Summit Audio MPC100A誌上レポート(1999年5月11日付)


純アメリカ製のMPC100Aはプリアンプ、コンプレッサー、リミッターの機能を兼ね備えたプレステージ真空管マイクプリアンプ。そのパワフルな性能には魅了されずにいられない。TERRYNELSONがそのベールを取り除き真価を探る。

Studio Sound誌

 MPC100AマイクプロセッサーはアメリカSummit Audio 社の真空管アウトボードのプレステージシリーズ最新作で、真空管プリアンプ、コンプレッサー、リミッターが組み合わされている。スタイリッシュ、レトロでヘアーライン・シルバー色のフロントパネルに2Uハイラックシャシーと、いかにもSummitらしい外観になっている。
 MPC100Aの機能は総合的なプリアンプとリミッターコンプレッサーに分かれ、VUメーターには最終出力レベルまたはゲインリダクションが表示される。総合的なプリアンプと言うのは独立したマイクロフォン(切替え可能な48Vファントム付)、XLRのライン入力、加えてDI使用のためのフロントパネルhi-Zジャックが売り物であるからだ。マイクライン入力は切り替え可能なので、両方同時に接続することができる。さらにフェーズ・リバースと-20dBパッドスイッチがある。
 ステップ式ゲイン・アッテネーターのコントロールにはビンテージ式に良く見られる色ではなく大きな赤いつまみ、DI入力のLOADINGコントロールには小さなつまみを使用していることが目立つ。12ステップのゲイン位置はコンデンサーとダイナミックマイクロフォンにとって非常に適切なレンジを捉えることができ、プリアンプのノイズがないことは注目に値する。音そのものは「前に良くでる」という表現が一番似合っていて、バックの信号はそのままだ。こう言う訳は、最近いくつかの高性能プリアンプを同じマイクロフォン、同じポジションで比較してみたところ、そのマイクロフォンから録られるサウンドイメージが違うことに驚かされたためである。これを特定の人にしか聞き分けることができないと思っているなら、きっと驚くはずだ。
 真空管マイクプリアンプは常に暖かさのあるサウンドを伝えることを求められているが、俗に言われている真空管の「暖かさ」に到達するには、同時にマイクロフォンの選択にかかっていると言える。真空管のソフトなクリッピング特性は,多くのソリッドステート回路から生じる音の硬さに比べると非常に好ましいことが多く、ピークでオーバーロードLEDが点滅した時点でも、100Aは非常にナチュラルで、若干の暖かささえある。
 hi-Z DI入力時、100AはDIボックスとして機能する。フロントパネル・ジャックにプラグインすると、入力トランスをバイパスして、信号を直接プリアンプ入力に送信し、マイクとライン入力をオーバーライドする。ゲイン・アッテネーターは青の輪郭で7段階のステップがあり、これがhi-Z入力に関連している。100AはLOADINGコントロールによって音の微調整も可能だ。入力インピーダンスが10KΩから1MΩまで変化し、StratをLes Paulに変えてしまう程ではないが、用途は非常に幅広い。ローディングが増えると、周波数レンジが広くなる。

 COMP-LIMITER部には入力ゲイン用におなじみの黒いつまみ、オーバーロードLED、スレッシホールド(SummitはACスレッシホールドと呼ぶ)、スロープ(またはレシオ、1:1から1:10の間で変化)、出力レベルがある。さらにアタックとリリースを設定する3ポジションスイッチがある。
 一番簡単なモードでは高いスレッシホールドと1:1のレシオ設定をしてもコンプレッションはかからないが、入出力ゲイン・コントロールは非常に柔軟性がある。例えば、プリアンプかコンプレッサーどちらかまたは両方で歪んだリッチなサウンドが欲しい場合、このコントロールを操作すると望む特性を十分に引き出すことができるだろう。
 AC THRESHOLDコントロールを反時計周りに回すとスレッシホールドが下がり、SLOPEコントロールを上げるとコンプレッサーが機能する。MPC100Aの試作品をコペンハーゲンのAESショーで使ってみたとき、これらのコントロールのレンジはすぐにはっきりわかった。その後Summitが製品に改良を加えたことによって、これらのレンジがいく分スムーズになった。使い勝手を考慮してみると、正しい方向性かとは思うが、私は初期の製品にみられた「荒いかかり具合」が好きだった。
 使用してみると100Aは寛大なコンプレッサーで、これはSummitのトレードマークといえる特性である。メーターを見るとかなりコンプレッションがかかっているが、音のつぶれやフラットさは全くない。アタックとリリースの設定も非常によく選択されており、Fast、Medium、Slowをスイッチで切替えることによって変化が顕著に得られる。
 メインのトグルスイッチとは別に、メーターの出力ゲインリダクションのスイッチと、回路やステレオリンクのコンプレッサーをイン/アウトにする3ポジション・スイッチがある。このスイッチによって、必要に応じてプリアンプ部だけを使用することができる。これも便利な機能である。
 hi-Z入力を除いた全てのコネクターがシャシーの裏側にあり、マイクとラインXLRとは別に、外部コントロール信号からのサイドチェーン用としてバランスのフォン・ジャック入力が、そしてステレオリンク用のモノフォン・ジャック入力、アンバランスのジャックで10dB出力、キャノン(XLR)の+4dB出力もある。
 MPC100Aを様々なマイクロフォン(EV RE2000、Calrecコンデンサー、EV N-D757ダイナミック)、楽器(Fender Strat,Ibanez JEM Steve Vai Fender VI bass)、さらに録音素材も幅広い中から選択して試してみた。どの場合でもプロセシングおよびエフェクトのレンジには特筆すべきすばらしさがあった。もしSummitがとても便利な「オーディオ・ツールボックス」を作ることを目的としていたなら、それは確実に成就した訳である。
 弱点としては、最近ほとんど2番ホットに変更されたことを考えると、何故3番ホットであるかがよくわからなかった。おそらくこれは内部でリンクしているので変更できるはずだ。サイドチェーン入力だけでなくサイドチェーンのセンド/リターン機能も欲しかった。これは信号をYケーブルを使わずにEQにただプラグインすることによって、ディエッサーのような機能を簡単に持たせることができるからだ。
 MPC100Aを使用するにあたりSummitはあきらかにコンプレッサー部を使うか使わないかのどちらかひとつで使用することを想定している。コンプレッサーをイン/アウトに切替えると、出力レベルが変化するからだ(同レベルでのA-B入出力機能テストはできないことがある)。コンプレッサーの入力ゲインを調節して対応できるかもしれないが、ドライブの量が希望通りにならない場合がある。
 いずれにせよ両セクションにヘビーなコンプレッションをかけて全体を歪ませることによって、楽しむことができた。ギター独特の音をDIを通してではなくもっと自然にテープに録ろうとする場合、MPC100Aは最適だ。だからといって、この製品の細かな優れた側面を強調しないわけにもいかない。MPC100Aは自信を持って幅広い用途にお奨めできる絶品だ。


詳細レポート商品一覧へ