だった。(その時自分の息の音すら痛いと感じた) Assessment: Event Electronics社は20/20basにおいて全てを正しくデザインした。この価格でこれだけのパフォーマンスを提供できるパワードモニタースピーカーは他にはない。Genelec 1030Aの半分の価格というだけでなく(1995年1月のEMに記載)、20/20basはパフォーマンスにおいてより大きく、価格の高いGenelec 1031Aと肩を並べられるほどだ。 沢山の素晴らしいモニタースピーカーがあるが、20/20basは特別だ。このモデルが業界のスタンダードとなったとしても決して驚かない。20/20basシステムのバランスのとれた周波数帯リスポンスは、代わりのもう一方のスピーカーを使って聞き比べなくてもこの1台だけで良いと思える、数少ないモニタースピーカーの1つだ。モニタースピーカーの購入を考えているなら、是非リストに加えたいスピーカーだ。今現在20/20basシステムに勝てる商品は他にないと思う。 |
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